以前、トヨタ・ランドクルーザー200(第33回参照)を取り上げたとき、「ランクル(=ランドクルーザーの愛称)を名乗るトヨタ車は現在も数種類ある」と書いた。今回のランクル70(通称ナナマル)もそのひとつで、ナナマルはランクルのなかでも最もシンプルで、最も壊れにくく、そして悪路走破性能が高い。......ということは必然的に、ほぼ世界一頑丈で、世界一どこでもいけるクルマである。

 ナナマルはそもそも、ランクル40の後継機種として1984(昭和59)年にデビューして、国内販売は2004年にいったん終了した。

 もっとも、中東やオーストラリアなどで根強い......というか、「これがなくては生きられない」という切実な需要があって、ナナマルの生産はそれ以降もずっと続いていた。中東関連などのニュース映像をマニア目線で視ていると、背後に必ずといっていいほどランクル(大半がナナマル、ときどき200)が映っていることに気づく。

 ランクル200やランクル・プラドは日本でもおなじみだが、「ナナマルこそ真のランクル」と、古いナナマルを大切に乗り続けたり、海外からの逆輸入車に乗る筋金入りのマニアが少なからず存在する。そんな彼らのラブコールを受けるカタチで、トヨタは昨年から期間限定でナナマルの再販をスタートした。それが今回のナナマルである。

 10年ぶりに日本で復活したナナマルには、以前も販売されていた「バン」に加えて、いかにもマニアックな「ピックアップ」(=トラック)も用意される。

 その構造はとにかく本格的。ボディと下のフレームは独立しており、前後サスペンションはゴツいリジッドタイプ。4WDも今どきめずらしい手動切り替えのパートタイム式だ。

 きれいな舗装路での乗り心地は、路面と隔絶された浮遊感がちょっとあって意外と快適だったりもするが、少しでも凸凹があると、重いタイヤやサスペンションがユッサユッサと横揺れする。排気量は4.0リッターもあるので遅いクルマではないが、信号発進や高速道で流れをリードしようと思ったら、エンジンはとにかくガービーと騒がしい。

 さらに、空力技術が未熟だった昭和時代の設計だけあって、高速で100km/h付近になると、明らかにボディが浮き上がって不安になる。昭和の国産車には、車速が100km/h以上になると「キンコン、キンコン」と鳴る速度警告チャイムが装備されていた。アラフォー以上の世代ならご記憶だろう。もちろん、今のナナマルにそんなものは備わらないが、今回は欲しくなってしまった。内装デザインもまんま昭和なので、ここに懐かしのチャイム音が加わったら、オッサン世代は青春の思い出のツボが刺激されること必至である(笑)。

 そんなナナマルだから、とっくにフルモデルチェンジしてもよさそうなものだが、このクルマは「どんな僻地(へきち)でも修理できる、いざとなれば中古部品が使える」のが絶対条件。小手先のモデルチェンジは世界のだれも喜ばない......なんて伝説っぽいウンチクもまた、マニアのツボなのだ。

 ただ、ナナマルは運転しにくいクルマではない。その正反対。この運転のしやすさは感動的ですらある。運転席は、身長178cmの私でもサイドのステップにきちんと足をかけるか、グラブバーをつかんで身体を引き上げないと難儀なくらいに高い=目線が高い。しかも、生命を本気で預かる本物のツールらしく、車両感覚がバツグンで、ボディの四隅はまさに手に取るがごとし。エンジンは低回転でも粘りまくるし、クルマの動きはユッタリかつドッコイショという感じだが、反応そのものは正確。ねらったところをピタリと走る。

 再販となったナナマルの売れ筋は想像どおりバンだが、意外なことに、走りはピックアップのほうが好印象。ピックアップはリアに開閉ゲートがないのでボディ剛性感が高く、ホイールベースが長いので乗り心地や高速安定性もバンより良好。こういう隠れたウンチクや意外性も、とくにナナマルに反応する筋金入りの好き者にはツボだろう。

 さて、ナナマルの限定販売期間は「2015年6月末日生産分まで」である。ここで注意すべきは「受注」ではなく「生産」であることで、オーダーが生産可能台数に達した時点で受注終了となる。ナナマルは予想どおりマニア筋に大人気なので、受注が早期終了することは確実。ほしいなら、急ぐべし!

佐野弘宗●取材・文 text by Sano Hiromune