先の選挙に与党が大勝したことを受けて、株式市場が活気づいています。しかし、投資家としては、手放しで喜んでもいいのでしょうか? 安倍政権のアキレス腱についても、知っておく必要がありそうです。

アベノミクスに

死角はないのか?

昨年の衆議院選挙で与党が300を超える議席を確保し、12月24日に第3次安倍内閣が発足しました。資本市場では、政策期待から子育て関連企業の株価が急騰するなど、アベノミクスの本命である「成長戦略」への期待が再度高まっています。

ところで、安倍政権に死角はないのでしょうか? あるとすれば財政問題です。米国格付け会社のムーディーズが日本国債の格下げを行なったことで、財政再建への期待は高まっています。しかし、経済再生と財政再建を両立することは至難の業。国債の格付けが、格上げされるには直接的に税収アップに効く戦略が出てくる必要がありそうです。

その中でも注目が集まっているのが「移民政策」。社会保障費を賄う働き手が減少した原因は少子高齢化です。しかし、これは少子化対策では解決できない問題です。理由は、今からたくさんの子供が生まれたところで、成人して納税するまでには20年以上かかります。人口問題研究所の試算では2015年には沖縄を除く46都道府県で人口減少に陥ると試算しています。このままいけば、2030年ごろには、働き手2人が1人の年金生活者の高齢者を支える社会になっています。そうなった場合の日本がとるべき施策は2つしかありません。

ひとつは、年金受給開始時期を遅らせること。欧米諸国では、日本よりはるかに財政状況が健全でも、将来を見越してすでに69歳受給開始を決議している国も存在します。もうひとつは、早急に働き手を増やすための、大胆な移民政策の実行です。

政府では、100年後にも人口1億人を維持するためには年間20万人の移民を受けるべきとの案が出ています。また、いわゆる単純作業に従事する人だけでなく、医師やコンサルタント等の専門職の働き手も受け入れるべきという議論がなされています。

もしもこうした施策が行なわれたら、日本経済にはどんな影響があるのでしょうか?移民受け入れ国であるシンガポールの例を見てみると、確かに経済成長に成功しました。しかし、一つの職をめぐって、自国民と移民とで摩擦が起こり、国民の生活に二極化が生じていると指摘されています。ただ、ピンチはチャンス。移民政策が議論され始めたら、翻訳サービス、グローバル人材支援企業の株価に注目が集まる可能性は大きそうです。

崔 真淑 MASUMI SAI
Good News and Companies代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。


この記事は「ネットマネー2015年3月号」に掲載されたものです。