この世のものとは思えない、”青い絶景”パンゴンツォ湖へ! インド映画『きっと、うまくいく』ロケ地めぐりレポ

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映画トラベラー村山が、あの映画ロケ地に勝手に強行取材! 映画大国インドで2009年に公開され、歴代興行記録を塗り替えたメガヒット作『きっと、うまくいく』。ラストシーンに登場した美しい湖、パンゴンツォ(パンゴン湖)を目指して、ロケ地めぐりをしてきました。

映画『きっと、うまくいく』ロケ地めぐり フォトギャラリー(全49枚)

■まずはラダックの玄関口、レーに入らないと始まらない!

年間製作本数2000本という驚異の映画大国インドで2009年に公開され、歴代興行記録を塗り替えたメガヒット作が『きっと、うまくいく』。超エリート工科大学の新入生3人組が、厳しい競争社会の壁にぶつかりながら“人間らしく生きる”ことを学んでいく感動コメディで、スピルバーグやビル・ゲイツが絶賛したこともあって世界各地で大ヒット。日本でもインド映画の公開本数を急増させる大きな役割を果たした逸品だ。

で、とりわけ鮮烈な印象を残すのが、ラストシーンに登場した美しい湖。大学を卒業して10年後、行方不明になった主人公ランチョーを探していた仲間たちが、ついにランチョーと再会を果たす大団円の舞台だ。

この世のものとは思えないような、乾いた山の土と、空と湖の青とが織りなす絶景。実は同時期に日本公開されたインド映画『命ある限り』でも登場しており、ぜひ一度この景色を観てみたいと思わずにいられなかった。

調べてみると、件の湖の名前ではパンゴンツォ(パンゴン湖)。インドの北部、チベット文化を色濃く残すラダック地方の、中国との国境に接する端っこにあることが判明。旅行通には有名な場所だそうで、「一番好きな場所はラダック」という人も数多い。

よし行ってみよう。インドのデリー空港からは国内線で1時間20分。しかしラダック地方の玄関口となるレーの町は、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に挟まれた標高3500mの高地にある。すでに富士山9合目の高さだが、目指すレーはさらに標高5000mの山を越えて行かねばならないという。マジですか? それ日本人的には未知の領域ですよね。未体験ゾーンへの不安と期待を抱えつつ、まずはレーから始めよう。

訪れたのは5月。気温が体温を超える灼熱のデリーから、飛行機からの景色はアッという間に雪山に。

レー到着間近。眼下に広がるのがラダック地方。真ん中に流れているのはインダス河。

レーの町並み。チベット仏教が盛んで住民の多くはチベット系。チベット文化がチベットよりも色濃く残されていると言われ、ダライ・ラマも説法に訪れる。

レーの中心とも言える広場。左奥にはイスラム教のモスク、右の丘の上にはポタラ宮のモデルになったと言われるレー王宮。さらに右上にはゴンパ(チベット仏教の僧院)がそびえ建っている。

道端に座っていたおじいさん。チベット仏教名物、ぐるぐる回すと幸せになるらしいガラガラみたいな仏具を持っている。

■ランチョーの学校に続く分かれ道は、学校とは別の方角にあった

『きっと、うまくいく』めぐり。目指すは絶景の湖パンゴンツォだが、レーの町の周辺にはほかにも映画に登場するロケ地がいくつかある。『きっと、うまくいく』以降ラダックを訪れる人は急増。国外からの観光客がほとんどだったものが、インド国内から家族や団体が押し寄せるようになったそうだ。

それは日本人であるわれわれとて同じこと。現地在住の日本人女性が経営されている旅行会社「ヒドゥン・ヒマラヤ」に連絡を取ったところ、以前に『きっと、うまくいく』のロケ地を回りたいという日本からのお客さんからのリクエストがあり、相当詳しい情報をご存知だった。

だったらお世話になってしまおうと「『きっと、うまくいく』関連の場所に片っ端から連れて行ってください!」とほとんど丸投げ。この旅はラクチンだぞとほくそ笑んでいたのも束の間、襲ってきました高山病! なんだかフラつく、頭が痛む、気分が悪い、一歩あるくのもしんどいなど、さまざまな症状が代わる代わる押し寄せて、高地に慣れるまではと余裕を持って組んだはずのスケジュールもアッという間にひっくり返った!

とりあえず近場からにしよう、そうしよう。というわけで、行ってみたのは10年後のランチョーが貧しい子供たちのために開いた小学校……ではなく、その小学校を指し示す標識が出ていた場所。ランチョーの学校のロケ地もレー近郊にあるのだが、標識は方角的には完全に反対の西方面。ラダック地方最古のゴンパ(僧院)があるアルチへと向かう道の途中にありました!

レーからアルチ方面に西へ。チャーターした車の中にもチベット仏教の仏塔が。

この分岐点から奥に伸びているのが、劇中ではランチョーの学校へと続いていた道路。実際にはTARU村へと続いており、TARUと書かれた看板がある。色とりどりの旗はチベット仏教にまつわるラダック名物で、ひとつひとつに干支の絵が描かていた。劇中では看板や旗は一切なかったが、確かにこの場所で間違いない。

いまは塗りつぶされているが、映画ではこの白い石に「SKITSAL SCHOOL」と書かれていた。「SKITSAL SCHOOL」は劇中でのランチョーの学校の名前。

さらにアルチ方面に進むと『命ある限り』でボリウッドの大スター、シャー・ルク・カーンがバイクで疾走していた道に出る。

現地のバイカー。見下ろしているのはインダス河とザンスカール川の合流地点。

■ランチョーの小学校に行ってみた

『きっと、うまくいく』めぐり三回目。前回は主人公ランチョーが作った学校の案内板を観に行ったが、今回は観光の本拠地となるレーを挟んだ反対側。南東に約15キロのシェイの町を訪れた。ここには学校への案内板ではなく、ランチョーの学校として使われた本物の小学校があるのだ。

ここも『きっと、うまくいく』の大ヒットで訪れるひとがひっきりなしなようで、大きな駐車場とビジターセンターができていた。さらにその奥には「ランチョーズ・コーヒー・ショップ」なる喫茶スペースまで。いくらなんでもココは現地の子供たちがガチで勉強する学び舎である。確かにコッチは観光目的だが、こんなにウエルカムでいいものかとたじろいでしまう。

ヒドゥン・ヒマラヤのガイド兼ドライバー、パッサンくんに着いてくと、普通に子供たちがウヨウヨいるよ、当たり前だけどな! そんなわけでなるべく出しゃばらないようにおずおずと、見学させていただいて来ました。

大きな駐車場とビジターセンター。「DRUK WHITE LOTUS SCHOOL」というのが学校の正式名称。学校自体はまだ建築中で、ビジターセンターでは寄付を募っている。映画の主演スター、アミール・カーンの写真も掲示されているので、中に入るついでに気持ちだけでも寄付してみては?

ビジターセンター奥には「ランチョーズ・コーヒー・ショップ」。かなり観光客ウェルカムな雰囲気。

通称ランチョー・スクールの中。同じ制服を着た子供たちが大勢遊んでいる。

興味津々なようで、カメラを向けると顔を逸らすシャイな子供たち多し。

劇中、嫌われ者の同窓生サイレンサーが立小便をして、子供たちに感電させられた場所。

サイレンサーが立小便した場所に、旅に同行していた父親に立ってもらった。横の扉に「MUSIC ROOM」と書いてあるのに触発されて突然エアギターを始めた70歳。高山病のなせる技だろうか。

■レーでアーミル・カーンが泊まったのはココ!

『きっと、うまくいく』めぐり四回目。いよいよ奇跡の湖パンゴンツォに出発!と言いたいところだが、その前にレーの町にある関連スポットをひとつ紹介したい。

ラダック地方自体が秘境とはいえ、世界中から観光客がやってくる。ラダック最大の町であるレーには夏期のみオープンするものも含めると、安宿からホテルまで相当な数の宿泊施設があるのだが、その中でも老舗と言えるのがホテル・オマシラ。主演スターのアミール・カーンが宿泊し、ロビーには記念写真が飾ってあるというので泊まってみた。

ちなみにホテル・オマシラは、女優・中谷美紀も泊まったことがあるそうで、彼女の著書「インド旅行記」では、高山病で倒れたところをホテルスタッフに助けてもらったくだりが書かれている。ほかにもとんでもないサプライズ書類を見せてくれたりするので、泊まってみて損はないと思います。なにがサプライズなのかはちょっとココでは書けませんが、ハリウッドの大スター絡みとだけ申し上げておきます。

ホテル・オマシラの入口。大きな中庭やビュッフェレストランを備えた、レーではかなり本格的なホテル。

こちらがホテルのフロント。スタッフは素朴で親切。急遽ネット手配した航空券のプリントアウトをしてくれた対応はさすがのホテルクオリティ。

ロビーに飾ってあるホテルオーナーとアミール・カーンの記念写真。『きっと、うまくいく』の撮影後、ラダックが洪水被害に見舞われたときも復興の応援に訪れたそうで、誰に聞いてもアミールへのリスペクトを口にしていた。

こっちはブラッド・ピットと。

豪華さはないが必要十分で清潔な客室。シャワーのみだが深夜でも湯量は問題なかった。

客室の窓からの景色。ホテルの中庭。遠くにはヒマラヤの峰。

夜の中庭。ちょっと実物よりオシャレに写りすぎかも。

■3バカ再会の湖、パンゴンツォへと出発

『きっと、うまくいく』のラストシーンの舞台となった湖、パンゴンツォ。もともと秘境好きには知られた景勝地だったが、映画の大ヒット以降はインド中から観光客がやって来るようになったという。

では、さぞや交通も整備されているだろうと思うのは早計。ラダック地方の拠点となる町レーから車をチャーターしたりツアーに参加すれば行けるのだが、目指すパンゴンツォは標高4350mのヒマラヤの奥地。しかもたどり着くにはさらに標高5360mの峠を越えないといけない。レーが富士山くらいの高さだってのに、さらに2000mも高いって人間が生きていけるのかもわからない。もはや月に行くのとどう違うのか?

いや、少々言い過ぎました。が、ラダック独特の風景も手伝って、まるであの世にでも向かっているような摩訶不思議なドライブが150km続く。雪や氷や事故った車など、難所にぶち当たれば片道5時間どころでは済まない。

レーでは高山病でフラフラな数日間を過ごしたが、もう時間的に後がない。行こう、行きます。旅行会社が手配してくれたドライバー、パッサンくんの運転で早朝からレーを出発。先に進めば進むほど新しい景色が現れる。まとめきれないのであと3回続きます。

明け方のレー。空気が澄んで気持ちがいい。

ラダック地方の荒涼としながらも、どこかおおらかな景色。パンゴンツォへと向かうルートは許可証が必要なため、旅行会社などで事前に申請しておく必要がある。

道中に度々現れる、チベット仏教の僧院ゴンパ。

丘の上に佇むゴンパ。要塞か宮殿のようでもある。

早朝の出発だったので、途中で休憩して朝食。パン生地を延ばしたものに、ジャガイモなどの具を包んだラダック地方では定番の食事。美味い。

標高が上がるにつれ、山の景色は雪で白味を帯びてくる。

ずいぶん高いところまでやってきた、と思ったのはまだまだ序の口でした。

■標高5360m!世界で二番目に高い峠越え

インド北部の秘境ラダックをめぐる『きっと、うまくいく』のロケ地探訪。いよいよ車は高さ5360mの峠シャンラを登っていく。訪れたのはラダックの観光シーズンが始まったばかりの5月。冬の間には閉鎖されてしまう外界からの街道が、つい数日前に開通したばかりだという。高度が上がれば道は凍てつき、ときには雪に閉ざされる。

素人目にもその装備じゃムリだろうと思う車両もいて、道中、何度かスリップして立ち往生した車やトラックに遭遇したが、現地のひとたちは焦ったり、イライラしたりする様子もない。協力して、土を集めて道路に撒いたりしながら、一台一台先に通す。イライラしてもしょうがない。だいたい標高が高すぎて、頭がクラクラしてイライラどころではないのだ。

車酔いなのか高山病なのかもはや判別がつかないが、高山病の症状には個人差が大きいそうなので、それぞれができる限りの対策を講じるしかない。ちなみにハイになる人もいるそうで、同行した70歳の父親はピンピンしていました。

いよいよ峠越え。世界で二番目に標高が高いと言われる自動車道を通る。

チェーンを巻かずに峠越えをしようとした自動車がスリップして立ち往生。

いよいよ最も標高の高い地点が見えてきた。

シャンラ峠。標高5360m。

温かいチャイがもらえる休憩所。

5月のインドは大部分が夏真っ盛りだが、シャンラを越えには防寒対策が必須。

■ついに到着、最果ての絶景、パンゴンツォ

いよいよ『きっと、うまくいく』めぐりのクライマックス。10年間行方不明だった主人公ランチョーが、親友のファルハーンとラージューや恋人のピアと再会した湖、パンゴンツォにやってきた。レーを出発して半日がかかり。刻々と変わり続ける景色に標高5000mの峠越え。乏しい経験の中からだが、これほど“はるばる”という言葉が似合うと感じたことはない。

目の前に現れたパンゴンツォは、とにかく青い。バカみたいだが、青くて、蒼くて、碧かった。目が覚めるような鮮やかな青、吸い込まれそうに深みのある群青、雲がかかるとたちまち灰色がかり、光が射すと輝きを放つ。

湖を囲む山肌の摩訶不思議なグラデーション模様も手伝って、火星か金星か、別の惑星に来たとしか思えない。陳腐だとは思うが、とにかくべらぼうな別世界感。この景色には大勢の映画人が惹きつけられ、インドの壮大なラブロマンス映画『命ある限り』や、ターセム・シン監督の『落下の王国』でもロケ地として使われている。

が、ここでハタと気がついた。ヒロインのピアは、確かスクーターで湖畔にいるランチョーのもとに駆けつけたんじゃなかったか。そりゃムリだ。いくらなんでもそれはムリ。ランチョーの学校から湖まで、映画ではすぐ近所な気がしたけれど、撮影隊は相当な労力をを投入して、パンゴンツォまでやってきていた。スタッフ、キャスト、撮影機材にスクーター。映画づくりとはかくもタイヘンな大事業なのだ。

パンゴンツォへの道すがら、放牧されていた家畜の群れ。ヤクだと教えられたが、どうも角の形が違うっぽい。ヤクと牛を掛けあわせたゾと呼ばれる家畜も多い。

土と石ばかりの景色の向こうに、ついに見えたよパンゴンツォ。

写真中央。湖に細く突き出している浅瀬のような部分が『きっと、うまくいく』のラストシーンの舞台。

近づいてみた。

高山病と思しき体調不良で軽くダウン。絶景にたどり着いた悦びとない混ぜになってわちゃくちゃ。

映画では、この奥からカリーナ・カプール扮するピアがスクーターに乗ってやってくる。

澄んだ水。塩湖なので塩辛いが、中国領の東側に行くと淡水だという不思議。

■神秘的な青い湖のほとりに便乗商売乱立?

『きっと、うまくいく』めぐり、最終回。昼ごはんを食べて帰ろうと、簡単なレストランやカフェが並ぶエリアへ行ってみる。目の前には紺碧のパンゴンツォが広がり、最高の気分で食事やお茶ができる最高のロケーション。なのだが、おそらく無許可だと思われる、いや、絶対に無許可に違いない「3 IDIOTS Restaurant」だの「3 Idiots CAFE」だの『きっと、うまくいく』の原題そのままの店名を掲げた看板がチラホラ。しかも映画からの写真まで堂々と使っているな。

まあ、それもよかろう。いや、アカンけど。

帰りにタンツェという村に寄ってもらった。小さな静かな村に『きっと、うまくいく』の撮影時に主演のアーミル・カーンらが泊まったゲストハウスがある。アーミル・カーンらの記念写真が飾ってあると聞いて行ってみたのだが、建物の中にひとがいる様子がない。事前に伝えてあるからなのだろうが、留守もお構いなしにずんずんと中に入っていくドライバーのパッサンくんに付いて行って、キョロキョロと見学させてもらった。

不法侵入のようで気が引けたが、土地が変わればルールも違い。まあよかろう。「AAL IZZ WELL」だもの。

レストラン村の場所はレーからだとパンゴンツォの入口にあたる駐車場の近辺。『きっと、うまくいく』のロケ地はもっと先だが、現地ツアーだとココまでで引き返す場合も多いようなので要確認。

簡素ながら、地元のチベット料理を出してくれる店が並んでいる。

もはやなにも言いますまい。

こちらがタンツェ村にある『きっと、うまくいく』の撮影隊が宿泊したゲストハウス。レストランも併設。そちらも無人でしたが。

ドライバーのパッサンくんの案内で中へ。

アーミル・カーンと宿のおかみさんと思しき記念写真。ほかにもラージュー役のシャルマン・ジョーシーの写真も。カリーナ・カプールの写真は盗まれてしまったとか。

タンツェの村。すべての手配をしてくださったレーの旅行会社「ヒドゥン・ヒマラヤ」の方々ありがとうございました。同社の上甲さんのブログにも『きっと、うまくいく』の現地情報が載っているので覗いてみては。