『駅をデザインする (ちくま新書 1112 カラー新書)』赤瀬 達三 筑摩書房

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 世界の都市圏人口をみてみると、上海の2300万人、ニューヨークの2100万人に比べ、日本の首都圏の人口はなんと3700万人(2010年国勢調査)にも上ります。

 その首都圏に張り巡らされた鉄道、そして駅は、毎朝の通勤ラッシュでも実感するように、多くの人々によって利用されています。日本全体の鉄道利用者は毎日6200万人ですが、首都圏、中京圏、近畿圏の三大都市圏で5600万人も占めているのだそうです(2010年国土交通省)。

 世界でも屈指の鉄道大国といえる日本。しかし、その日本の「駅のデザイン」の水準は低いのだと、『駅をデザインする』の著者・赤瀬達三さんは指摘します。

「正確さと安全で世界に知られた日本の鉄道の駅だから、駅デザインの水準も高いだろうと漠然と信じている人がいる。多少はわかりにくくとも、どこでもこんなものだろうと問題視しない人が多い。ところが海外の駅を訪ねてみると、日本よりはるかにわかりやすく、また美しいことに驚く。日本の鉄道駅のレベルは、相対的に見てかなり低いのだ」

 日本の駅の水準が低い要因には、「駅立地の制約、大規模駅への路線の集中、商業施設の複合、駅内の歩行距離の長さ、移動経路の複雑さ、アップダウンの多さ、利用者数と空間容量のアンバランスによる混雑と視界の不良、鉄道会社の多さに伴う運賃制度の複雑さ、相互直通運転の拡大による列車運行形態の複雑さ」(本書より)といった点があり、それらにより駅は、わかりにくいものとなっているのだといいます。

 そこで赤瀬さんは、駅をもっとわかりやすいものにするべく、これまで様々なプロジェクトに貢献。なかでもサイン設計の第一人者として、駅の案内サインのデザインを手がけてきたのだそうです。

 たとえば、駅の入り口には緑色、出口には黄色の色彩によるサインを用いることで、駅の出入り口の場所のわかりにくさを軽減。

 あるいは路線名の前にある○印。丸の内線は赤、半蔵門線は紫、千代田線は緑......といったように、○印の路線シンボルを導入することによって、遠くからでもその色により路線を判別することを可能としたのです。

 本書では、国内外にある数々の駅を豊富な写真と共に分析。そのなかには、東京メトロ副都心線との相互直通運転のため、2013年3月に地上2階から地下5階へと移転した後、あまり評判の芳しくない東急東横線渋谷駅も。

 普段何気なく見ている駅構内の光景。駅をわかりやすくするためにどのような工夫がなされているのでしょうか。本書を読めば、いつもの駅もまた違った視点から見ることができるようになりそうです。