写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●レース競技も開催され、盛り上がった「第2回 科学の甲子園ジュニア」科学技術振興機構(JST)は12月5日(金)〜7日(日)、都内で「第2回 科学の甲子園ジュニア」の全国大会を開催した。理科や数学など、理系分野の知識や応用力で挑む知的な競技会で、今年が2回目の開催。前回を上回る20,000名以上の中学生がエントリーし、各都道府県で選抜された47チーム、合計282名が全国大会に出場した。

○初めてレース競技も開催

「科学の甲子園ジュニア」は、高校生向けである「科学の甲子園」の中学生版として、昨年度(2013年度)初めて開催された競技会だ。団体戦になっており、1チームは6人で構成。代表の選考方法は各都道府県に一任されていて、メンバー全員が同じ中学校のチームもあれば、別々の学校の混成チームもある。

競技は、筆記競技が1種類(300点)、実技競技が2種類(各300点)あって、その合計点で順位が決まる。この配点は前回と同じだが、大きな変更点は、今回、初めて実技で工作競技が導入されたことだ。

高校生版の科学の甲子園には、「クリップモーターカーF1」(第1〜2回大会)、「Mgホバーレース」(第3回大会)のような工作競技がある。順位をレースで決めるため、会場が最も盛り上がる看板イベントになっていたのだが、ジュニアの第1回大会にはこうしたレース競技が無く、どちらかといえばちょっと地味目な印象だった。

今回、ジュニアで実施されたのは、自作のヘリウム飛行船を操縦して、的に当てながらゴールを目指すという新競技。前述の高校生版の工作競技では、予選で速い機体が大体決勝でも勝っていたが、ジュニアの場合、「人間の操縦」という不確実な要素が加わるため、決勝では大番狂わせも。生徒は大変だろうが、会場は大いに盛り上がった。

筆記競技は非公開で進められたため、本レポートでは、2つの実技競技の様子を紹介しよう。

●濃度が分からないアミラーゼ酵素水溶液の濃度比率をどう求めるのか?○実技競技1「酵素の濃度を決める」

1つめの実技競技は化学実験だ。この実験では、アミラーゼ酵素水溶液、デンプン溶液、ヨウ素溶液などを使用する。濃度が分からないアミラーゼ酵素水溶液が3本用意されているので、マイクロピペットという特殊な器具も使いながら、この濃度の比率を求めるのが課題だ。

デンプン溶液にヨウ素を入れると紫色に変色する。これがヨウ素デンプン反応だ。小学生のときに、ジャガイモなどで実験したことを覚えているだろうか。一方、アミラーゼ酵素は、デンプンを分解して糖に変える。この酵素は人間の唾液などに含まれているものだ。

デンプン溶液とアミラーゼ酵素水溶液を混ぜた場合、酵素の濃度が高ければ、デンプンをたくさん分解するため、ヨウ素デンプン反応の色は薄くなる。色の濃淡から、濃度の違いが分かるわけだ。濃度の比率は、2:1、4:1、6:1、8:1、10:1のいずれかと決まっているので、濃い方のアミラーゼ酵素水溶液を2倍、4倍、6倍、8倍、10倍に希釈したものと比較すれば、そのどれかと紫色が同じになる。そこから、濃度の比率を求めることができる。

この競技で難しいのは、自分たちで実験の計画を立て、結果を考察するところまで行うということだ。中学校の授業では普通、そこまではやらないそうなので、ちょっと苦労したかもしれない。濃度の比率を出すところまでは多くのチームができていたのだが、時間が足らず考察までやれなかったチームも多かったようだ。

●###実技競技2「ヘリウム飛行船」2つめの実技競技は、前述のとおり工作競技だ。まずは、用意された材料と工具のみを使い、制限時間(30分)以内にヘリウム飛行船を作る。飛行船の形は自由だが、速さ、操作性、作りやすさなど、様々な要素を考える必要がある。同じ材料で作った飛行船なのに、チームごとに個性が出ていて面白い。

飛行船には、プロペラモーターを2つ搭載することができる。それぞれに手回し発電機が付いており、これで飛行船を動かす。エンジンでもあり、ハンドルでもあるわけだ。

コースの長さは15m。5m間隔に3つのターゲットが浮かんでいるので、1つ1つ飛行船でタッチしていき、最後のターゲットに当てることができたらゴールだ。ターゲットの高さは、スタート側から、120cm、80cm、200cm。最後のターゲットで急上昇する必要があり、ここで手間取ってしまうチームが多かった。

ところで、この競技のポイントは、プロペラモーターが2つしか無いことだ。もし3つあれば、前後、左右、上下と、3次元的に自由に移動できるが、2つなので、どうしても平面的な動きになってしまう。これを解決するには、例えば、前進しながら上昇するように作っておいて、下降したいときは向きを変えて、バックで進むような工夫が必要になる。

予選レースで最速を記録したのは茨城県チーム。全47チーム中、制限時間(2分)以内にゴールできたのはわずか9チームという難易度の高さだったが、同チームは唯一、1分を切ったタイムで、2位以下を30秒近くも引き離した。

だが決勝レースでは、その茨城県チームにまさかのアクシデント。機体トラブルで出遅れてしまい、予選2位の山口県チームが1位……になるかと思われたのだが、最後のターゲットにギリギリでタッチできず、モタついた間に予選6位の岩手県チームがゴール、大逆転で1位となった。

○激戦を制し優勝したのは…

総合成績は以下の通り。全競技で安定して上位の成績を収めた茨城県チームが1位で、以下、福岡県チームと愛知県チームが続いた。

総合成績・1位 茨城県チーム(茨城県立並木中等教育学校)・2位 福岡県チーム(久留米大学附設中学校、福岡教育大学附属福岡中学校)・3位 愛知県チーム(海陽中等教育学校)

ロボットの街、つくばの中学生らしく、茨城県チーム・キャプテンの菱田草平君は「小さい頃からロボットが好き。将来の夢はロボットの技術開発」だという。優勝という結果は「想像もしていなかった」そうだが、「本当に嬉しい」と喜びを爆発させた。

記者会見では、主催者を代表し、JSTの中村道治理事長が挨拶。「ノーベル物理学賞の受賞、小惑星探査機はやぶさ2の打ち上げ成功など、日本の科学力は世界的にも高いレベルにある。このような国づくりをもっと強力に進めないといけない」とし、そのために「子供の頃から理科・数学に関心を持ち、大きな夢に向かってのびのびと育つような環境を作るのが我々のつとめ」とコメントした。

ところで、ジュニアの優勝チームは、高校生の科学の甲子園に招待されるのだが(工作競技に出場)、今年度の開催地はなんと地元・つくば市(昨年度までは兵庫県西宮市だった)。会場は自転車でも行けるような距離なわけで、旅行にならないのは気の毒としか言いようがないが、ともかく、地元の利を活かして頑張ってもらいたいところだ。

(大塚実)