官製相場によって演出された株高

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 GPIFという独立行政法人の名を聞くことが多くなった。

 正式名称は年金積立金管理運用独立行政法人だが、長過ぎるのでGPIFと呼ばれ、独法となる前は年金福祉事業団。国民の年金資産を運用する機関投資家である。

 その規模は137兆円と世界有数だが、これまで陰に隠れていた印象のGPIFが、いきなり浮上したのはアベノミクスの“尖兵”となって株を買い、官製相場の中核を担っているからだ。

官製相場で「運用収益は6.6兆円の黒字」

 これまでは国債を中心に固く運用。ところが昨年10月に運用ポートフォリオ(資産構成割合)の見直しを発表。それまでの国債比率60%を引き下げて、国内株式を12%から25%に引き上げた。

 この変化は劇的で、GPIFは2月末、「昨10〜12月期決算は、国内株式の比率が19.80%に上昇し、運用収益は6.6兆円の黒字になった」と、発表した。

 着実に、安倍晋三政権の株高政策に貢献しているが、マスコミでGPIFが話題になるのは、その統治を巡って、政権内部に紛争が発生、それぞれに“応援団”がついているためである。

 GPIFを所管するのは厚生労働省。塩崎恭久厚労相は、ポートフォリオの見直しには積極的だったが、その分、組織のあり方を見直し、GPIFの運用方針にチェック機能を持たせようと、日銀の政策委員会のような合議制組織にしようとした。

 それではスピード感が薄れると、菅義偉官房長官と世耕弘成官房副長官が反発、最後は安倍首相の“お墨付き”を背景に、塩崎厚労相を押さえ込んだ。そのうえで、世耕官房副長官と親しい英投資顧問会社「コラー・キャピタル」のアジア地区代表・水野弘道氏を最高投資責任者に据えた。

「菅・世耕VS塩崎」

 つまりGPIFを巡っては、「菅・世耕VS塩崎」の争いがあった。それを最初に暴露したのは、会員制月刊誌『FACTA』(2月号)で、同誌は内幕を描いたうえで、水野氏の運用責任者としての資質に疑問を投げかけた。

 それに反発するように、塩崎批判を展開したのが『週刊文春』で、同誌は2月19日発売号で5ページにわたって記事を掲載。明らかに官邸からの情報を元にしていた。

 これに、2月20日発売の『FRIDAY』が参加した。水野氏にスポットを当てた記事だが、

「上から目線のエリート」

 というサブタイトルにあるように、同氏に対していい印象を与える記事ではない。

 国民の137兆円もの年金資産を、ひとりの人間に託そうとするのだから、「水野WHO」という声が起きるのは当然のこと。

 一度は官邸に凱歌があがったとはいえ、運用の在り方とチェック機能にはまだ論議が必要だし、GPIFを通じて株価を押し上げるアベノミクスについても、再考の余地がある。

伊藤博敏ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある