「着物」の人気はアラサー、アラフォー女性が中心だったが…

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 着物でデートを楽しんだり和装女子会が開催されたりするなど、「着物女子」が密かなブームとなっている。「着物を身にまとうと、普段と違って凛とした気持ちになれる」「自然と背筋が伸びる」と語るなど、着物が醸し出す「品性」に魅了される女性が増えているのだ。

 和服は七五三や成人式、あるいは卒業式や結婚式など「特別な日」に着るだけの存在だったが、ここ数年には、109系ファッションのテイストで盛った「ギャル浴衣」や、ミニ丈のワンピース風に仕立てた「浴衣ドレス」が流行。このように、アレンジを加えることで「ひと味違った新鮮さ、かっこよさ」が楽しめるのも和服の醍醐味だ。

 一時は「廃れゆく伝統」などと言われもした着物の良さが、静かに見直されているのだ。

新品の振袖も「オーダーレンタル」で

 着物といえば「高価」なイメージがあるが、何十年ともつのも着物の特質。たとえば50万円の着物でも、扱い方によっては半世紀以上着続けられる。そう考えるとコストパフォーマンスに優れており、ましてや今はレンタルも決して珍しくはない。

 創業80年になる静岡県沼津市「大田呉服店」の若女将、大田香奈子さんは、レンタルが選ばれる理由についてこう語る。

「成人式なら、一生に一度のことだから好きな柄を身に着けたいと思いますよね。お金をかけたくないからレンタルを選ぶのではなく、『二十歳の今しか着られない柄を着たいから』『購入してしまうと管理が大変だから』という理由でレンタルを選ばれる方が多いんです」

 気に入った柄の振袖を定価の数割で借りられるなら、レンタル需要も自然発生する。呉服店によっては、新品・新柄を注文者のサイズに誂えて貸し出す「オーダーレンタル」というシステムもあるそうだ。価格は、新品の半額程度。返却後の商品が二度三度とレンタルされれば料金も安くなる。

 着物につきものの「高価なイメージ」を拭い去るこのシステム、当初は反対の声もあったそうだが、大田さんは「昔に比べて着物を着る人が減っていただけに、着物に対するイメージを変えなければ着物離れは加速します」と言う。また、「お母さんが着た振袖を着たい」という人も多いそうだが、「そんな方には小物や帯のコーディネートを今風にアレンジしています」と語る。

 夏には高校生向けの浴衣を格安で販売するなど「着物に慣れ親しんでもらいたい」というコンセプトの同店は、2月15日、地元の高校生からモデルを公募した「高校生による着物ファッションショー」を開催した。年配者中心となりがちな着物業界においては珍しい企画である。

 このファッションショーに参加した高校生からは「成人式にこれを着たい」「鳥肌が立った。着物ってかっちょいー」との声。「うちの子を出したい」という親もいたそうだ。

コスプレ感覚で“非日常”の自分を楽しむ

「着物を着る機会がなくて着物文化が先細りするなら、着物を着る機会を作ってしまえばいいんです」と語る同店は、「浴衣を着て懐石料理を食べる会」「着物でイタリアンを食べる会」「着物で新歌舞伎座に行こう」など様々な企画を設けている。

 参加した女子からは、

「着物を着ることでの“非日常感覚”がいい」(23歳/OL)

「非現実的な一日を過ごして、生活にメリハリが出た気がする」(29歳/教師)

 など、嬉しい感想が挙がっているという。

 着物は日本人の民族衣装とも言えるものだが、日本人は世界でもっとも民族衣装を着ない人種だ。なぜなら他国の民族衣装と異なり「自分一人で着られない」「着ている間は苦しい」などのデメリットもあるからだ。

「そこは考え方次第です。キレイになるにはお金と時間と努力が欠かせない、と若い子たちに話しています」(大田呉服店・大田さん)

 和服文化を継承させ、身近に感じさせる企業努力。こうした姿勢は、他のビジネスにも必ず応用できるはずだ。昨今の「着物女子」ブームの裏には、こうした企業の個々の取り組みと、日本の伝統を守り伝えたいという真摯な思いがあるのかもしれない。

(取材・文/小川隆行)