日本代表監督を契約解除されたハビエル・アギーレ。契約解除の発端となる八百長疑惑の試合、レバンテ対サラゴサが行なわれたスペインだが、そのニュースは外伝の一報が届いただけで終わり。続報も大きな反響もなかった。それも当然といえば当然のことだろう。スペイン人が関与していないニュースを国内で大々的に取り上げる理由は見当たらない(アギーレはメキシコ人)。

 そこで今回の日本サッカー協会の決断と、その後の新監督探しに関して、ハビエル・アギーレをよく知る記者2人、ラモン・アルバレス氏とウスエ・マルティネス・デ・スニーガ氏(オサスナ時代)。そしてヴィッセル神戸でバクスター、松田浩両監督のもとでセカンドコーチを務めた経験があるフアン・ペドロ・ベナーリ氏に話を聞いてみた。

 まず始めに日本サッカー協会が決断した契約解除に関してだが、3人が口を揃えたのは、日本の文化を考慮し、協会の決断を尊重するが、「有罪でも無罪でもなく嫌疑をかけられただけで解任をするのは早い。これで無罪だったらどうするのか」と言うものだった。

 W杯予選の準備に影響を与えることが理由としてあげられていたことに関しても、ウスエ記者は「そうですか、とすんなり納得できるものではない。ハビエルが出頭を要請されても、彼自身が話した通り、代表の活動以外の日に出頭することになるだろうし、そういった影響を遮断し、集中できる環境を作るのが協会の仕事ではないのか」と、疑問を呈すのだ。

 ラモン記者は「違約金はない」という日本協会の発表に首をかしげた。「彼の人柄から言えばそういう決断をしたかもしれない。だが、(契約した年俸が満額支払われない上に)違約金がゼロと言う話はないだろう。ハビエルと共に外国人スタッフも解任されたわけだから。少なくともスタッフの今後数ヵ月の生活を保証するものはもらっている可能性は高いと思うよ」と推測している。彼らの目には日本協会が事なかれ主義に陥っているように映っているのだ。

 後任監督について、フアン・ペドロ・ベナーリ氏は「これまで日本が積み上げてきた経験をしっかりと積み重ねることのできる監督選びをすることが大事だ。個人的にはザッケローニのようなプレイスタイルのほうが日本には合っていると思う」と語る。監督を代えるたびにゼロからスタートさせるのではなく、日本代表がこれまで重ねて来た経験をしっかりと継続させることを一番に考えた監督探しをすべきだと言うのだ。

 ラモン記者も「日本が組織としてまとまった良いサッカーをして成長しているのを、世界は見ている。焦る必要はない。ハビエルは日本に新たな経験を与えたはずの監督だから契約解除は残念だが、日本の良さをいかしていけばいい」と、日本サッカーに合う監督を見つけるべきだと語っている。

 ひとつ思い出したのは、以前、スペイン代表の強さの秘密を探る仕事で、スペインサッカー協会の下部カテゴリーのコーディネーターを務めているヒネス・エルナンデス氏から聞いた話だ。

「スペインが強くなったのはイニャキ・サエス(1999年、決勝で日本を破りU−20W杯優勝を果たしたシャビ世代の監督)を中心に、90年代後半から現在のパスサッカーに取り組んできたからだ。他の欧州の国に比べて体の小さいスペイン人は、コンタクトサッカーに勝つのは難しい。だから、スペインの長所である技術を生かしたサッカーを時間かけて浸透させてきたんだ」

 その後サッカー界の頂点に立ったスペインも、決してその圧倒的な強さを突然手に入れたわけではない。自分たちのストロングポイントをしっかりと理解し、成熟させてきたのだ。

 新監督探しももちろん大事だが、まずは誰が監督となっても大きく変わることのない、ベースとなるスタイルを確立させることが必要なのではないだろうか。

山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi