ムーンサイドな海外音楽の旅 第2回:thesixtyoneで辿る2007年直後のインディー音楽

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こんにちは、「同人音楽超まとめ (http://dm-matome.com/) 」なるものをやっております、AnitaSunと申します。

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諸事情により中断していた連載ですが、ついに再開! Webサービスの隆盛によって欧米のインディーシーンで生まれた、非常に奇妙で新しい「ムーンサイド」な海外の音楽事情をご紹介します!

前回記事


ムーンサイドな海外音楽の旅 第1回:米西海岸の音楽ベンチャーブーム

前回は前知識と称したうん蓄だけで1回分を費やしてしまいましたが、今回からやっと音楽シーンの紹介に入ります。

何十曲もどんどん紹介していきますので、以後は頭をからっぽにして楽しんでください!

thesixtyone──SoundCloudでは捕捉できない、ロック・ポップの流れをキャッチできる音楽投稿サービス


thesixtyone

thesixtyone


さて、前回ご紹介した音楽投稿&投票合戦サイト「thesixtyone」。

2007年当時、SoundCloudがクラブミュージックを展望するのに一役買っておりましたが、一方でこのthesixtyone、現在の新デザインとなって以降は大分落ち着いてしまったものの、まさに「インディー」音楽の縮図が詰まった、非常に価値のあるサイトです。

サービスの内容はいたってシンプル。アーティストは楽曲を投稿し、ユーザからのハート(いいね!)を集める合戦を行うというもの。ユーザは、ハートをつけるごとにRPGのように経験値が溜まって「レベル」が上がっていくほか、まだハートの少ない曲に経験値をベットすることで、将来ついたハート分をまるまる経験値としてゲットできるゲーム要素が特徴的です。

当然インディーの花形であるオルタナ系のロック・ポップミュージックや、ソフトロックなどがその投稿の中心ですが、「地元では根強いらしいもののなかなか日本では生息確認ができなかった」最近のカントリーや、SoundCloudにはついぞ投稿されない「お洒落じゃない側の(!)」ヒップホップなども大量に投稿があり、なかなかカオスな味わいがあります。

中でも、今後回を重ねて紹介していくことになる、狂気をはらんだ「ムーンサイドな」音楽の源流になる音楽として、いくつかの新しい音楽の芽が登場しました。

今回は、この部分を紹介いたします。

ナードとインディーのハネムーン



このサービスがなぜ新しい音楽シーンの発信拠点になったのかは正直わからない部分もありますが、新しい音楽シーンを展望するのにちょうどいい場所だったことは確かです。

そんな中で、まずご紹介したいのは、当時流行ったナード文化xロック・電子音楽のブーム。

特に「超」わかりやすいのは I Fight Dragons

当時世界的に流行った、たとえば『ゼルダの伝説』みたいな人気コンテンツにあやかった二次創作で注目を稼ぐプロモ手法の典型例としても歴史的価値があるのでは……!

I Fight Dragons - I Fight Ganon (Legend of Zelda Theme - Live)




そしてthesixtyoneでのみ活動をしていたBankai

彼にとってYouTubeはオマケだけにPVは少ないものの、thesixtyoneでのハート数は、インディー世界最大の音楽フェス「SXSW」の招待アーティストたちとタメを張るマッチョっぷり。

以下はアメリカのアニメ「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」楽曲のリミックス。

Bankai - Teenage Mutant Ninja Turtle Arcade Theme




thesixtyoneには投稿されていませんが、ファミコンのスーパープレイに合わせてバンド演奏をするxxxxband(ゲームソフト毎に名前が変わる)の話題なども、この当時ホットでした。

以下は、「MEGAMAN2(「ロックマン2」)」のスーパープレイ+バンド演奏であるMegabandのライブ映像。

Bit Brigade - Live @ MAGFEST X - Megaband full show.MP4




そして、それらのようなゲーム・アニメとは異なりますが……まさにステレオタイプな「ナード」な見た目のRonald Jenkeesが、ぶっ飛びそうになるほどカッコイイキーボード演奏をするギャップ萌え大ヒット演奏動画「Guitar Sound」も、thesixtyoneで大暴れしていた楽曲のひとつでした。

Ronald Jenkees - Guitar Sound




Ronald Jenkees - Guitar Sound HQ




【次ページ】Indie Pop/Rock + 電子音楽 = Indie Electronic

Indie Pop/Rock + 電子音楽 = Indie Electronic



ちょうどこの2007年頃、典型的なインディーロック/ポップに、独特な音色の電子音楽を組み合わせた「インディーエレクトロニック」(最近は「オルタナティブ・ダンスとも」)とよばれるジャンルの音楽がウワーーーッと出てきました。 前述のRonald Jenkeesなどもその黎明期の一人。

当時はGoogleで10万件も引っかからなかったワード「Indie Electronic」ですが、今では千数百万件を超えるワードに成長しました(google 英語版での検索結果)。

では、「インディーエレクトロニック」とはなにか。とにかく言葉で説明するよりも、音を聞くほうが早い!

まずはPhantogram。この曲は本当に典型的な例です!

Phantogram - Mouthful Of Diamonds




次に全くの無名ながらも私が個人的に好きなHotels

Near The Desert, Near The City




全英アルバムチャート5週連続2位、Florence + The Machineなんかも、だいぶこの辺をかすってます。

Florence + The Machine - Dog Days Are Over (2010 Version)




そして、クラブミュージックファンにもだいぶ知られている(?)Crystal Castleも、まさにインディーエレクトロニック界隈の人気アーティストなのです!

Crystal Castles - Untrust Us




インディーエレクトロニックの中でも、ダンスミュージック寄りだと、以下のような音楽があります。

イギリスのFilthy Dukes(thesixtyone にアカウントなし)。

Filthy Dukes - This Rhythm (Official Video)




フランスのM83

M83 'Graveyard Girl' Official video




【次ページ】ソウル・ブラック側にも飛び火!

ソウル・ブラック側にも飛び火!



Fitz and the Tantrumsは、まさにSXSWの招待アーティストとして何度も大きなステージを得ている、インディー界隈の超大型アーティスト。

彼らはインディーエレクトロニックのアーティストにこそ数えられませんが、サウンドの造りは非常にインディーエレクトロニックを意識している上に、主に活動&ピックアップされるWebサイトがダブっていたことから、ファン層がモロ被りしています。

そんなFitz and the Tantrumsと商業レーベル未所属のBankaiやRonald Jenkeesが、真正面からハート数を競っていたのだから、thesixtyoneは面白い。

Fitz and The Tantrums - Don't Gotta Work It Out




そんなインディーエレクトロニック、そもそもはYeah Yeah YeahsやAnimal Collective、Goldfrappといったアーティストが直接の原点になっているようです。

Yeah Yeah Yeahs - Zero




Animal Collective - In The Flowers




Goldfrapp - Ride A White Horse




ただし、この3組は日本の音楽雑誌にも大きくフックアップされたアーティストだったのに対して、今回ご紹介したYouTube/thesixtyone以降のアーティストはインターネットを通じた局部的な情報の伝わり方だったということを考えると、この違いは非常に興味深いことこの上ありません。

背景として、やはり連載第1回で述べたインターネットと音楽サービスを巡る事情の影響は、さぞや大きいことかと想像します。個人的には、多くのネットプロモーションは、マスプロモーションに比べてローカルに強いと言いますか、文化的に近い人達に対して濃く伝わっていく傾向があるのではないかと私は考えています。

おまけのカントリーミュージック(これはムーンサイドだ!)


とまあ、今回は音楽スタートアップサービスの乱立の影で発生していたインディーシーンの広がり、特にその中でもインディーエレクトロニックの界隈をご紹介しました。

……しかしまたその一方で、当時同じくthesixtyoneに大量投稿のあったカントリーミュージックの様子も……気にはなりませんか? いいえ、むしろ気にしてほしい! 何しろ本当に胸に刺さる曲がいっぱいあるんです!

本連載の大筋には全く関係しないカントリーミュージックではありますが、例えば以下のようなハイクオリティな楽曲が多数投稿されているんです……。

Mat d, And the Profaine Saints

The Ghost of Huddie Ledbetter




Dan Dyer

Love Chain




以上、最後に小さな脱線でした。
では、次回もお楽しみに!(次回に続きます)