こんな例がある。Sさん(男性・71)は、内科で高血圧治療薬、血液をサラサラにする薬、痛風薬、利尿薬。さらには消化器内科で複数の胃腸薬、便秘薬。整形外科では足腰のしびれや痛みのために鎮痛薬、ビタミン剤、漢方薬が処方され、合せて14種類23錠の薬を服用していた。
 そんなSさんが訪れた久富総合医療クリニックの久富茂樹院長は、Sさんの話を聞き、薬の種類を一つずつチェックしたという。
 まず、3種類服用していた高血圧治療薬は、Sさんの血圧の状態や年齢から考えると、1〜2種類に減らしてもいいのではないかと考えた。

 痛風は本来、発作を起こしてから服用するものだが、Sさんは尿酸値が高いものの発作はまだ起こしていない。胃薬にしても、10年前に胃潰瘍の手術を受けて以来、定期的に検査に通う消化器内科で継続して処方されていたが、胃の不調は日頃とくに感じていないという。しかも内科、整形外科でも胃腸薬が処方されていた。
 「Sさんの話と薬を照らし合わせ、“絶対に飲まなくてはならない薬”と“必要な時に飲んだ方がいい薬”とに分けたのです。胃腸薬はまさにそうでしたが、同じような成分が重なっている薬が結構ありました。それらをSさんに説明し、これらを減らして様子を見ましょうと話したのです」(久富院長)
 薬の量にストレスを感じ、飲み忘れも多かったというSさんは、同院長の指導のもと、現在服用している薬は7種類16錠と半減させたが、症状が悪くなることもないという。

 Sさんのような高齢者はいくつもの病気を抱えている。掛かっている診療科も多いため、処方される薬の成分が重なっていることが少なくない。おまけに医者は「検査をして数値が高めですから念のために薬を」となりがちだ。そんな中、薬の知識を持たない患者が「医師から出された薬は飲まなければ」と、律儀に全部の薬を飲み続ければ“過剰投与”になり、命を脅かすケースも出てくるのだ。
 「“無駄な薬”は、おそらくどの家庭にも相当数存在しているはずです。無駄なだけならいいが、飲み合わせが悪ければ薬害のリスクさえある。健康を求めて薬を飲んで、それで体を悪くしては本末転倒です」(専門家)

 薬をたくさん出してくれる医者がありがたがれるのは昔のこと。現代は無駄のない医療を実践してこそ健康人間の形成に繋がる。かかりつけの医師に確認をするなどして、改めて薬の量を見直してはどうだろうか。