曽野氏は「『チャイナ・タウン』や『リトル・東京』の存在はいいものでしょう」とコメント(画像はイメージ)

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産経新聞に掲載されたコラムが「アパルトヘイトを許容している」と抗議を受けていることについて、作家の曽野綾子氏が2015年2月17日付の朝日新聞上で「反論」した。

「ブログやツイッターなどと関係のない世界で生きて来て、今回、まちがった情報に基づいて興奮している人々を知りました」と議論の過熱ぶりに冷ややかな見方を示しているが、結果的にさらなる反発を招くこととなってしまったようだ。

「生活習慣の違う人間が一緒に住むことは難しい、という個人の経験」

曽野氏は「労働力不足と移民」をテーマにした産経新聞11日付朝刊のコラムで、労働移民を条件付きで受け入れることを提案する一方、「外国人を理解するために、居住を共にするということは至難の業」だと指摘した。そのうえで、人種差別撤廃後の南アフリカで、黒人の入居によりトラブルが起きたマンションの例を挙げながら「居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい」との考えを述べた。

コラムの内容は、海外メディアも相次ぎ報じるなど物議をかもした。南アフリカ駐日大使は「アパルトヘイトを許容し、美化した」などとして産経に13日付で抗議文を送付。NPO法人「アフリカ日本協議会」も同日に抗議し、「移民労働者の導入にからめて『居住区を分ける』ことを提案する曽野氏の主張は、アパルトヘイトの労働力管理システムと同じ」などと非難した。

これを受け曽野氏は、14日付の産経新聞上で「私は文章の中でアパルトヘイト政策を日本で行うよう提唱してなどいません」と反論。「生活習慣の違う人間が一緒に住むことは難しい、という個人の経験を書いているだけです」と釈明した。

曽野氏の「反論」はさらに続いた。17日付の朝日新聞上では「私は、アパルトヘイトを称揚したことなどありませんが、『チャイナ・タウン』や『リトル・東京』の存在はいいものでしょう」との見解を示した。

だがコラムで言及していた居住区と、移民が自ら選んで住んでいる「外国人街」を同様に扱うことにはネット上でも疑問の声が少なくない。ジャーナリストの佐々木俊尚氏もツイッターで「同じ共同体の人が好んで同地域に暮らすのと、居住を強制的に分離されるのはまったく意味が違うと思う」と指摘する。

「安倍総理のアドヴァイザーであったことなど一度もない」

また、発言を取り上げた海外メディアは「首相の側近」(英紙タイムズ)、「首相の元アドバイザー」(ロイター通信)などと伝えていたが、曽野氏は「私が安倍総理のアドヴァイザーであったことなど一度もありません」とこれを否定する。そして、

「そのような記事を配信した新聞は、日本のであろうと、外国のであろうと、その根拠を示す責任があります。もし示せない時には記事の訂正をされるのがマスコミの良心というものでしょう」と糾弾した。

しかし朝日記事のプロフィール欄に書かれているように、曽野氏は13年1月〜10月にかけて安倍首相直属の機関「教育再生実行会議」のメンバーだった。委員辞任時の報道によれば、曽野氏はいじめ対策や英語教育などの提言の取りまとめに参加していた。その意味では「元アドバイザー」と言えなくもない。

結果的に反論コメントには「火に油を注ぐ曽野綾子さん」「無恥だという指摘に無知だという回答」「火消しのつもりなのだろうが、拡大延焼している」などといった声が相次いだ。