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今年に入って、一気に人気となったCMシリーズがある。KDDIが手がける「三太郎シリーズ」だ。

誰もがよく知る昔話である、桃太郎、浦島太郎、金太郎の3人が登場。軽妙なセリフを交わして、視聴者をクスリと笑わせながら、最後にauの主力商品、サービスを印象づけるというCMだ。

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○違いを説明するのではなく、"au"を好きになってもらうために

KDDIでは昨年末は松岡 修造店長によるCMシリーズ、今年になって三太郎シリーズを放映。ここ最近、視聴者の心をわしづかみにしている。

KDDIでプロモーションを手がける宣伝部 コミュニケーション戦略 グループリーダーの高橋 紀行氏は「お客さんにどう伝えるかがカギ。3つのキャリアが同質化しているなかで、いかにauに振り向いてもらうかがポイント。今年の1月1日、これまでも訴え続けてきた『新しい自由au』というメッセージをリマインドしたかった。もう一回、ユーザーに感じてもらうためにコミュニケーションを新しくした」と語る。

携帯電話業界は、NTTドコモがiPhoneを取り扱い始めたことにより、端末ラインナップの差がなくなりつつある状態だ。料金プランも3社が共に「国内かけ放題プラン」を導入したことで、違いが無くなっている。ネットワーク品質も、各社とも高速通信技術であるLTEを導入し、エリアの広さ、通信速度の速さを競っているが、一般ユーザーにはなかなか違いがわかりにくい。

そこで重要となってくるのがCMだ。ユーザーにauというブランドに振り向いてもらい、auブランドを好きになってもらわなくてはならない。

「これまでのCMは、携帯電話会社が差別化として持つ、本当に小さい部分の差を細かく説明して、ユーザーに強く認識してもらうためのプッシュ型広告が多かった。今回の三太郎シリーズはサービスを初めから言うのではなく、サービスのエッセンスである部分の会話劇を前半に持ってきて、最後にひとことを残すというパターン。

(携帯電話と固定回線のセット割引である)auスマートバリューのCMでは、前半はサービスと関係なさそうな会話で、『ひとりひとり』というキーワードを強調しつつ、最後に『ひとり一人がお得』というスマートバリューの訴求につなげていく。サービスを一言に凝縮するかが重要になってくる」(高橋氏)

○"田中プロ"も満足した三太郎シリーズ

ただ、様々なサービス、商品を訴求するCMの場合、どうしてもいろいろとメッセージを盛り込みたくなってくるものだろう。特に商材が豊富にある携帯電話会社にとってみれば、「あれもこれも」となってくるはずだ。

「社内から『細かくサービスを訴求したい』と言われるかと思ったが、CMが面白いと、そういった声も聞こえてこない。むしろ、CMの中身がセールストークになるなど、社内からの反応も思ったより良かった。エンタメ要素を盛り込むと、世の中が動くと実感した」(高橋氏)

このCMの面白さに「会話劇」があるのは間違いない。誰もがよく知る3人の太郎たちが、現代人が当たり前のように会話しているリアリティのあるセリフをしゃべる面白さ、軽妙な掛け合いについつい画面を注視したくなってくる。実際に、撮影現場では台本通りにやるだけではなく、出演している3人のアドリブによって成立することも多いようだ。

学割を訴求する際、桃太郎が「パッカーン」と桃を割られる誕生シーンを表現するシーンがあるが、撮影時、高橋氏は「『パッカーン』の面白みは撮影しているタイミングでは認識できなかった。しかし、編集で繋いでみて、微妙な間が一気に面白くなった。通常、関係者の試写会では、粗探しの姿勢で見るものだが、思わず笑ってしまった。絶妙な間がこのCMの面白さかも知れない」と語る。

KDDIの社長である田中 孝司氏も、今回のCMシリーズには大満足のようだ。

「社長もかなり笑って見ています」(高橋氏)

○お父さんシリーズには浅からぬ因縁?

同社は、ここ最近、CMには比較的「笑い」を盛り込もうと努力している形跡がある。熱血的なauショップの店長を演じる松岡 修造さんしかり、auスマートバリューを訴求する「おとくちゃんシリーズ」も俳優の松重 豊さんが女装してオチにすると言った具合だ。

「テレビCMだと基本的にスキップされる。テレビCMはまず気がついてもらう、気にしてもらうところをスタートしている。広告は広告なので、普通にやるよりもエンターテイメント性、楽しんでもらう要素がないと見てもらえないと考えている。惹きつける力がポイントだと思う」(高橋氏)

「人を惹きつける面白さ」でいえば、携帯電話業界にはソフトバンクモバイル「お父さんシリーズ」という巨人が存在する。ソフトバンクがボーダフォンを買収して以降、白い犬がお父さんというシリーズは不動の人気を誇っている。

長年にわたって、CM好感度で圧倒的にトップを走っていたお父さんシリーズだが、KDDIの三太郎シリーズが登場したことによって状況は変わりつつあるようだ。

「調査をしているCMデータバンクで、過去最高の反応が出ている。2月の前半だけで先月分のスコアを獲得してしまったほど」(高橋氏)

こういった経緯から、KDDIとしてはお父さんシリーズが"気が気でない存在"と言えただけに、今回の三太郎シリーズの成功に対する喜びもひとしおのようだ。

お父さんシリーズはCMのみならず、店頭での訴求や、ノベルティグッズなどにも展開されるなど、ソフトバンクモバイルのイメージを大きく引き上げるのにつながっている。

三太郎シリーズも「これまでが産みの苦労だった。ようやく、ひとつのフックができたことでいろいろできるようになる。Web、ソーシャル、店頭を含めて、様々なものを巻き込んだ企画をこれから手がけていきたい」(高橋氏)とのことだ。

○ツッコミどころが大事

昔話の主人公を実写化してCMを展開するというやり方は、つい最近ではペプシが小栗旬を起用して「桃太郎」を展開。映画のような格好いい映像表現が話題となっている。

「桃太郎を実写化」という点では、KDDIも同じコンセプトで被る部分もある。しかし、ペプシは「ナンバーワンであるコカ・コーラに対して『倒してやる』という挑戦的なメッセージ」が込められている。

一方のKDDIは「もともと無かったものは自分たちで作れば良いという裏テーマがある。業界に無かったものというメッセージングが込められている。アウトプットは昔話の実写化で一緒かも知れないが、入り口が違う。エンターテイメント性や面白さというポイントに重きを置いた」と高橋氏は語る。

三太郎CMシリーズが登場した頃、Twitterなどでも「ペプシに続いて、KDDIも桃太郎か」と話題になったこともある。三太郎シリーズは、軽妙な会話劇が繰り広げられ、ソーシャル上でも盛り上がることが多い。実は、制作者側としても、ソーシャルで盛り上がる工夫をしているのだという。

「シリーズの当初、『キジは微妙だよね』というセリフがあったが、『キジには意味があるんだ』『キジは鬼門を抑えるために必要』というツイートが返ってきた。そこからYouTubeを見てくれた人もいた。

『微妙だよね』という表現への反応が気がかりな面があったが、CMも余白やツッコミどころがあると反応してもらえる。計算外もあるが、ネットの反応は意識している」(高橋氏)

実際、「微妙な存在」として位置づけられたキジは、その後、auスマートバリューのCMで、「子だくさんで生活を支えてあげないといけないから、桃太郎がきび団子を渡している」という流れにつながる。またここで盛り上がりを見せるというわけだ。

その点、次の展開として気になるが「桃太郎の彼女であるかぐや姫」の存在だ。高橋氏は「かぐや姫はこうご期待です」と言葉を濁すが、またソーシャルがざわつくことになりそうだ。

(※編集部注:高橋氏の高は旧字体)

○5日にかぐや姫の正体が判明!?

KDDIは3月6日より、桃太郎のカノジョ「かぐや姫」が登場する三太郎シリーズの新CMを放映する。5日には新CM発表会が行われる予定で、12時よりライブ配信も行われるため、かぐや姫が誰か要チェックだ。

(石川温)