アマチュア時代に北海道女子アマ5連覇を達成した藤田光里(20歳)は、2013年夏のプロテストで一発合格を決めると、その年のファイナルQT(※)で1位通過。直後のLPGA新人戦加賀電子カップ(12月12日〜13日/千葉県)も優勝し、昨季(2014年)ツアーでは「大物ルーキー」と称されて、若手選手の中ではひと際高い注目を浴びていた。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 実際、藤田は実質的なプロ初年度から素晴らしい戦いを披露した。期待されたツアー優勝こそ果たせなかったものの、何度となく上位争いに加わって、賞金ランキング38位と、今季(2015年)のシード権を獲得。ルーキーイヤーとしては、上々の結果を残した。が、藤田自身は、その成績に納得していなかった。昨季の戦いをこう振り返る。

「周囲の期待が大きくて、そのプレッシャーもあってか、(開幕から)自分のゴルフができない状態が続いていました。練習も集中してできなくて、本来のプレイができるまで、かなりの時間を要しました。さらに、ツアーにも慣れて、自分のリズムがつかめ始めた頃、急にショットが乱れてしまって......。8月のmeijiカップ(8月8日〜10日/北海道)以降です。その際は、スタンスの取り方やクラブの握り方まで悩むほどでした。そこからは訳がわからなくなって、後半戦は完全に調子が狂ってしまいましたね」

 藤田の言うとおり、meijiカップのあとは、NEC軽井沢72(8月15日〜17日/長野県)から自身の最終戦となった大王製紙エリエールレディス(11月20日〜23日/香川県)まで、13戦こなして8試合で予選落ちを喫した。不調の原因について藤田は、「特に見当たらないのですが......」という。それでも、立て直しが図れなかった要因については、こう答えた。

「調子が悪くなってからは、予選通過ラインを確認しながらのゴルフをしていました。でも、そのラインにも届かない自分に、イライラが募ってしまったのだと思います。歯車が狂ってしまったというか、いろいろなことが『噛み合わなかったな』という感じです」

 ゴルフを始めてから「初めて経験する"挫折"だった」と藤田は語る。周囲からは「誰もが一度は通る道だから」と諭されたそうだが、まさか自分がこんなに早く"壁"にぶち当たるとは、思ってもいなかったという。

「ゴルフで悩んだことは、これまでもたくさんありました。でも、こんなに苦しんだこと、これほどの挫折感を味わったことは、今までに一度もなかったんです。だから、周りの人たちがいろいろと励ましてくれても、素直に受け入れられる状況になかったかもしれません」

 新人選手としては異例の、多くのスポンサー契約を結んでいた藤田。目標にしていた勝利を得られなかったことも、反省材料となった。スタジオアリス女子オープン(4月11日〜13日/兵庫県)をはじめ、ワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップ(5月8日〜11日/茨城県)、ニチレイレディス(6月20日〜22日/千葉県)では最終日最終組でラウンドし、優勝を狙える位置にいたが、それぞれ5位タイ、16位タイ、2位タイという結果に終わった。勝てなかった理由を、藤田は次のように分析している。

「技術的な面で足りない部分があることもわかっていますが、優勝争いをしているときの、落ち着きが足りない。勝負どころにおける、気持ちの強さも欠けていたと思います。だから、(自分が)勝つために必要なのは、もう少し強気になること、『勝つ』という強い気持ちを持つことですね。特に昨季は、負けたあとに、悔しいという気持ちがあまり沸いてこなかったんです。

 例えば、サロンパスカップで成田美寿々さん(22歳)が、私の目の前で優勝したときがそうでした。そのときの成田さんのプレイスタイルや堂々とした態度、時折見せる焦りや憤りなど、成田さんのさまざまな一面が見られて、その記憶が鮮明に残っているんですが、私はその姿に圧倒されるだけでした。勝負に対する意識というか、プロとして戦う意識が(自分には)まだ足りないな、と痛感させられました。こうした(メンタル面の)強さを身につけるには、もう少し時間がかかるかもしれませんが、勝負事においてはもっと気持ちを高めて、熱くなる必要があるな、と思っています」

 先輩プレイヤーたちとの差を感じて、勝てなかったことに対しては感情が高ぶることが少なかったという藤田だが、同期の活躍はどんなふうに見ていたのだろうか。とりわけ、普段から仲がいいという鈴木愛(20歳)が日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(9月11日〜14日/兵庫県)で優勝。プロ初勝利を、同期に先を越されたことについては、どう思っているのか。

「(鈴木)愛とは、よく比較されるんですよ。初優勝を先にされて悔しかったか? という質問もよくされます。そう聞かれれば、もちろん『悔しい気持ちはあります』と答えます。でも、私はもともと、愛のほうがずっと上のプレイヤーだと思っていて、追いかける立場にあるんです。アマチュアの頃から、私が向かっていく立場でしたから。そういう意味では、愛が優勝したときは、やっぱり愛の実力は(アマチュアの頃から)変わっていないんだな、と思いました。そんな愛に、私も追いつけるよう、がんばるだけです」

 鈴木とはアマチュア時代から切磋琢磨してきた仲間であり、ライバルでもある。それぞれの活躍は、鈴木にとっても、藤田にとっても大きな原動力になっていることは間違いない。ふたりが優勝争いを演じることになれば、もしかすると藤田に足りなかった"勝負魂"も芽生えるのかもしれない。

 さて、2015年ツアーでは、さらなる飛躍が期待される藤田。年末年始にかけてトレーニングを重ね、1月末には第13回グアム知事杯(1月29日〜30日/グアム)に出場した。結果は37位タイと振るわなかったが、藤田は新シーズンに向けて気持ちを一心していた。成績の善し悪しで気持ちがブレることなく、"挫折"を経てひと回り成長した姿がそこにはあった。

「シーズンを終えたあと、1週間ほどクラブを握らずに過ごしていました。嫌な形で終えてしまったシーズンを、一度リセットして悪い流れを断ち切りたいと思ったからです。クラブを握らない日を1週間も作るなんて、ゴルフ人生において初めてのことでしたが、その結果、新たな気持ちでゴルフに向き合えるようになりました。そうやって気持ちを切り替えて、1月からのグアム合宿にも臨めたので、いいトレーニングができました。開幕戦(ダイキンオーキッドレディス。3月6日〜8日/沖縄県)は、いい精神状態で迎えられそうです」

 このオフの間は、ショートゲームを課題に取り組んでいる。

「特にパッティングは、自信を持って打てるようになりたい。勝負のポイントになるのは"ここぞ"というときの、3〜4mくらいのパットです。練習ラウンドでも、グリーンの感覚をつかみながら、その点を重点的にこなしています」

 日々、充実したトレーニングを消化しているのだろう。新シーズンに向けて話す藤田の表情は明るかった。そして最後に、笑顔を浮かべながら今季の目標を語ってくれた。

「"2年目のジンクス"って、よく言われますよね。ゴルフ界でも、1年目に結果を残した選手が、翌年は厳しい戦いを強いられて、シード権を獲れないこともあるとか......。とにかく、難しいシーズンになる、という話をよく聞きます。だからといって、それを恐れいても仕方がない。中途半端な目標を立てるのもよくないと思っています。ジンクスに負けないように、まずは初優勝を目指してがんばりたい。そして、賞金ランキングも昨季を上回れるようにしたい」

 なんだかんだ言っても、昨季は周囲の期待に押し潰されることなく、新人ながら見事にシード権を獲得した藤田。その経験が大きな糧となっていることは間違いない。勝利に対して貪欲にさえなれれば、自ずと結果はついてくるはずだ。

text by Kim Myung-Wook