緊急特集「よみがえれ! 日本サッカー」(4)
【7人の識者が提案する「代表の次期監督像」】

 アジアカップ準々決勝敗退後、日本サッカー協会(以下、協会)は、ハビエル・アギーレ監督(メキシコ/56歳)との契約を解除した。現在、何人かの後任監督候補をリストアップ。協会の霜田正浩技術委員長が渡欧し、各候補者との交渉に奔走しているという。

 協会がリストアップした候補者については、各メディアでいくつかの名前が飛び交っているが、そのうち元イタリア代表監督のチェーザレ・プランデッリ氏(イタリア/57歳)、イタリアやスペインの主要クラブの指揮官を務めてきたクラウディオ・ラニエリ氏(イタリア/63歳)、元イングランド代表監督のグレン・ホドル氏(イングランド/57歳)らには、すでに代表監督就任を打診して断られた、といった報道まである。

 そうした状況の中、専門家たちはどう思っているのだろうか。再び7人の識者に、日本代表監督に求められる資質、そしてアギーレ監督の後任にはどんな人物がいいのか、話をうかがった。すると、4人の識者が「日本人監督」を提案した。

■平野孝氏(解説者/元日本代表、名古屋グランパスなど)
「具体的な名前は挙げられませんが、Jリーグで結果を出している日本人監督に代表で手腕をふるってほしい、という思いが強い。日本人監督がいいのは、何と言ってもコミュケーションが図りやすいこと。言葉の壁がなく、日本人の性格もよくわかっているので、チーム作りもスムーズにいくと思う。さらに、現代サッカーでは、90分間という限られた時間の中で、目まぐるしく展開が変わっていく。その中で、監督がひとつ、ふたつ指示を出せば、すぐに選手がその意図を理解し、実践できるというのは、非常に大きなメリットになる」

■木村和司氏(解説者/元横浜F・マリノス監督)
「今や、Jリーグでも日本人監督が次々に結果を出している。そう考えると、日本代表も日本人監督で世界と勝負してもいい時期が来ているのではないか。契約上の問題はあるかもしれないけど、ガンバ大阪の長谷川健太監督(49歳)とか、いいと思う。昨季三冠(Jリーグ、ナビスコカップ、天皇杯)を達成しているし、実績的にも申し分ない」

■鈴木良平氏(解説者/元ビーレフェルトコーチ、日本女子代表監督など)
「日本が1998年に初めてW杯に出場して以降、フィリップ・トルシエ監督、ジーコ監督、イビツァ・オシム監督、ザッケローニ監督、アギーレ監督と主に外国人監督が指揮を執ってきたけれども、監督が変わる度に何ら一貫性のないサッカーをやってきた。オシム監督が途中で倒れてしまったことの影響もあるかもしれないが、もう10数年も外国人監督に頼ってきて、"日本のサッカー"というものを見出すこともできず、確立されることもなかった。おまけにその間、日本サッカーが進歩したのか、と言えば、疑問。これでまた、新しい外国人監督を呼んできても、同じことの繰り返しになるだけ。さらにこのままでは、いつまで経っても日本人指導者が育ってこない。

 ならば、日本代表監督はもう日本人に託したほうがいい。そういう時期に来たと思う。例えば、名古屋グランパスの西野朗監督(59歳)は十分に実績を残してきている。ユース代表、五輪代表を指揮して、Jリーグでも柏レイソル、ガンバを率いて結果を出してきた。そういう指導者には、チャンスを与えるべき」

■福田正博氏(解説者/元浦和レッズコーチ、元日本代表)
「日本代表監督は、できれば日本人のほうがいいと思う。外国人監督だと、やはりコミュニケーションがうまくとれない状況が出てくるからだ。身近なところで言えば、例えばアジアカップ準々決勝のUAE戦(1−1/PK4ー5)。左サイドバックの長友佑都が負傷した際に、日本人監督であれば、もっと早く手を打つことができたと思う。言葉が通じるし、柴崎岳が右サイドバックもできることを知っていたはずだからだ。結果論ではあるが、あの試合はそこがポイントだった。あそこで後手を踏んだことが、勝敗を分けたと思っている。

 日本人監督の候補を挙げるなら、Jリーグで結果を出している人で、ガンバの長谷川監督、グランパスの西野監督、サンフレッチェ広島の森保一監督(46歳)などはすごくいいと思う。かつて五輪代表を率いてきた松本山雅FCの反町康治監督(50歳)や、ジェフユナイテッド千葉の関塚隆監督(54歳)もいい。とりわけ、反町監督と関塚監督は、下位のチームを上位に引き上げる手腕がある。いい意味で"弱者の戦い"ができる指揮官。世界を舞台にしたときに、綿密な戦略を立てて、日本人の良さを引き出してくれると思う」

 その他、3人の識者は「世界を知る」外国人監督のほうがいいという意見だった。

■望月重良氏(SC相模原代表/元名古屋グランパスなど)
「オシム監督、トルシエ監督、アギーレ監督のような、自分のサッカースタイルを持っていて、それをきちんとチームに落とし込める監督がいいと思う。選手たちをグイグイ引っ張っていくリーダーシップがあって、ある種のカリスマ性を持っていることが大事。言われたことを忠実に実践する日本人の性格からして、そういう監督のほうが合っているし、日本の良さが発揮されやすいと思っている」

■川本治氏(解説者/元古河電工監督、ジェフユナイテッド市原強化部長など)
「日本サッカー界は、プロ化してまだ20年あまり。世界に比べると、まだまだ歴史が浅い。本当の"プロの戦い"というものを知らないわけだから、世界のことを熟知している外国人監督のほうがいい。そのうえで、日本人を理解できているというか、日本人の気質がわかっている人が理想。同じアジアの中国や韓国と、日本も一緒のようなものだろう、と認識している人では厳しい。あと、知名度はなくても構わないが、実績があること。やはり結果を出している監督でないと、選手も納得しないだろうからね」

■鈴木正治氏(解説者/元横浜マリノス、名古屋グランパスなど)
「第一に、世界を知っていること。それも、W杯という厳しい戦いの舞台を経験している監督がいい。なにしろ、クラブの世界しか知らなかったザッケローニ監督はW杯で明らかに浮き足立っていたからだ。誰か候補を挙げるとすれば、かつてグランパスで指揮を執っていたストイコビッチ監督(セルビア/49歳)。現役選手としてではあるが、世界のレベルも、W杯の厳しさも身にしみてわかっている。日本人の善し悪しもよく理解しているから、日本代表監督として適任ではないかと思う」

 識者7人の意見は以上のとおり。協会による新監督探しは大詰めを迎えている頃だろうが、もしも欧州での交渉が失敗に終わったら、識者の多くが推奨する日本人監督に目を向けてもいいかもしれない。何はともあれ、新たな指揮官は誰になるのか。日本サッカーの行方を左右する"選択"を注意深く見守っていきたい。

text by Sportiva