優勝候補の筆頭、宇野昌磨。今季、トリプルアクセルに加え4回転ジャンプもマスター。写真は四大陸選手権

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3月2日(月)から8日(日)まで、エストニア・タリンで開催されるフィギュアスケートの世界ジュニア選手権。男女ともに日本勢の活躍が期待できる大会だ。今回は、男子シングルの展望と、出場する日本人3選手の近況を伝えたい。

一躍、優勝候補に名を連ねた山本草太の全国中学校大会エキシビジョンの演技。最近の急成長ぶりには目を見張るものがある。世界ジュニアでもこの演技が観られるか

日本からは宇野昌磨、山本草太、佐藤洸彬がエントリー。羽生結弦以来の日本勢優勝の可能性が大いにあり、注目が集まっている。ずばり、今大会は本命・宇野昌磨、対抗・山本草太の2強対決になる。

実績面では文句なく宇野昌磨がN0.1。そして山本草太のここ最近の充実振りは、過去のパーソナルベストが参考にならないほどの勢いだ。一気に20点ほど更新しても何ら不思議ではない。

今季、シニアで戦っていたロシアのピトキーエフが世界ジュニアにエントリーしてきたが、ジャンプ以外の要素では宇野と山本に及ばない。

ロシアのペトロフも同様で、宇野と山本が4回転ジャンプ、トリプルアクセルといった大技を決めて安定した演技をした場合、かなりの点差が開く可能性がある。

4回転ジャンプが武器のボーヤン・ジン(中国)もパーフェクトな演技ができて、宇野、山本にようやく対抗できるレベルだ。

台風の目となりそうなのはアメリカのネイサン・チェン。全体的にスケートのレベルが高い。しかし、かかとに故障を抱えており本調子ではないとの情報もある。試合当日の仕上がり次第だろう。

次に、日本選手の近況について触れていく。年末の全日本選手権で2位と大躍進を遂げた宇野昌磨だが、その後はジャンプの不調に苦しんだ。

インターハイでは優勝したものの荒れた演技で、直後の取材では「絶不調です。どう跳んだらいいのか悩んでいます」との弱気なコメントまで飛び出した。その後、必死の調整を積んでいるが、ジャンプに関しては今も良くなったり悪くなったりを繰り返しているようだ。

四大陸選手権でも、日ごとにコンディションが大きく変わり、悩んでいる様子だった。ただ、調子の良い日にはクオリティの高いジャンプを跳んでいたことも事実。今回のメンバーの中で、地力ではトップの彼だが、調整のピークを試合当日に持ってこられるかどうかがカギとなる。

一方、今もっとも波に乗っているのが山本草太である。全国中学校大会では、ショート、フリー合計3回のトリプルアクセルを初めて決めて、世界ジュニアの優勝を争うポジションに躍り出た。

4回転ジャンプに挑戦するプランもあるようだが、トリプルアクセルだけでも十分に優勝圏内といえる。全国中学校大会での取材でも、意欲的なコメントが多く聞かれた。

「いろいろな方にスケーティングが素晴らしい、と言ってもらえますが、自分ではまだまだ満足していません。スピードをもっとつけて、4回転ジャンプにつながるようにスケーティングを向上させたい。目標は、ジャンプの前後でスピードが変わらない、もっと流れるジャンプを身につけること」

さらに、「今日の演技はジャンプに集中しすぎて、表現が疎かになったのが反省点です。ジャンプが完璧になれば、その分、表現力も意識して演技できる。だからジャンプをもっと強化したい」と語った。

どこまでも意欲的で飽くなき向上心を感じさせる。この取材からほぼ1カ月。どれだけ成長した姿を見せてくれるのか、楽しみでならない。

岩手県の佐藤洸彬は、幼少時から将来を嘱望されていた選手。東北地方のローカル大会で戦っていた頃は、羽生結弦のライバルと目されていた。今季、ようやく素質が開花。トリプルアクセルを習得し、年末の全日本選手権では10位と健闘。新人賞を獲得し、世界ジュニアへの切符もつかんだ。

彼にとって初めての大舞台だが、気後れすることなく、持ち前の表現力を世界の舞台で存分にアピールしてほしい。

世界ジュニア選手権において、日本男子は高橋大輔、織田信成、小塚崇彦、羽生結弦と4人の金メダリストを輩出している。日本にとって5度目の優勝なるか、しっかりと見守りたい。【中村康一】