女子フィギュアスケートに世代交代の波が押し寄せている。四大陸選手権ソウル大会の表彰台を独占したのは高校生選手たちだった。

 初優勝したポリーナ・エドムンズ(米国)と銀メダルの宮原知子はともに16歳、銅メダルの本郷理華は18歳だ。表彰台には立てなかったが、6位と健闘した永井優香も16歳。この4人にはすでに完成された確かな技術が備わっており、難度の高いジャンプ構成をこなすができる。それでもまだまだ伸びしろがあることが共通点と言えるだろう。

 昨年末の全日本選手権を制して新女王になった宮原の強みは、並外れたスタミナにある。今季はフリープログラムの後半(基礎点の1.1倍になる)に2回転アクセル+3回転トーループの連続ジャンプを2本組み込んだ。他の選手ならまずできないジャンプ構成と言える。この連続ジャンプだけで8.14点を稼ぐが、これにGOE(出来栄え点)加点がつけば、トリプルアクセル並の高得点を出せ、貴重な得点源になる。

 今回の四大陸選手権でもこの大技を2本ともしっかりと成功させた。しかし得意の3回転ルッツで転倒したほか、序盤の3回転フリップではステップアウトするなど、珍しくジャンプのミスが出てしまう。この失敗が響いて、ショートプログラム(SP)首位から順位を下げて総合2位に終わった。全日本女王として世界にアピールする絶好のチャンスでもあっただけに、エドムンズとわずか2.43点の差で初タイトルを逃してしまったことを悔やんだ。

「プレッシャーというよりも、ノーミスの演技をしようと意識しすぎて、すごく緊張してしまった。今大会は調子も悪くなく、リンクも滑りやすくて合っていた。フリーで完璧にできたら優勝できたと思うので、いまはすごく悔しいです。昨年はうれしい2位でしたが、今年は悔しい2位になりました」

 宮原にはハードな練習をいとわない芯の強さがある一方、シャイな性格が演技に出てしまい、こじんまりとまとまって迫力のなさにつながるようなところがある。表現力はあるだけに、そんな殻を打ち破ればさらに大きく成長できるということは、宮原本人も重々承知している。

「課題の回転不足を取られないように意識しながら大きな高いジャンプを練習では跳ぶようにしていますが、試合になるとどうしてもジャンプが低くなってしまう。今回も失敗したくないという気持ちが出てしまった。次(3月)の初めての世界選手権では、スピードが足りなくて思い切れずに小さくまとめてしまうところを直して、自分にしっかり集中してSPとフリーの両方とも頑張りたい」

 強豪ロシア勢が出場する今季最後の大舞台で、四大陸選手権で味わった悔しさを晴らすつもりだ。

 一方、今季シニアデビューの本郷は、自分の持ち味である伸び伸びとしたダイナミックな演技をSPもフリーも披露して、総合3位という上出来の結果を残した。グランプリ(GP)シリーズ、GPファイナル、そして四大陸選手権と、国際舞台の経験を積み重ねるごとに、いろいろなものをどん欲に吸収していることが分かる。とにかく物怖じせず、公式練習や試合を含め、大会を丸ごと楽しんでいる様子だった。

「今大会は大きなミスなく滑ることができてよかった。自分が四大陸のメダルを取れるとは思っていなかったのでうれしいです。SPで3位に入って小さいメダルをもらったときに、表彰台に乗れたらいいなと思いました。昨季よりも自分の滑りはよくなったけれど、もっときれいにもっとスピードを出して滑りたいです」

 ジャンプ構成もバラエティに富んでおり、飽きさせなかった。手足の長さを生かした振り付けでアピール力は十分にある。ステップはバンクーバー、ソチ両五輪代表の鈴木明子からアドバイスをもらっているという。まだ改善の余地があるプログラムを、今季最後の試合となる初出場の世界選手権までに、どこまで完成度を高めることができるか。

 シーズン終盤に来て、SPは60点以上を出せるようになってきた。あとはフリーで120点以上を出して、目標に掲げる合計180点を超すだけだが、その目標達成は足踏み状態にある。四大陸選手権でも合計177.44点と2.56点足りなかった。この点数は、ジャンプで細かいミスをせずにGOEでプラスの評価を得られればすぐに埋められるもの。今季最後の機会となる大舞台で目標達成を果たしたいところだ。

「フリーは回転不足などがあって点数が出ていないので、そこをしっかりと練習で修正していきたい。合計180点の目標は諦めずに狙っていきます。長久保(裕)先生が目標を10位以内に設定しているようですが、私は初めての世界選手権なので思い切って納得いく演技をできるように頑張って、先生の期待に応えるようにしたいです」

 はっきりとは順位を口にしなかったが、視線の先は10位よりも上にあるように見えた。

 3月の世界選手権は、次回2016年の世界選手権の国別出場枠が懸かってくるだけに重要な意味を持つ。浅田真央や鈴木ら先輩が勝ち取った代表枠で3人が出場する日本女子は、最低でも上位2人の合計が13位以内(例えば6位と7位)に入らなければ、次回は3人枠を確保することができない。

 ロシア勢の強さが際だっている今季、世界選手権でも表彰台を独占する可能性は高い。日本勢は誰か一人でも上位争いに食い込んでくれば、可能性は広がるはずだ。いずれにしても厳しい戦いになるのは間違いないだろう。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha