“今年初”となるフル出場に本人は「疲れた」と振り返るが、最後まで躍動感溢れるプレーを披露し、完勝の立役者となった

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 U-23シンガポール代表は1か月にわたる合宿を組み、トルコ遠征を敢行するなどの強化に務めていた。会場は相手のホーム、しかも不慣れな人工芝のピッチとあって苦戦も予想されたが、蓋を開けてみれば8-1の完勝。3月27日からマレーシアで開幕するオリンピック1次予選に向けて、まずまずの手応えを得た。
 
 8ゴールすべてが流れのなかから生まれた空前のゴールラッシュ――。その口火を切ったのが、4-2-3-1のトップ下を務めた中島翔哉だった。
 
 開始直後から動き出しの早さでシンガポールの守備陣を翻弄していた中島は10分、右SBの松原健のアーリークロスがディフェンスの裏でバウンドした落ち際を左足で叩き、先制ゴールをマークする。
 
 さらに22分、ボックス内の右寄りで豊川雄太のスルーパスに反応し、右足を振り抜いてゴール左隅に突き刺した。
 
「昨日のシュート練習では外しまくっていたんだけどね」
 
 そう言って手倉森誠監督は笑ったが、裏を返せば、ゴール前の攻防に費やした前日のトレーニングで、最もシュートまで持ち込んでいたのが中島でもあったのだ。
 
 中島が披露したのは、フィニッシュへの高い意欲だけではない。
 
 動き出しが早いからボールが自然と集まってくる。トップ下とトップを自由に行き来してマークを撹乱し、中島が動いて生まれるスペースやマークのズレを突くことで、チームが押し込む時間が増えていく。中島が振り返る。
 
「味方と相手の動きのなかでどこにスペースが生まれるか、というのは最近ずっと考えている。そこは少しずつだけど、できるようになっていると思います」
 
 ハーフタイムには4人を入れ替え、システムを4-3-3に変更。左ウイングに回った中島はハットトリックこそならなかったが、64分、72分にはあわやゴールというシュートを放ち、76分に室屋成のゴールをアシスト。90分間フル出場を果たした。
 
「疲れましたね。90分やったのは今年になって初めてで、練習試合でもやっていなかったので。でもここで90分を経験できて、今季の最初としては良かったと思います」
 
 韓国を相手に0-1で敗れた昨年9月のアジア大会の後、手倉森監督は「攻撃陣のテコ入れ」を示唆した。
 
 その言葉どおり、昨年12月のタイ・バングラデシュ遠征ではスイスのヤングボーイズに所属する久保裕也、U-19日本代表のエースだった南野拓実、広島と鹿島でそれぞれ出場機会を増やした浅野拓磨と豊川を招集した。
 
 攻撃陣のポジション争いはここに来て激化しているが、チーム結成以来、10番を背負う中島の存在感は増している。
 
■試合データ■
日本 8-1 シンガポール
得点者:日=中島?(10、22分)、荒野?(56、83分)、鈴木(34分)、井出(42分)、大島(45+1分)、室屋(76分) シ=ファンディ(78分)
 
取材・文:飯尾篤史(スポーツライター)