東京株式市場が連日、株高に沸いている。日経平均株価は2月26日終値で約15年ぶりの高値となる1万8700円台をつけて2万円の大台乗せをうかがう勢いだ。いま株式投資のチャンス到来なのか。

 最近の上げ相場について、金融市場のプロたちは「これは官製相場」と解説している。まず日銀だ。日銀は黒田東彦総裁の下、デフレ脱却を目指して年間3円のETF(上場投資信託)購入を宣言している。

 次にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)。GPIFは昨秋、日本株への投資割合を従来の12%から25%へ倍増すると発表した。金額にして10兆円以上の買い増しとみられている。

 それに日本郵政だ。日本経済新聞はグループ最大の資産を抱えるゆうちょ銀行が従来の国債から徐々に株式への投資割合を増やすと報じた。これらを合わせると、少なくとも10数兆円以上の買い余力が市場に眠っている格好になる。「だから多少、相場に下げ圧力がかかったとしても、いざとなれば政府・日銀はPKO(株価維持操作)を発動して株価を買い支えるでしょう」(金融市場に詳しいエコノミスト)

 当面の懸念材料だったギリシャの債務問題も欧州連合(EU)が4か月の金融支援延長を決めたので、買い安心感につながっている。とはいえ、まだ株は上がるのかといえば不安材料もある。最たるものは、世界情勢の不透明感だ。

 過激派組織「イスラム国」(IS)の暴虐非道ぶりは言うまでもない。米国をはじめとする有志連合は連日、IS支配地域への空爆を実施しているが、壊滅には数年かかるといわれる。英国の女子学生3人がIS入りを目指して出国した、というニュースが問題の根深さを示している。

 テロ組織ではないが、中国やロシアの行動も「世界秩序への挑戦」という意味では同じだ。中国は「南シナ海の大部分は中国の領海」と言い募り、1990年代初めから岩礁を勝手に占有して滑走路や構造物を建設してきた。

 ロシアはクリミア侵攻を既成事実化しただけでなく、ウクライナ東部でも公然と親露派を支援している。親露派とウクライナ政府軍の停戦は半ば有名無実になってしまった。中国とロシアは国連の常任理事国だから、制裁決議に対しては拒否権を発動できる。つまり国連は事実上、機能していない。

 こうしてみると、いま世界は平和と安定、秩序を無視する勢力とそれに対抗する勢力の戦いになっている。「平和と繁栄の時代」から「テロと戦争の時代」に大きく変わりつつあるのだ。

 一連の変化はけっして偶然ではない。ロシアのクリミア侵攻は中国に刺激された。またロシアの侵攻も中国を刺激した。テロリストの行動だって中ロ両国の傍若無人ぶりに触発された面がある。

 米国の衰退で事実上「おとがめなし」になったからこそ暴力が野放しになった。無法が無法を呼んだのである。

 そんなテロと戦争の時代に株価は安定して上がり続けるだろうか。それは難しいだろう。リスクがあふれた世界でリスク商品に投資するのは、火事場で焼き芋を探すようなものだ。みんな丸焦げになるのが関の山ではないか。

 私は株をやらない。だから株式市場も投資家の立場で見ていない。人々の投資行動に興味があるだけだ。それで言えば、3月は企業の決算期である。プロたちは「ここで、ひとまず手仕舞いして利益確定を」と考えてもおかしくない。

■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2015年3月13日号