兵庫県芦屋市の高木憲司さん。CI療法で3年後、ドライバーも打てるようになった

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これまで、脳卒中による後遺症のまひは「発症3〜6カ月以降、改善がほとんど見られない」といわれていた。このため、まひ側でない健康な手指を使って食事やトイレなどができるよう訓練する。だが、脳科学の進歩によって、脳には環境条件によって変化する能力が考えられていた以上にあり、発症6カ月以降もリハビリテーションを続ければまひ側の手指でも実用的になる可能性があると分かってきた。そこで、『ダイヤモンドQ』編集部が2000年以降、いろいろな治療法が取り組まれている。代表的な3種類のリハビリを紹介する。

CI療法

 元来、健康な人でも、体の中でよく使う部位につながる脳の組織細胞が発達していくことはよく知られている。学習を繰り返すと神経と神経をつなぐネットワークが広がったり、神経伝達がより通りやすくなったりするからだ。そこで、CI療法で脳のまひ側の手の領域の神経ネットワークを再構築する。米国の理学療法士が研究開発した。 

 兵庫医科大学の道免和久教授は、CI療法を日本人向けに改良し、外来で治療する。1日5時間10日間、健康な手にはグローブをはめて使えないようにして、まひ側の手で作業療法を繰り返すと、物をつかんで離す動作ができるようになる。

 健康な手を使えないようにすることから、「ストレスがたまる治療」と誤解されやすい。だが、リハビリ専門医と作業療法士がいろいろな訓練メニューや難易度を変えるなど工夫して、患者が飽きないようにする。

 CI療法の良さは、訓練前に目標を決めてもらい、訓練中は「どうして、うまくいかなかったのか」「どうすれば、うまくできるか」などを考えさせるプロセスが組み込まれていること。リハビリに対する自主性が育ち、満足度が高いという。

反復性経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)

 神経の障害度を電流で測る検査機器を用いる治療法。電流によって磁場をつくり、脳に当てることで神経細胞を刺激する。病巣の周囲の組織の神経細胞を活性化させ、ネットワークを再構築させることでまひが改善することがある。欧米では、まひのほか、うつ病、痛み、失語症、統合失調症の治療に使われている。

 東京慈恵会医科大学の安保雅博教授は、患者に2週間の入院中、毎日、磁気で脳を40分間刺激した後、作業療法を2時間、集中的にやってもらうことで、手指のまひを改善させている。食事時、茶碗が持てるようになる、ドアノブを回せるようになるなどの変化があった。6日目から急激に変わるという。

 さらに、重度まひの場合は、ボツリヌス毒素療法で痙縮(筋肉が異常に緊張して硬くなること)を和らげ、手指の作業をしやすくしてから作業療法の訓練を受ける。

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HANDS療法

 まひすると、指を曲げることはできても、伸ばすことが難しくなる。この場合、物をつかむことはできても離すことができないため、生活に必要な動作にはつながらない。

 そこで、まひした手指を伸ばそうとしたときだけ電気で刺激し、筋肉の収縮部をサポートする装置を装着し集中的に手指を動かす訓練をする。さらに、手の関節を固定する装具を着けて、腕全体の筋肉の緊張を弱め、手指を動かしやすくする。

 訓練は生活に必要な動作を1日8時間、3週間続ける。その結果、「つかんで離す」動作ができ、まひした手が部分的に実用的になる。東京湾岸リハビリテーション病院リハビリテーション部の補永薫部長は「指の機能を補助できるので、積極的に訓練できる。日常生活でまひした手も使うようになる」と話す。

なお、『ダイヤモンドQ』(創刊準備3号)では、これら以外にもさまざまなリハビリに関する詳しい記事を掲載している。