緊急特集「よみがえれ! 日本サッカー」(7)
7人の識者が推奨する「日本代表の新戦力」

 GK川島永嗣、DF内田篤人、吉田麻也、今野泰幸、長友佑都、MF長谷部誠、遠藤保仁、岡崎慎司、本田圭佑、香川真司、FW前田遼一。

 上記は、2011年アジアカップにおける日本代表の主な先発メンバーだ。それから4年後の今年、2015年アジアカップのスタメンは、4戦すべて同じだった。そのメンバーは、以下のとおり。

 GK川島永嗣、DF酒井高徳、吉田麻也、森重真人、長友佑都、MF長谷部誠、遠藤保仁、香川真司、FW本田圭佑、岡崎慎司、乾貴士。

 この4年間、日本代表の顔ぶれがほぼ代わっていないことは、一目瞭然。負傷で招集を見送られなければ、おそらく今回も右サイドバックは、酒井ではなく、内田が務めていただろう。そうなると、今野から森重、前田から乾と、たったふたりしか代わっていないことになる。4年もの時が経過していながら、日本代表メンバーがここまで代わらなかったことは、過去にも例がない。

 今回の緊急特集で、最初に7人の識者に聞いた「日本代表の問題」というテーマにおいても(2月6日配信「識者7人が警告『日本サッカー、今そこにある危機』」)、「メンバーの固定化」は問題視されていた。なおかつ、森重と乾が4年前とは違うメンバーと言っても、森重は27歳、乾は26歳。今後の日本代表を見据えた場合、若い選手たちの突き上げがなかったことは、今の日本代表が抱える"最大の問題"と指摘する声も多かった。

 チームが強くなるためには、やはり活性化が必要だ。それも、若くて活きのいい"新しい血"を入れることが大いに望まれる。そこで再び、7人の識者に停滞する日本代表に刺激を与えるような「新戦力」がいないか、話を聞いた。

 多くの識者が名前を挙げたのは、ガンバ大阪のFW宇佐美貴史(22歳)だった。アジアカップでは「決定力不足」がクローズアップされたこともあって、昨季三冠(Jリーグ、ナビスコカップ、天皇杯)を達成したガンバの得点源に対する期待は大きかった。

■望月重良氏(SC相模原代表/元名古屋グランパスなど)
「代表で宇佐美がどんなプレイをするのか、一サッカー人として、やはり見てみたい。昨季、ガンバでも結果を残して、飛躍的な活躍を見せてくれたわけだからね。正直、これまで代表に呼ばれなかった理由がよくわからない。もし守備面において課題があるにしても、一度(代表に)呼んで、そこで足りない部分を指導してあげればいいこと。それでもダメだったら、外せばいいだけ。とにかく、ポテンシャルの高さは証明されているわけだから、まずは招集してほしい。自信に満ちあふれている選手で、何か大きなモノを手にしてやろうという、ギラギラしたものも感じる。そういう選手が今の代表には必要。同じような雰囲気を持っているFW武藤嘉紀(FC東京。22歳)も含めて、彼らにはどんどんチャンスを与えてほしいと思う」

■鈴木良平氏(解説者/元ビーレフェルトコーチ、日本女子代表監督など)
「宇佐美は(代表で)試す価値がある選手。優れた感性を秘め、ゴール前で瞬時のひらめきによって勝負ができる。実は、こういう感性でプレイする選手というのは、大化けする可能性がある。例えば、バイエルン・ミュンヘンのリベリー(フランス代表)やロッベン(オランダ代表)がそう。宇佐美は彼らに似たタイプで、そういう選手を守備ができないからとか、戦術が理解できないからといった理由で外していてはいけない。チームは"いい子"ばかり集まっていても強くならないし、宇佐美を入れることが今の代表にとって、いい起爆剤になるのではないか」

■平野孝氏(解説者/元日本代表、名古屋グランパスなど)
「いずれ代表入りすると思っていますが、今季はさらなる成長が見込める宇佐美は(代表で)見てみたい選手のひとりですね。最大のよさは、対峙する敵にとっては、どんなプレイをするのか"読めない"選手であること。要するに、ひとつひとつのプレイモーションがないというか、すごく小さいから、どのタイミングでパスを出すのか、はたまたシュートを打ってくるのか、相手DFにはわからない。ゆえに、昨季もそうでしたけど、宇佐美のゴールシーンを見ると、GKが反応できずにシュートを見送っていることが多々ある。敵に読まれないプレイができるというのは、本当にすごいことだし、そういう選手がいることは代表の強みになると思う」

 今や世界の強豪チームには、突破力があって、さらに得点力がある選手が必ずいる。宇佐美が期待されるのはそこ。そして、彼以外に名前が挙がった選手も同様のタイプの選手たちだった。

■鈴木正治氏(解説者/元横浜マリノス、名古屋グランパスなど)
「昨年のブラジルW杯を見ても、個で突破できる選手がいるチームが結果を出していた。アジアカップの準々決勝を振り返っても、厳しい局面を一瞬にして打開し、狭いスペースの中でもシュートゾーンまで入ってける力を持った選手がいれば、引いたUAE相手にも勝っていたと思う。そういう意味でも、今の日本代表に必要なのは、得点力のあるドリブラー。お薦めしたいのは、横浜F・マリノスのMF齋藤学(24歳)とFW仲川輝人(22歳)。

 齋藤は、個人はもちろんのこと、味方をうまく使っての打開力がある。ブラジルW杯でも出場機会を得られれば、存分に活躍できていたはず。シュートセンスもあり、ぜひとも代表復帰を果たしてもらいたい。片や、今季F・マリノスに加入した仲川は、関東大学リーグで得点王に輝いた逸材。身長161cmと小柄ながら、鋭いドリブルとキレのあるターンを駆使して、スペースのないところでも瞬時に決定機を演出できる。ここ数年、F・マリノスのキャンプにも参加していて、そのプレイぶりは誰よりも際立っていた。現在は負傷中だが、復帰してくれば、プロでも即レギュラーを獲れるだろうし、代表に入っても通用すると思う」

 さて、一方で「新戦力が見当たらない」という声も少なくなかった。その理由は、「楽しみな素材であっても、今のレギュラーからポジションを奪って、チームを劇的に変えられるか、というと疑問」だと言う。

■木村和司氏(解説者/元横浜F・マリノス監督)
「宇佐美はいい選手だし、代表に入っても面白いと思う。それでも、まだ物足りない部分はある。所属するガンバの選手、スタッフ、そしてメディアやファンなど、チーム内外のみんなから、もっと信頼されるような選手にならないといけない。

 宇佐美に限らず、そこまでの信頼を得ている若い選手は今のJリーグにはいない。ハートが弱い、というのも気になる。たとえ代表に呼ばれても、先輩たちからレギュラーを奪ってやろう、という気概が感じられない。ベテラン勢に気を使って、遠慮してプレイしている。柴崎岳(鹿島アントラーズ。22歳)や武藤にしても、アジアカップで先発起用されなかったのは、そういう面が影響しているのかもしれない」

■川本治氏(解説者/元古河電工監督、ジェフユナイテッド市原強化部長など)
「代表でプレイするには、フィジカルであったり、メンタルであったり、技術や戦術以外の"強さ"が必要。個人的には、日本代表が若返る必要はないと思っているので、そういう"強さ"さえあれば、ベテランでも、若手でも、代表に選ばれるべきだと思う。しかしJリーグの中には、代表の主力メンバー以上の"強さ"を持った選手がちょっと見当たらない。いれば、パッと名前が出てくるはずだから......」

■福田正博氏(解説者/元浦和レッズコーチ、元日本代表)
「宇佐美は代表に呼んでチャンスを与えてもらいたい選手。南野拓実(ザルツブルク/オーストリア。20歳)もそういう存在だと思う。ただ、彼ら以外の選手の名前が出てこない。多くの関係者やメディアが、代表の『世代交代』を声高に叫んだところで、それが実現できないのも納得できる。同時に、新戦力候補が次々に浮かんでこないこと、その現状に不安を感じる。日本サッカー界は今、かなり危機的な状況にあるのではないだろうか」

 今回の調査で浮き彫りになったのは、若年層の人材不足。日本サッカー界にとって、最も深刻な問題かもしれない。この点については、今後も徹底的に検証していく必要がありそうだ。

text by Sportiva