日本代表
■宇佐美貴史インタビュー(前編)

 ガンバ大阪FWの宇佐美貴史にとって、W杯出場は大きな目標である。

 ブラジルW杯イヤーだった昨シーズン、宇佐美はJリーグの開幕を楽しみにしていた。リーグ戦でゴールを量産し、土壇場で日本代表に滑り込んでのW杯出場を思い描いていたからだ。だが、シーズン開幕目前の2月に負傷。全治2カ月と診断されて、代表入りはもちろん、ブラジルW杯の舞台に立つことは絶望的となった。

「ブラジルW杯に出ることは、ひとつの目標にしていたので、(負傷したことは)そりゃ、ショックがなかったというと、嘘になります。でも、ケガをしたんやから、いつまでもくよくよしていても仕方がないし、(気持ちを)切り替えていくしかない、と思っていました。それに、チーム(ガンバ)のスタートがよくなかったんで、(W杯のことより)むしろそっちのほうが気になっていた部分もあるんですよ。どんどん(リーグ戦の)順位が落ちていって、それを(ピッチの外から)見ているほうがつらかった」

 4月末に復帰した宇佐美。代表入りは叶わなかったが、ブラジルW杯の試合はテレビで見ていた。そこで、「W杯は出るものだ」と改めて感じたという。

「W杯期間中、各々の試合とか、大会全体についてのコメントを求められたりしたけど、(客観的な立場にいる)自分がそういう話をしていることにすごく違和感を覚えた。次のW杯では、そういう立場にはいたくないですね。W杯って、やっぱりW杯に出た選手にしかわからないことがたくさんあると思うんです。大会のプレッシャーとか、相手の本当の強さとか、(試合までに)チームをどう作っていくとか。それを、早く肌で感じたい。それでまた、自分も成長できると思うんで。だから、ロシアW杯は絶対にピッチに立たないとダメやな、と思っています」

 日本代表は、ブラジルW杯でグループリーグ敗退を喫した。さらに今年、アジアカップでも準々決勝で敗退した。各年代のカテゴリーにおいても、昨年はU−16、U−19代表とも、アジアの壁を突破できなかった。宇佐美も、U−17W杯(2009年ナイジェリア大会)で世界大会を経験しているものの、U−20W杯(2011年コロンビア大会)はアジア予選で韓国に敗退し、出場権は得られなかった。

 今や、日本の若手は"世界"を知らない選手ばかりになってきている。今後のことを考えると、日本サッカー界は危機的な状況にあると言っても過言ではない。その点について、宇佐美はどう思っているのだろうか。

「僕らがU−16代表で戦っていたときは、他のアジア勢が強いとは思わなかったですね。U−19代表でも(アジア予選で)韓国に負けたけど、日本が力的に劣っているとはまったく思わなかった。ただ、日本はプレッシャーに弱い部分がある。技術的には負けていないけど、世界大会出場がかかった試合とか、大事な試合になると、プレッシャーに負けてしまう。

 そこで重要なのは、プレッシャーがかかる中、いかに普段どおり、自分の持っている技術を出せるか。それを出すためには、経験が必要だし、(試合や練習をする)日頃の環境も大事だと思う。欧州だと、普段の練習の際の、ボール回しから"結果"にこだわっている。そういう部分では、日本はまだまだ厳しさが足りないし、そういう厳しさを常に求めていかないといけない。

 だからといって、A代表も含めて、日本のサッカーのレベルが落ちているとは、まったく思っていないです。アジアカップを見ていても、日本のレベルはアジアではめっちゃ高かったですよ」

 宇佐美が日本代表に初招集されたのは、2011年6月のキリンカップだった。しかし、そのときに出場機会を得ることができず、いまだA代表での出場歴はない。昨季はJリーグでも結果を出していて、9月に始動したアギーレジャパンでは、いつ招集されてもおかしくない状況にあったが、結局、一度も呼ばれることはなかった。

 その後、アギーレ監督が解任された際、宇佐美はこう語った。

「アギーレ監督は、結果以外のところも見ていたし、(自分に)課題を突きつけてくれた」

 殊勝な発言だった。

「昨季は、ほんまに結果だけなら(自分は代表に)選ばれていたと思うんです。それに、攻撃の部分においては、自分ができないプレイが少なくなってきていたし、間違いなく(自分には)他人にはないものがありますから。その武器を生かせば、今すぐにでも代表に入れるぐらいのものが、自分にはあると思っていました。それでも、代表に入られへんかったのは、それだけじゃない部分を、アギーレ監督に見られていたからかな、と思いますね。それが何か、もちろん自分の頭の中にはありましたけど、(課題に)本気で取り組むのって、難しいじゃないですか。それで、すぐに改善できなかったけど、アギーレ監督にずっと(代表に)呼ばれなかったことで、本気で課題に向き合えるようになったんです」

 宇佐美は、その課題をどういうものだと考えていたのだろうか。

「自分の力を出すため、生かすための運動量や、献身的な守備もそうなんですけど、最も足りなかったのは、自分が得意とする攻撃の部分。おそらく、オフ・ザ・ボールの動きだと思います。僕は、どうしてもオン・ザ・ボールでのプレイに頼り過ぎてしまうんですよ。

 大事なのは、オフ・ザ・ボールのとき、どれだけいいポジションに入っていけるのか、どれだけいい位置、ゴールに近いところでボールを受けられる動きができるか、そして、その回数をどれだけ増やせるか。そこを補うことができれば、もっと質の高いプレイができると思うし、代表にも呼ばれるかなって思います」

 代表に招集されないことで、宇佐美は自らの課題と向き合い始めた。日本期待のFWを本気にさせたアギーレ監督は、わずか半年で解任されたが、日本サッカー界に残したモノは決して少なくはなかったようだ。

 翻(ひるがえ)って、アギーレ監督にそのタレント性を買われて、代表デビューを飾ったのが、武藤嘉紀(FC東京)や柴崎岳(鹿島アントラーズ)だ。同じ1992年生まれの彼らの活躍を、宇佐美はどう見ていたのだろうか。

「特別に意識はしていないです。同世代の彼らが代表でできて、自分ができないわけがない。だからこそ、早く"代表"というステージでプレイしたい。そこに立てないようなら、それまでの選手や、ということ。でも、自分はそうは思っていないんで。それに、代表でやれたら、また海外に挑戦する道が開けると思うんです。何もできずにドイツから帰ってきたんで、リベンジしたい。それは、絶対に諦めない」

 ギラギラとした貪欲さは、ドイツから帰国した1年半前とまったく変わっていない。むしろ、今年のほうが強くなっている感がある。

「ドイツで味わった悔しさと、(そのリベンジに燃える)ギラギラした思いは、今でもありますよ。それは一生、消えないと思います」

 日本代表はまもなく新たな監督を迎えて再スタートを切ることになる。宇佐美がこれからも個の質を上げて、ゴールという結果を出し続けていけば、必ずや朗報が届くはずだ。
(後編へ続く)

佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun