『AV男優の流儀』(鈴木おさむ/扶桑社)

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 男であれば、誰もが一度くらいこんなことを夢想したことがあるだろう。「AV男優になりたい。綺麗な女性とセックスをしてお金がもらえるなんて最高じゃないか!」と。

 しかし、実際のAV男優は、気持ちいいだけのラクな仕事などではない。ユーザーの期待に応えられる作品を産み出すには、ハードなセックスをこなせるだけの体力作りも必要だし、女性を気持ちよくさせるためのテクニックも必要だ。

 さらにいえば、AV男優には通常のプレイだけでなく、かなりの変態プレイが求められることも多い。どんな変態プレイであろうとも、仕事としてしっかり実行できるだけのプロ意識も必要なのだ。つまり、AV男優とは、ただヤリたいだけでできる職業ではないのだ。

 そんなAV男優の"プロフェッショナル"な素顔に迫っているのが、『AV男優の流儀』(鈴木おさむ/扶桑社)だ。森三中・大島の夫で放送作家の鈴木おさむが、森林原人、しみけん、島袋浩、カンパニー松尾、安達かおる、という5人の人気AV男優/監督との対談を通して、知られざるその裏側を明らかにしている。

 たとえば、森林原人の場合。年間500本の作品に出演するトップクラスの人気俳優である森林は、その人気の秘密が「使い勝手のいいチンポ」にあると自己分析している。具体的には「大きさ、柔らかさ、勃ち、発射です。デカチン需要って結構あるんですよ」と、自身のペニスがこれ以上ないほどに"AV向き"だということが、AV男優としての基盤となっているというのだ。

 さらに、森林はデカチンなうえに、仮性包茎で先っぽが柔らかく、「膣に優しい」のだという。女優のほうが、痛くなったら撮影が終わってしまうという状況のなか、森林のペニスは、まさにAVのためにあるようなペニス。この点は努力ではどうにもならないものだが、天から授かったペニスを最大限に活かしているのが森林原人というAV男優なのである。

 肉体的特徴を活かす森林のような男優がいる一方で、自らをブランディングしているのが、イケメン男優として人気のしみけんだ。

 しみけんは「女性の美と汚のギャップに興奮するタイプ」だと自身の性癖を分析しており、それこそ女性のウンコを食べてしまう強者だ。実際デビュー当時からスカトロものの作品にも出演していたが、10年ほど前から卒業している。その理由について、しみけんはこう話している。

「今、しみけんといえば単体のトップ女優としか絡まないとなっていますが、その位置を狙って自分をブランディングしていった結果なんです」

 小向美奈子のデビュー作の相手を務めるなど、多くの女優の"開幕戦"を任されることが多いしみけんは、「ウンコを食うキワモノ男優だと、悲しいかな、そこはいけないんです」とも語っている。つまり、本当は「ウンコを食いたい」という欲望を抱えながらも、それを抑えてイケメンとして綺麗なセックスを見せているのだ。

 ただ欲望のままにヤルのがAV男優ではない。欲望を殺してヤラないのもAV男優なのだ。これもまたプロフェッショナルな姿といえるだろう。

 そんなしみけんは、後進の育成にも積極的だ。女性向けアダルトビデオレーベル「SILK LABO」の専属男優として女性に絶大なる支持を受けている一徹は、しみけんの弟子にあたり、SILK LABOの専属男優となる際も、しみけんが背中を押したという。

 また、イセドン内村という男優もしみけんの弟子筋にあたるが、こちらは「ミュータント計画」を遂行している。

 ヤル気はあるが、なかなか芽が出ないイセドン内村に対し、しみけんは肉体改造を計画する。体力を作るためのフィジカルトレーニングに加え、男性ホルモンを増やすための3種類のサプリメント、射精後の"賢者タイム"を防ぐクスリ、勃起を促す漢方薬を投入。つまりしみけんは"ドーピング"を施すことで、イセドン内村を「ミュータント男優」へと変身させたのだ。身体に対する負担を考えると、到底真似できるものではなく、AV男優としてのプロ意識がエクストリームな形で発揮された例といえるだろう。

 そして、しみけんの兄貴分にあたるのが島袋浩だ。20歳で男優デビューしてから30年近く現役を続けている島袋は「AV男優はプロ野球選手だ」との説を唱えている。

「一つ一つの絡みに集中して挑んで、そこで必ず結果を求められる。失敗は許されないんです。AV男優も野球選手も40歳を境にして体力も精神力も精力も衰えていって、50歳で現役ってなかなかいない」

 あくまでも体力が重要で、若い女優と並んでもおかしくないような肉体を保つのが理想だという島袋。歳を重ねてもなお、現役を続けるには、やはりただならぬ努力が必要なのだ。

 一方、島袋は、街中で素人の女性をナンパしてセックスまで持ち込む「ナンパもの」でも人気だ。『AV男優の流儀』では、その「ナンパもの」の裏側にも迫っている。

 言葉巧みな話術で素人女性を口説き落としていく島袋に、鈴木おさむは「あの女のコって仕込みなんですか?」という素朴な疑問をぶつける。

「全部じゃないですけど、仕込みもあります。そうしないと面白くなんないですよ。もちろんガチもやってましたけど、ガチだとまったく手口が変わってきちゃう」

 と、仕込みがあることをサラッと明かす島袋。ガチの場合は最初からお金の交渉になってしまうことが多く、作品としては生々しくなりがちなのだ。だが、島袋は女の子が仕込みなのかどうかを事前に知りたくないタイプで、「基本はガチで声を掛けてて、女のコと話が詰まってきたところで、助監督を見る」のだという。助監督から「こいつはイケるヤツだ!」という合図があったら仕込み、なかったらガチと判断しているとのことだ。

 また、『私を女優にしてください』シリーズで、AV女優志望の素人女性とハメ撮りを繰り返してきたカンパニー松尾も、同様に仕込みがあることを明かしている。『私を女優にしてください』はAVメーカーに応募してきた素人女性をハメる作品だが、100%が応募ではないというのだ。

「3人の女性を揃える中で、完全に応募に頼ると、大根みたいなのばかりが並んじゃう可能性もあるんで。パッケージの見栄えも考えて、一人ぐらいはその地方のプロダクションに頼んで、AVに出たことのない女性で、出演願望がある人をセレクトしてもらって入れていました」(カンパニー松尾)

 あくまでも女優志望の素人女性という点はガチだが、作品としてのクオリティーを保つためにも、いわゆる"抜ける"女性が仕込まれることもあるのだ。

 男優としてのプロ意識から素人ものの裏側まで、知られざるAVの世界を知ることができる『AV男優の流儀』。これを読めば、軽々しく「AV男優になりたい!」だなんて口にできなくなるはず。日頃、AVを楽しんでいる男性諸君は、何よりもまずAV男優たちに最大限の敬意を払うべきなのだ。
(田中ヒロナ)