人気上昇中のバンドOKAMOTO’Sに思う、「上手い」と「いい」の違い
 好きの反対は嫌いではなく無関心。とはよく言われることですが、音楽の場合はどうでしょう。かのデューク・エリントンは「音楽には2種類しかない。いい音楽と悪い音楽だ」と語ったといいます。

 けれどもそのどちらでもなく、「上手いね」と済まされてしまうケースもある。音楽そのものの判断はさておき、といったニュアンスを感じる言い回しです。ひょっとするとそれが「無関心」にあたる表現なのかもしれません。

 2月4日にリリースされたOKAMOTO’Sのニューシングル「HEADHUNT」が、まさにそんな一曲でした。ザ・フーやキンクス由来のガレージロックに、アニメ主題歌らしい疾走感あふれるポップさがうまくマッチしている。刺激をやわらげたミッシェル・ガン・エレファントのようなサウンドと言えるでしょうか。

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※OKAMOTO’S
インディーズを経て2010年メジャーデビューした4人組。全員が岡本太郎好きで、ラモーンズのように全員苗字はオカモト。フジロックへの出演、全国ライブツアー、日比谷野外大音楽堂初のワンマン公演(2014年)など、注目を浴びている。「HEADHUNT」はTVアニメ『デュラララ!!×2 承』のオープニング曲。ちなみにメンバーのハマ・オカモトは浜田雅功の長男
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⇒【YouTube】OKAMOTO’S『HEADHUNT』 http://youtu.be/J1Ul1CrV5yE

 その手際は実に見事。手数が多くなっても基本の軸からブレないベースとドラム。かといって大人しくタイムを保つだけでなく、Jポップらしからぬグルーヴ(死語でしょうか)がきちんとあるのはさすが。

 ギターの歪み具合も絶妙です。リズム&ブルースの粘り気を失わない範囲で、音量と荒々しさを保っている。ウィルコ・ジョンソンから多くを得ているのでしょう。

※Wilko Johnson - All Through The City - Jools’ Annual Hootenanny - BBC Two http://youtu.be/CIQIN7QGbr4

 またかねてからバンドの弱点とされていたボーカルですが、声が割れることがよいアクセントに感じられるほどには力強くなっている。こうしてクライアントからの発注とバンドの本分がお互いを損ねることなく両立している点で、全くケチのつけようのない作品なのです。

◆でも「好き」なのか、と問われると……

 では、そんな「HEADHUNT」を好きなのかと問われたら、これが答えに困ってしまう。サウンドの傾向や曲の構成を説明することはできる。それが高品質であると認めるのもやぶさかではない。日本や欧米のロックをある程度聴いてきた人ならば、ほとんどがこの曲に納得することでしょう。

 でも、そこまでなのです。たとえるなら自分たちをマーケティング分析して出来上がった型に、すすんで入り込んでいるような音。つまり“正解”の域を出ていないのです。

 もちろん、多くのバンドは「上手い」の段階に達することなく消えていきます。しかし「考えるヒット」(週刊文春2月26日号)で近田春夫氏言うところの、<今までに一度も聴いたことのないような新しいロックとか>(※注)をやる人たちは、皆そこを食い破って聴き手に価値判断を迫るような力を持っています。

 1人から激しく愛される代わりに99人から熱烈に嫌われる。そのように初めは否定的な働きかけをするものこそ、“新しい”と名付けられるのではないでしょうか。いまではあまねく愛されるプリンスも、ローリングストーンズの前座を務めた際にキャベツを投げつけられた過去がある。その強さたるや、広く受け容れられることよりも直接的で大きな衝撃だったはずです。

⇒【YouTube】Prince, Tom Petty, Steve Winwood, Jeff Lynne and others - “While My Guitar Gently Weeps” http://youtu.be/6SFNW5F8K9Y

 それにしても聴き手は音楽の何に対しておカネを払おうと思うのでしょうか。『曖昧の七つの型』で知られる批評家のウィリアム・エンプソンは、ミルトンの『失楽園』についてこう称賛したといいます。

“素朴なアフリカの彫刻を思わせる、野生の輝き”

 言い方は色々ですが、やはり音楽に求めるものも結局はそこにたどり着くのではないでしょうか。それはエンプソンの言葉に従えば、「上手い」ことの対極にあるのだろうと思います。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>

※注:近田春夫「考えるヒット」(週刊文春2月26日号)
「技術は充分、まとまりもいいけど、楽曲の本意がわからないオカモトズ」より。
<もう技術は充分すぎるぐらいあるんだからさぁ、これからはそれを使ってオレ等が今までに一度も聴いたことのないような新しいロックとか作るのに命かけてくんねーかなぁってマジ思っちゃった>