ニッポン放送の煙山光紀アナウンサー(写真左)と、洗川雄司アナウンサー(右)。明日のJリーグ開幕戦は煙山アナが実況を、洗川アナがピッチレポーターを務める。

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今年もJリーグが明日3月7日(土)に開幕する。今季から2ステージ制がスタートするなど、大きな転換期を迎えるJリーグの動向。そして迷走中の日本代表はどうなるのか? ニッポン放送サッカーパーソナリティの煙山光紀アナウンサーと洗川雄司アナウンサーに「日本サッカーの今」を聞く。

《新代表監督に期待したいこと》

─── 明日開幕するJリーグの話題の前に、日本代表についてお聞かせいただければと。解任されたアギーレ監督の後任として、ブラジル大会でアルジェリア代表を率いて16強入りしたバヒド・ハリルホジッチ氏が確実、と各紙で報じられています。

煙山 誰になるにせよ、刺激のある人が来て欲しいですね。トルシエとか、オシムみたいに、周りの言うことを聞かない感じの。トルシエが来たときは、それこそみんなトルシエが嫌いでしたけど、僕はすごく面白かったんですよ。

─── たとえばどんなところが?

煙山 スリーバックに中田浩二を使うとか、ウィングで小野伸二や中村俊輔を入れるとか、当時の僕らの感覚ではありえないことを次々に打ち出し、そこを叩くメディアの存在もあって。おかげですごく盛り上がった。アジア大会にU21メンバーで参加して批判する人もいたわけですけど、今やそれが世界的にも普通のことになってますからね。オシムの場合は人格者というか、もともと箔があったからメディアも叩かなかったですけど、これまた相当なわがままを言ってましたからね。

洗川 こんな日程じゃ代表選べないとか、協会への嫌味で7人しか選出しないとか、スタメンが発表されてもどう並ぶのか、フォーメーションがわからないという。

煙山 そういうのって、僕ら伝える側の人間にとっては刺激的だし、僕らに刺激があるということは選手にも刺激的だということ。そこでハリルホジッチの話に移るんですが、彼も同じ匂いがする指導者なんですよ。オシムとも知り合いらしいですし。

洗川 ボスニア・ヘルツェゴビナ出身ですからね。

煙山 アルジェリア代表でも、ドイツを苦しめたりと、オシム的な哲学を感じますね。そういう人に日本サッカーをかき回して欲しい。だって、日本サッカーって僕らが考えている以上に、まだまだ世界からは遅れているわけですから。

洗川 W杯のたびに優勝したチームのやり方をまねたところで、次の4年後にはまた違うサッカーがトレンドになってしまう。本当はそこを一足飛びに目指さないと上にあがることはできない。そういう意味でも、日本代表には劇薬が求められている、ということなんでしょうね。

煙山 今の日本代表って、国内では屈指の人気バンドではあるけれども、世界的に見たらどうなの? っていう感じだと思うんです。そこはちゃんと自覚しないといけない。

洗川 あと日本サッカーに関しては、若手がなかなか出てこない、というもどかしさもあります。アギーレ時代に台頭したのは、柴崎岳、武藤嘉紀、森重真人の3人くらいです。

煙山 それに関しても、僕らの感覚とは違う監督が就任することで動き出すと思うんです。オシムのときに矢野貴章が覚醒しつつあったと思うし、羽生直剛が機能したり、鈴木啓太が核になったり。

洗川 遠藤保仁が本当に代えの利かない選手になったのもオシム時代だったわけですからね。

《日本サッカーも「負けにこだわるな」》

煙山 以前のこの座談会でも言っているかもしれないですけど、僕はW杯は「結果じゃない派」なんです。日本サッカーってこうですよ、というものを見せる品評会であるべきで。先日、ボクシング世界チャンピオンの井上尚弥選手が番組ゲストで来てくれた際、所属している大橋ジムのモットーを教えてくれたんです。それが「負けにこだわるな」。大橋ジムって、常に最強の相手に選手をぶつけるんですよ。でも、本当に最強の相手なら、負けても評価はあがる。今の時代、そういう戦いをすることが求められているんだ、と。

洗川 なるほど。確かにそうですよね

煙山 サッカーの話に戻ると、負けても失うモノがない、というのが本来の日本代表の立ち位置だと思うんです。リスクを犯して負けたとしても「あの試合の日本はすごかったね」って評価されるはずなんですよ。ハリルホジッチが率いたアルジェリアがW杯でドイツに負けた試合なんか、負けたけど胸を打つことができる試合として、世界中のサッカーファンの記憶に残っているわけですから。勝ったけど大会ワースト3の試合をやるよりは、負けたけど大会ベスト5に入る試合をやって欲しいですね。

《野球とサッカー、ファン層の構造的な違い》

─── 代表も含め、日本サッカーの人気、という点もお聞きします。先日、Jリーグが発表した2014年の観戦者平均年齢が遂に40歳超えたことがニュースになりました。この高齢化問題についてどう思われますか?

煙山 どうなんでしょう? スタジアムではそれほど感じるわけではないですね。若い人も相変わらず大勢いますし。

洗川 2ステージ制を導入するにあたって、コアなサポーターがたくさんいるクラブほど「2ステージ制反対」の横断幕が多い印象はありました。

煙山 コアな人はそりゃあ1シーズン制のほうがいいですよ。僕だってそうですし。でも、2ステージ制に移行することに関しては、このままジリ貧になる前に策を打とう、ということでもあるわけです。

洗川 そう考えると、サポーターの年齢層に関しても、一般のサポーターとコアなサポーターで違いがあるのかもしれないですね。

煙山 美容室なんかで「最近お仕事どうですか?」みたいな世間話をしていて、「今、Jリーグが優勝争いしてるんで大変ですよ」なんて話をすると、「へー、そうなんですか?」ということがよくある。サポーターがコア化していて、それはもちろん悪いことではないけれども、一般層との情報格差が大きい。もっと外にも拡げていかないと。

洗川 野球も一時期そんな状況になりましたけども、意外と最近は「カープ女子」がブームになったりと、一般紙でも取り上げられる話題が増えています。

煙山 サッカーも「セレ女」が話題になったけど、瞬間的だったのがもったいない。やっぱり「カープ女子」みたいに一般に広がらないと、どんどん廃れていくような恐怖感はありますよね。でも、スタジアムに行くと盛り上がっているし、試合も面白いし、危機感を感じにくいんです。全然大丈夫でしょ! と思いがちなんですけども、そこで「怖い」と思ったJリーグの判断は正しい気がします。

洗川 TwitterやSNSでは個々のクラブの情報とか盛り上がりがすごいんですけども、すごく小さいコミュニティなんですよね。そこが「コア化」していくひとつの要因かもしれないですね。

煙山 一緒にしちゃいけないかもしれませんが、ラジオ業界と似ている気がするんです。たとえばニッポン放送も「ラジオパーク」という大きなイベントを打つと何万人ものリスナーの方が集まってくれる。その熱を見ると、後ろにはさらに何倍、何十倍ものリスナーがいるんじゃないか……そんな風に考えちゃうんですけど、実際にはシビアな状況でラジオも戦っているわけです。

─── よく、野球ファンとサッカーファンの確執、みたいなこともネットでは叫ばれています。その辺はいかがでしょうか?

煙山 ファンのわかれ方に関しては全然違いますよね。野球は、メジャー、プロ野球、高校野球とジャンルを分けることができますけど、ファンはそこであまり分断しないと思うんです。でもサッカーの場合、JリーグもJ1、J2、J3と分かれていて、海外リーグはもう野球の比じゃない数の面白いリーグがたくさんあってと、戦う相手が多い。

洗川 同じ土俵のなかでビジネスしなきゃいけないっていうことですよね。

煙山 だから、ファンをどう振り向かせるか、という部分ではすごく課題が多い。いろんな工夫をしたり、新しいことをどんどん打ち出していかないと難しいだろうなと思います。

洗川 サッカー雑誌も休刊や月刊化が続いたりと、大変ですからね。

煙山 サッカー雑誌ってすごく特殊で。サッカー総合雑誌が売れなくなったっていうのは、「日本代表ファンです」という人と、「コアなJリーグファンです」という人と、「海外サッカーファンです」って人に分かれちゃうから、総合誌を出しても売れない。逆に、海外リーグのサッカー雑誌が売れたりする。構造的に野球よりも複雑というか、難しい。どれも楽しむ、っていう人が意外と少ない。

洗川 細分化されすぎて、そこに見えない壁があるんですよね。高齢化というよりは、たぶんそういうことのほうが問題なんじゃないかなと思います。

煙山 Jと日本代表がリンクしなくなったのも大きい。海外組がほとんどレギュラーになっちゃったから。昔は、日本代表を見てJリーグにも興味を持つ、という流れが色濃くあったんですけど、それがもう薄くなってしまった。だからやっぱり、Jリーグが今季から2ステージ制に切り替えたのは正解だと思うんです。むしろ、「ええー?」って驚くぐらい、もっとやってもいいですよ。秋冬制もそうだし、企業名の復活とか、Jのオーナーに海外企業が参入したりとか。

洗川 ちょうど、横浜F・マリノスを外資が買収へ、とニュースにもなっています。

煙山 なんなら、インドの大富豪がJリーグにチーム持ってもいいじゃないですか。今のJリーグってライバル関係も薄まっちゃってるから、全体的に金太郎飴みたいな感じになっているんです。そこが一番の問題だと思いますね。

《2ステージ制に変わる意義》

─── 新しい取組み、ということでいえば、いま話題に出た2ステージ制に今季から切り替わります。反対する声も大きいわけですが、ポジティブに捉えるとどんな変化があるのでしょう?

煙山 優勝チームが増えるっていうことですよね。そして、シーズン最後に盛り上がる山を作ったわけですから、スポーツニュースで取り上げられる機会も増えますよね。コアな人にとっては、逆にそれが偽物っぽく感じるのかもしれないけど。

洗川 野球のクライマックスシリーズ(CS)で盛り上がる感覚と同じだと思うんです。

煙山 野球でも当初は反対意見が大きかったけど、反対していた人も、自チームがCSの舞台に進むとやっぱり盛り上がる。それはプロ野球で証明されているわけです。12チーム中6チームが出られる野球だってあんなに盛り上がるんですから、18チームが争うJのほうが整合性はあるわけです。ただ、放送する立場でいわせていただくと、勝ち上がりの条件が複雑すぎて、すごく伝えづらい(笑)。

洗川 最終節の放送ブースの光景がいまから不安です(笑)。それでも、この1発で終わるんだっていう優勝決定戦がリーグのなかにあるっていうのはすごく大事。何年もたったあとでも記憶に残っているのって、やっぱりそういう「決定戦」でのワンシーンなんですよね。

煙山 去年の最終節、ガンバ大阪はスコアレスドローで試合を終えて、他会場の結果を受けて優勝が決まりました。サポーターにしてみれば歓喜の試合ですが、サッカーをあまり知らない人が見たら、どう楽しめばいいのかやっぱりわかりにくい。ビジネスとしてサッカーを盛り上げるためには、そういう層にも訴求していかなくちゃいけないわけです。そういう意味では、今季からの2ステージ制は、やる意義があると思います。

◆ニッポン放送Jリーグラジオ 2015 年開幕戦
3月7日(土)14:00〜 万博記念競技場
ガンバ大阪 × FC東京
サッカーコメンテーター:スポーツライター・金子達仁         
サッカーパーソナリティ:ニッポン放送・煙山光紀アナウンサー
ピッチレポーター:ニッポン放送・洗川雄司アナウンサー

(後編へ続く)
(オグマナオト)