攻撃的なスタイルでラージョ・バジェカーノを3シーズンに渡って残留させたパコ・ヘメス。スペインで注目される若手監督のひとりだ。 (C)Getty Images

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 日本代表監督の適任者は、どのような人物なのだろうか?

 まず私が訴えたいのは、「ポゼッション or 堅守カウンター、4-2-3-1 or 3-5-2といった方法論やシステムにこだわるべきではない」ということである。フットボールは選手ありき。それを絶対に忘れてはならない。選手が紡ぎ出すプレーの積み重ねが、自然とチームのスタイルになる。しかも代表チームともなれば、クラブチームと違って活動時間は限られており、必然的に選手の個性が強く出るものだ。

 頑迷な監督ではもちろん困る。しかしロジカルな監督であれば、日本人選手を集めてパワーフットボールはやらないだろう。それを踏まえ、ビッグネームにこだわらずに指導者としての資質に目を向けるのであれば――。

 私が注目してきた若手監督として、パコ・ヘメス(44歳)を推したい。リーガ・エスパニョーラのラージョ・バジェカーノを率い、そのスタイルはとても攻撃的で、「ハラキリ」と揶揄する声も少なくない。リードされた展開で、ひとり少なくても攻撃的な選手を投入、3バックで得点を奪いに行く。こうした過激な戦いで、非力なラージョを3シーズンに渡って残留させてきた。それは監督として評価すべきひとつのメリットだろう。

 選手時代はCBで、デポルティボ・ラ・コルーニャ、サラゴサなどでスペイン国王杯で3度優勝。スペイン代表としても長く活躍し、EURO2000にも出場している。場数を踏んでいるだけに、プレッシャーへの耐性もあるはずだ。

 ただ一方、最近のパコは少し危うい。「攻撃的フットボールはある種の中毒」と私は考える。自分自身、スペクタクル主義者ではあるが、ポゼッションからの攻撃は追求すればするほど危険度は増していく。そのボールゲームを機能的にするため、守備のバランスが必要なこともある。しかるにパコは"中毒の状態"に陥っており、リスクをかけ過ぎている。

 このコラムの前編で指摘しているように、日本もアルベルト・ザッケローニ監督の指揮の下、ブラジル・ワールドカップで攻撃偏重の傾向に陥っており、同じ轍を踏んではならない。相手の力量と自分たちの力量を正しく判断し、多様な戦いで挑むべきだろう。
 その柔軟さで推薦したいのは、エルチェを指揮するフラン・エスクリバ(49歳)だ。監督の経歴としては国際レベルにはないが、仕事のクオリティは高い。エスクリバはキケ・フローレスの懐刀として知られ、戦術的な応用力に優れる。エルチェを率いて1年目で1部昇格に導き、2年目は残留。特筆すべきはHUMILDAD(謙虚さ)で、この成功にもまったく驕ったところがない。

 エスクリバならば、ソリッドなディフェンスを目指しつつも、日本の攻撃的特長が出せるだろう。ブラジル・ワールドカップでの日本代表に足りなかった、守りに強い選手を発掘することもできるかもしれない。人材がいないわけではないのだ。

 例えば長谷部誠は、(日本人選手としては珍しく)どこで流れを断ち切るかをよく心得ている。コンフェデ杯のブラジル戦でも、長谷部だけはネイマールを削っていた。その彼が90分間戦えなかったことが、ワールドカップでの惨敗につながったと思っている。

 日本人は守備の部分でまだ"優しすぎる"。私は攻撃的フットボールを愛するが、ボールサイドへの寄せの強度は欠かせない。そこで自由を与えたら、世界トップレベルでは勝負にならないからだ。コンタクトプレーの向上は急務だろう。

 そして、日本の持ち味を最大限に引き出せる監督という視点に戻れば、とっておきの候補がいる。名将ジョゼップ・グアルディオラに最も影響を与えた監督、ホアンマ・リージョ(49歳)である。