ホンダ・クラシックの最終ラウンドは日没サスペンデッドで月曜日に持ち越された。天候が荒れ、大会進行が狂った影響もあって、リーダーボードは混沌としている。そんなリーダーボードの激動ぶりは、ある意味、現在のゴルフ界の反映だ。

 タイガー・ウッズがプロ転向した96年以来、ゴルフ界はほぼ20年の歳月をウッズ中心で過ごしてきた。突出した才能を備え、突出した成績を上げ続け、当たり前のように王座に君臨し続けたウッズの姿を眺め続けたせいなのかもしれない。米ゴルフ界、いや世界のゴルフ界の感覚が少しばかり麻痺していると、ときどき思う。
 すべてがウッズとの比較になり、好成績がちょっと続けば“ネクスト・タイガー”と囃し立てる。そして“ずっと好調であること”が当たり前のような勘違いに陥り、成績低迷がちょっと続けば“スランプ”と囁かれる。
 この20年の歳月は若者たちがウッズを目指して台頭し、ウッズ効果でテクノロジーも用具も何もかもが進化し、賞金も高騰し、ゴルフ界に広がりと深みをもたらしたけれど、一方で、短期的にモノゴトを眺め、短絡的に結論づけようとする弊害ももたらした。
 
 不倫騒動に端を発し、スイング改造や度重なる肉体の故障で輝きを徐々に失っていったウッズが、ひどいアプローチイップスに陥り、戦線離脱してしまった原因の一端は、ウッズ自身と周囲、双方の焦りにあったと思う。早く調子を戻さなきゃいけない。早く優勝しなきゃ。早くメジャーで勝たなきゃ。そうやってウッズ自身も焦り、周囲はウッズの一挙一動に一喜一憂。それがウッズにとって、どれほどのプレッシャーになっていたかに思いを巡らせれば、短期復調を期待し、期待されたあのウッズがどんどん追い詰められていったことが頷けてくる。だからこそ、ウッズ不在の今こそは、選手も周囲も焦りは禁物だ。
 ホンダ・クラシックは世界ナンバー1のローリー・マキロイが予選落ちして姿を消し、決勝ラウンドでは久しぶりに上位に浮上したフィル・ミケルソンが米メディアを賑わわせている。ミケルソンは好調不調の波がたとえ小さな波であっても、そのたびに必ず取り沙汰され、絶えずウッズと比較され、そしてウッズが輝くたびに陰になってきた。ウッズが戦線離脱した今は「ウッズのみならずミケルソンも不調」などと言われつつある。確かにミケルソンは昨季の勝利がなく、今季も3試合に出て2連続予選落ち。そこだけを部分的に指摘すれば、成績不振ということになる。
 けれど、ウッズより4年も早くプロ転向し、ウッズより5つも年上の44歳のミケルソンが、ウッズと同等かそれ以上の重圧を23年以上も耐え抜き、その中でメジャー5勝を含む米ツアー42勝を挙げてきた努力は想像を絶するものだ。歳月の長さに加え、ピラミッドの頂点の高い位置で走り続けてきた彼の持久力こそが評価に値する。今もなお肉体づくりに努め、このオフは食事制限でダイエットにも成功。不調だ、何だと言われながらも優勝が見える4位の好位置で大荒れのホンダ・クラシックの終盤を迎えようとしている。
 「ずっとハードワークを続けてきたし、今も続けている。それが、いつ開花し、いつ実を結ぶのかはわからないけど、そうなると信じている。そのときが早く来ればいいなと思う」
 世界ナンバー1、2を競い合ってきたウッズやミケルソンとは、キャリアも次元も違うけれど、ミケルソンの前述の言葉は、石川遼の今の胸の内にうまく当てはまっているように思える。石川も期待と重圧を背負いつつ、常に前向き、常に努力。米ツアー1年目はシード落ちの危機から這い上がり、2年目の昨季は奮闘したが初優勝は挙げられず、3年目の今季は4連続予選落ち。だが、それでも諦めずに走り続け、今大会は今年初の決勝進出を果たした。まだ3年目。この先、あと何年、ここで走り続けられるのか。そこが一番の難関なのだ。
 「この米ツアーは125位に入ってシード選手でいるだけですごいこと。この場にいることが世界のトッププレーヤーである証です」
 かつて丸山茂樹がしばしば口にしていた言葉。丸山はこのフレーズを彼自身にも言い聞かせていたのだと思う。
 そう、米ツアーは持久戦。走り続けることこそが大切だ。米ツアーにいる限り、花開く日はきっと訪れる。明日の月曜日、今大会を何位で終えたとしても、米ツアーに居続けることさえできれば、結実のチャンスは誰にも必ず訪れる。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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