女性のドロドロした世界が渦巻く

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 最近ではNHK・杉浦友紀アナ(31)の“二股交際疑惑”、昨年12月には、NHKの岡村真美子キャスター(31)の“W不倫騒動”がマスコミ報道を賑わせた。真偽の程はわからない。だがいくつかのこうした女子アナを巡るスキャンダル報道は、恐らく彼女らの足を引っ張ることを目的とした内部の者からのリークだろう。

 なぜ放送業界ではこうした事案が頻発するのか。某県の地方局アナを振り出しにフリーアナとして数多の仕事をこなしてきたアラフォー現役アナの立場から論じたい。全てのアナや放送局にあてはまる話ではないが、自分が見聞きした事実を挙げていきたい。

「○○アナはこの番組スタッフの悪口を言っていました」

 2000年代始め、某在京局での著名番組でのことだ。

「○○アナはこの番組のスタッフの悪口を言っていました──」

 ある女子アナが同僚である○○アナについて、こうした嘘の噂をスタッフの間に流したことがあった。その日、○○アナは出社時、スタッフ全員から無視された。幸い、彼女は真実を話す機会に恵まれ誤解が解けたが、ここまで酷くなくとも女子アナ同士、他のアナたちの根も葉もない噂を番組担当者やスタッフに流すことは珍しいことではない。

「△△アナはもうすぐご結婚だそうです」
「□□アナは妊活しているそうですよ」
「××アナは体が弱いですよ」

 といった類だ。結婚、妊娠、体調不良……どれも局側にとっては女子アナを番組から降ろす都合のいい口実ばかりである。とはいえ女子アナは、表面上、皆、仲良さげにみえる。これは同僚アナがいつ寿退社や妊娠といった慶事、もしくは男女関係や金銭トラブルといったスキャンダルで、局や番組から去って行くかもしれない。その可能性をいち早くみつける目的が心の奥底にはあるのだ。去っていった彼女らの後釜は私──そこにはそんな思いがある。ライバル心は目に見えない形で燃やす。

2ちゃんねるで誹謗中傷合戦し、一喜一憂

 もっとも同じ所属局、番組の同僚女子アナの動きは、噂よりも先に2ちゃんねるやガールズちゃんねるなどの匿名掲示板のほうが早い。なかには根も葉もない荒唐無稽なものもある。だが、なかにはごく少数の内部の者しか知らないような極秘情報(結婚や体調不良などの話)が詳らかに描かれているのは不思議でならない。

 2ちゃんねるといえばユーザーによるアナ人気ランキングもある。これなどは女子アナ同士では格好の話題となる。特に番組終了や降板が集中する番組改編期にはこうした書き込みに女子アナたちは一喜一憂する。それはそうだろう。女子アナにとって人気の有無は局・フリー問わず死活問題だからだ。フリーほどその傾向は顕著だ。

 本サイトでも触れたことがあるが、在京キー局の著名番組へのレギュラー出演ともなれば、その月収は三ケタ近くいく。加えて著名番組出演による露出増の効果もあり、他番組出演やナレーション、イベント司会など、単発の仕事のオファーにも数多く恵まれるという好循環となるからだ。

 国税庁「民間給与実態統計調査(2013年)」によると、30代前半女性の平均年収は294万円、30代後半女性でも297万円という。これだけをみれば女子アナは厚遇されているかにみえる。だが、いくらベテランといえども一度番組を降りれば、新人同様、いちからオーディション生活が待っている。この間の生活の保障はフリーならもちろんない。著名番組出演時とは打って変わって単発の仕事も激減。厚遇された生活から一転、無職・無収入へ。その落差はあまりにも大きい。

枕営業? 放送局関係者と「男女の関係」になると強い

 アナが業界で生き残るにはアナウンス力だけでなく、ビジュアル面や営業力、そのアナ自身の人柄も左右する。もっとも、これらをもってしてもカバーできないものもある。力のある放送局関係者と「男と女の関係」にあることだ。一種の“枕営業”と言っても差し支えないだろう。

 長く番組に居座っている女子アナのなかにはプロデューサーと恋愛&不倫関係にあるからというのはこの業界ではよく聞く話。長く居座るので後輩が育たない。後輩もその番組を担当したいのにできなくて、ストレスがたまる。権力のある男性のなかには、露骨にえこひいきでキャスティングをする人もいる。いくらアナウンス力を磨いても、男女の仲にある人、ひいきされている人のなかには割り込んで仕事は取れない。

 “男女の仲”で勝ち取った番組出演の機会を奪うため、先ほど説明した他人を追い落とすための“噂”を流すという狂気へと駆り立てる。性質が悪いのは、こうした噂は“男女の仲”に頼らずとも実力で仕事を取っている真面目なアナにも向けられることだ。例えば女子アナが持つ個人ブログへの嫌がらせコメントや2ちゃんねるでファンを装い根も葉もない噂を流すといった類である。

 こうした心無い行為により長らく運営していたブログを閉鎖に追い込まれたり、2ちゃんねる掲示板の放つ棘のある言葉により苦しみ悩んだ女子アナも私は知っている。90年代、私が放送局に入社してすぐの頃、当時40代の先輩女子アナが私や同期のアナに言い放った言葉は今でも忘れられない。

「あなたたちはライバルだから──」

 希望に燃えた新人アナたちに言うかと驚いた。だが今なら分かる。女子アナとはベテラン、新人関係ないプロフェッショナルなのだ。その先輩アナは入社当初の私たちにプロの厳しさの一端を教えたかったのだろう。多くのアナは実力で勝負している。IT化社会が成熟した今、他人の足を引っ張ることでしか存在感を発揮できないアナが生き残れるほど甘くはないのが現実だ。

(取材・文/田中那智美)