議論沸騰、がんの予防  子宮頸がんワクチンは接種するべきなのか

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日本では毎年、新たに1万人の女性が子宮頸がんを発症し、約3000人が亡くなる。発症を予防すべくワクチンが承認されたが、接種開始直後から副反応(副作用)の報告が相次いだ。ワクチンを接種するべきか否か、科学的知見を基に考えてみよう。ダイヤモンドQ編集部がレポートする。

 近年は20代後半〜30代で子宮頸がんの発症が増加している。初産年齢のピークとも重なっており、初めての妊婦検診で子宮頸がんが発見されるというつらい話が後を絶たない。

 完全にがん化する前の「前がん病変」で見つかれば、子宮を温存した形の手術が可能だ。子宮頸部を円すい形に切り取る手術だが、術後に妊娠すると、赤ちゃんが出産予定日より数ヵ月早く未熟なまま生まれる早産リスクが約3倍に上昇する。

 東京大学の川名敬産科婦人科学講座准教授は、「早産リスク以外にも、低出生体重児出産リスクや流産のリスクも上昇する。それを考えると子宮頸がん検診も大切だが、何よりワクチンで前がん病変自体の発症を未然に防ぐことが重要」と強調する。

 がんの予防や検診の効果が論じられるときは、「その手段がどれだけ死亡率を下げるか」に焦点が当てられるが、子宮頸がんに関しては死亡率ではなく、女性の大切なライフイベントである妊娠・出産の安全を守るという視点の議論が必要だ。

 子宮頸がんは、粘膜や性器に感染する粘膜型の「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が原因で発症する。粘膜型HPVの感染ルートは性交渉、セックスだ。

 普通に性生活を営む成人なら、たとえパートナーが1人であっても、子宮頸部への累積感染リスクは初セックス後の3年で46%、生涯を通して5人に4人が1度は感染する。処女と童貞が一生、互いに貞操なら0%だが、あまりに非現実的だ。

 子宮頸がんワクチンという通称から女性にしか関係ないように思われがちだが、当然、男性にも感染リスクとがん化リスク、そして自分が感染ルートになる可能性がある。

オーラルセックスや
風俗利用で感染拡大

 男性でHPV感染と関連するがんの代表は、へんとうや舌の付け根にがんが発生する中咽頭がんだ。

 従来、脳腫瘍を除く肩から上のがん、頭頸部がんの発症は、喫煙や大量飲酒が原因とされていた。しかし近年、中咽頭がんの6割以上がHPV関連だと分かってきた。

 川名准教授は、「中咽頭がんでは、喫煙関連がんとHPV関連がんが完全に逆転している」と指摘する。

 背景にはオーラルセックスを含む性行為の多様化や風俗利用のハードルが下がったことがある。そのほか、男性の陰茎がんの半数、肛門がんの7割がHPVワクチンのターゲットであるハイリスクHPV(16/18型)絡みで発生する。

 HPVワクチンには、がん化の原因であるハイリスクHPV2種類に対応する2価ワクチンと、ハイリスク2種類+低リスクHPV2種類(尖圭コンジローマ:性器イボを誘発する)の4種類のHPVに対応する4価ワクチンがある。

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