庶民の味覚「アジフライ」も食べられなくなるのか?

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ひものやフライなどの「庶民の味覚」として親しまれてきた、アジの価格が高騰している。

アジだけではない。最近はイワシなど大衆魚の水揚げ量が安定せず、価格は高止まりの傾向にある。

アジ1キログラムあたり1600円、過去5年間で最高値の水準

アジやイワシなど大衆魚の卸値が高騰している。原因は、主な産地である九州が天候不順などの影響もあって不漁なこと、また全国的にもシケ続きで水揚げ量が大きく減り、市場の入荷が激減したためだ。アジの水揚げ量が減ったのは、2015年2月7日までの1週間、九州での巻き網漁が月夜休漁だったこともある。

東京・築地市場の、ある卸売会社は「シケがあると2、3日は漁に出られません。今年はシケの日が多いので(水揚げ量が)安定しません」と話している。

なかでも、価格の急上昇が目立つのはアジ。築地市場によると、2月14日のアジの卸売数量は2万3074キログラムと少なく、価格は長崎産(中型=1匹170グラム程度)が1キログラムあたり1296円〜1620円にのぼり、過去5年間で最高値の水準を付けている。

アジの卸値は 通常1キログラムあたり500〜600円だから、2倍超も値上がりしたことになる。

また同日のイワシは、卸売数量が1万4567キログラムで、価格は432円〜1080円だった。前年と比べると、数量がやや減ったこともあって価格は28.6%上昇。2年前と比べると約2倍(158円〜525円)にハネ上がっている。

ただ、サバは卸売数量が2014年の不漁(約3万キログラム)から約6万キログラムまで回復したことから、価格は大幅に値下がり。173円〜648円と安い。

前出の卸売会社は、「この1週間はアジがふだんと比べて1.5倍ほど値上がりしています。サバはだいぶ落ち着いてきましたが、目立ったところではイワシも高い。アジ(の値上がり)はずば抜けていますね」と話すが、「水揚げ量が増えてくれば落ち着くと思います」とみている。

とはいえ、アジやイワシ、サバの卸売価格が上昇しているのは間違いないようで、「前年と比べると高値の日が多いです」という。

暦年ベースで平均価格をみると、2014年にアジは1キログラムあたり588円だったが、前年比で13.7%上昇していた。イワシの平均価格は402円で、13年と比べて17.9%の上昇。足もとで値下がりしているサバも、14年の平均価格は387円で12.2%値上がりしていた。

海水温の上昇で、近海ものの水揚げ量が減った...

アジやイワシ、サバの水揚げ量が減少傾向にある原因について、前出の卸売会社は、「一つは地球温暖化の影響で、海水温の上昇があります」と指摘する。これまで日本沿岸近くを流れていた黒潮が沿岸から離れて流れるようになったため、黒潮に乗って回遊していた魚が沖へ沖へと流れて回遊するようになった。

「少し前まで九州〜静岡、房総沖あたりで獲れていた魚が、最近は青森あたりで獲れるようになったのと同じ現象ですね」と説明。たとえば現在、アジは長崎沖や鳥取・境港沖で獲れるものが主力だが、「最近は九州の水揚げ量は減っています」と話している。

一方、漁師は最近でこそ原油価格が急落したことで、ようやく利益が見込めるようになってきたものの、一時はコスト削減で出漁を制限してきた。それにより水揚げ量が減ったこともある。

ある市場関係者は「沖で漁をするには、船にそれなりの装備が必要になります」と、遠方へ漁に出るのは、コストもかかり、そんなに簡単な話ではないようなのだ。

また、乱獲による資源の減少もある。中国などの周辺国では稚魚などを見境なく、大量に水揚げしてしまうケースが少なからずあるという。

さらには、加工業者がアジやイワシなどを「買い占めている」との見方もある。全体的に水揚げ量が減るなかで、加工業者が一定量を確保しようと動いているというのだ。加工業者も量を確保しなければ商売にならないことはわかるが、加工業者が確保する量が増えれば、鮮魚店に回る分は減る。その分、価格も上がるということらしい。