この時期にシンガポール遠征が組まれたのは、3月27日からマレーシアで開幕するオリンピックのアジア1次予選を睨み、諸熱対策と東南アジア対策をするためだった。
 
 しかし、キックオフの18時には25度前後にまで下がり、強風の影響もあって想定していたほど暑くなかった。1か月近くにわたる合宿で強化を図ったというU-23シンガポール代表も、日本のゴールラッシュに集中力を切らせ、実力差はさらに開いた。
 
 対策の成果は得られず、図らずもワンサイドゲームになってしまったが、期せずしてチームコンセプトの浸透を試すには、ちょうど良い相手、格好のゲームになった。
 
 もちろん、1次予選はまだしも、1年後のアジア最終予選は、シンガポールとは比べものにならないレベルのチームがライバルになる。大島が気を引き締める。
 
「攻撃のスイッチの部分が合わなかった場面もあったし、いつ奪いに行くかのタイミングもまだまだかなと。もっとレベルの高い相手と戦う時にも、今日と同じようにというか、もっとゴールへの意識を高めないといけないなとも思います」
 
 だが、チームの立ち上げから1年、コンセプトの浸透は、指揮官の思い描くレベルに達してきたと言えるだろう。3月11日にフクダ電子アリーナで行なわれるミャンマーとの親善試合と予選前の合宿で、課題として残る攻守におけるセットプレーを入念に詰め、万全の準備で1次予選に臨みたい。
 
取材・文:飯尾篤史(スポーツライター)