時に厳しい声を発しながらも、前向きに選手を奮い立たせた森山監督。“スーパーポジティブ”の真骨頂だ。

写真拡大

 2017年のU-17ワールドカップを目指すU-15日本代表候補が2月20日、最初の候補合宿を大阪府内で実施した。チームを率いるのは、かつて広島ユースを指導して日本のユース年代でひとつのムーブメントを起こした森山佳郎監督だ。
 
「世間では『(日本サッカーの)危機』とか言われているけれど、俺はポジティブに行きたい」
 
 自らを「スーパーポジティブ」と称する(そして教え子の槙野智章のことは「馬鹿ポジティブ」と評する)熱血漢は、「昨年は全年代においてアジアで負けたけれど」なんて意地悪な質問をぶつけてきた記者にそう言い切った。
 
 合宿でのトレーニングでも、その声掛けは確かに「ポジティブ」。試合になれば、「いいぞー!!」「いけぃ!」と背中を押しつつ、「ああん、惜しいっ!」なんて激しいリアクションも見せながら選手を鼓舞する。もちろん、「スライド遅い!」「休むなっ!」と厳しい声も飛ぶが、基本は徹底して前向きだ。
 
 印象的だった場面がふたつある。ひとつは試合中に縦パスのインターセプトを狙ったCBがファウルを犯した時、「狙いは良い! すごく良い!」と大絶賛していたシーン。もうひとつは、試合後にオウンゴールをした別のCBについて、「あそこは逆足でクリアできたほうが良かったな」と言いながらも、「でも、本当にこいつ良いプレーしていたよな!」と、選手みんなに向かって言い切った場面だ。
 
 指示にも、難しい言葉は一切使わない。「易しい言葉を選んでいる」そうだ。相手が中学生ということもあるのだろうが、子どもの心にサッと入っていける術、生来のパーソナリティと積み上げた経験に裏打ちされた指導には、「さすが」と思わせるものがあった。感情的にはポジティブに働きかけながら、内実は「お前のその守備どうなの?」といった厳しいメッセージを織り込むのが抜群に上手いのだ。
 
 元日本代表DFでもある斎藤俊秀コーチが「ゴリさん(森山監督の愛称)にしか出せない独特のモノがある」と語るのも、よく分かる。
 
 選手からも「すごく練習の雰囲気を作ってくれる」(MF菅原由勢=名古屋U15)、「サッカーに対して熱くて、話がすごく分かりやすい」(FW三国ケネディエブス=青森山田中)、「明るくて面白い」(MF喜田陽=C大阪U-15)と総じて好評。“つかみ”には成功したようだ。
 
 最終日の練習で印象に残ったのは、練習の最初からふたつのグループに分けて「競争」をさせていたこと。フィニッシュの練習しかり、3対2の練習しかり、最後の紅白戦しかり。
 
 選手は競争があれば燃えるもので、自然と激しいプレーも増えてくる。疲れがあるなかで行なわれた最後の紅白戦でも、選手たちは攻守ともにアグレッシブなプレーを連発。森山監督が4日間で施したものが、選手から滲み出ていた。
 
 ハイライトは、その紅白戦の終盤にあった。負けているチームが残り時間わずかでCKのチャンスを得ると、「絶対勝つぞ!」とGKまで攻撃参加。気迫のこもったプレーは、結局ライン上でDFにクリアされた。
 
 さらに、CKからのカウンターで追加点を許すという“落ち”までついたのだが、勝って大喜びする選手たちと、悔しがる(でも楽しそうな)選手たちのコントラストは、森山イズムを象徴する光景だった。
 
取材・文・写真:川端暁彦(サッカーライター)