試合前日にもかかわらず、選手たちはゴール前の攻防に焦点を当てた激しいトレーニングを行なっていた

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 大島僚太の鋭い縦パスに反応した中島翔哉が素早く反転してフィニッシュすると、今度はシュートモーションに入った鈴木武蔵に植田直通が身体を寄せて打たせない――。
 
 シンガポールに遠征中のU-22日本代表は2月13日、翌日にU-23シンガポール代表とのゲームを控えているにもかかわらず、ゴール前の攻防に焦点を当てた激しいトレーニングを行なっていた。
 
「ゴールに対する意識と意欲が高まるように。ただゲームをこなす、コンセプトをこなすではなく、勝敗を分けるのは、やはりゴール。フィニッシュの部分とそれに対するやらせないという守備の部分。勝負における重点の高いところを切り取ってやりました」
 
 そう語ったのは、このチームを率いる手倉森誠監督だ。
 
 昨年1月のチーム結成以降、9月のアジア大会までは、コンセプトの浸透に重点を置いてきたが、今回の遠征ではディテールや本質の部分をより大事にしているようだ。それは、いよいよ“本番”が近づいてきた証でもある。
 
 本番というのは、3月27日にマレーシアで開幕するリオデジャネイロ五輪のアジア1次予選のことだ。
 
 昨年12月にはタイとバングラディシュに遠征し、諸熱対策、東南アジア対策、連戦対策など、マカオ、ベトナム、マレーシアと同グループになった1次予選を見据えたシミュレーションを行なった。
 
 そして今回はマレーシアの隣国であり、気候が似ているシンガポールを訪れ、もう一度リハーサルしておきたいという思惑がある。
 
 そのため、これまでのキャンプでは常に新しいテーマを設けてきたが、今遠征では「継続性」がテーマになると手倉森監督は明かす。
 
「積み重ねてきたことが出せるかどうか。だから明日はあえて指示せず、メンバー、システムをぽんと与えて、選手がどうプレーするか期待しながら見てみようと思っています」
 90分間、思い描いたようにプレーできるものではない。相手が想定外のことを仕掛けてくることもあるだろう。そんな時、どうするか――。指揮官がこれまで入念にすり込んできた「割り切り」と「柔軟性」、複数のシステムの使い分けなどが本当に浸透しているのか、ここでチェックしておきたいというわけだ。
 
 対戦相手のU-23シンガポール代表の選手たちは、23歳以下で構成されるサッカークラブ、「ヤング・ライオンズ」に所属し、シンガポールサッカーリーグを戦っている。また、今年に入ってトルコ遠征を敢行し、約1か月にわたる合宿を張ってチームを強化。チームの完成度において日本を凌いでいても不思議はない。
 
 一方で、日本はこの時期はプレシーズンのため、選手たちのコンディションは「70〜80%の状態」(手倉森監督)なのだ。難しいゲームになるだろう。
 
 手倉森ジャパンは立ち上げから1年が経過した。チーム作りの進捗について指揮官は「イメージどおりに進んでいる。ゲーム内容、コントロール力、個人戦術の理解という点は、上手く持ってこられたかなと思っています」と胸を張る。
 
 その試金石として、U-23シンガポール代表は格好の相手になるはずだ。
 
取材・文:飯尾篤史(スポーツライター)