ガヴァナンスをリデザインする──ヴィント・サーフGoogleチーフ・インターネット・エヴァンジェリスト

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2014年、WWWが誕生して25年を迎えた年に、アメリカではエドワード・スノーデンがネット上のプライヴァシーを議論の俎上にあげた。そして2015年、インフラを担うインターネット事業者たちのありようが米FCCによって問い直されている。「インターネットの父」が語る「インターネットは誰のものか」「どう使われるべきなのか」。(『WIRED』VOL.14より転載)

ヴィントン・G・サーフ|SOME
グーグル副社長兼チーフ・インターネット・エヴァンジェリスト。1943年生まれ。「インターネットの父」の1人として知られる計算機科学者。かつてはアメリカ国防総省国防高等研究計画局(DARPA)でプログラムマネジャーを務め、ICANN会長、Association for Computing Machinery会長を歴任し、米国家技術賞、チューリング賞などを受賞している。2005年より現職。通称ヴィント・サーフ。

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誰もがどのサイトにでもアクセスでき、そこにある情報やデータを自由にやりとりできる──この原則に支えられ、インターネットは発展を遂げてきた。

30億近い人々が無数のスマートフォンアプリやネット上のサーヴィスを利用できるのは、誰の許諾も必要のないイノヴェイションがオープンな規格と共通のインターフェイス、そして豊かなコネクティヴィティを育んだおかげだ。

しかしいま、その原則が脅かされている。ネットのオープン性は1648年のウエストファリア条約で定められた主権国家の概念に抵触しているからだ。これを受けて、国や地域の法に基づいて特定のコンテンツへのアクセスを制限する政府も増えてきており、その結果インターネットが分断されて、エンドツーエンドの通信が阻害されている。

スノーデンの一連の証言により、ドイツやブラジルなどは国民に関する情報が国外に流出しないよう物理的制限をかける方向に動いている。イランなどの国は国内限定のインターネットを構築したがっている。すでに中国では、国民がアクセスできる情報を監視し管理している。

もうひとつ懸念されるのは、国際政治や貿易をめぐる論争が、通信や言論の自由を阻害する可能性だ。例えば、ぶどう酒に関する「.vin」や「.wine」などの新しいトップレヴェルドメインに対して、「champagne」というセカンドレヴェルドメイン名を登録する権利が誰にあるかでフランス、スペイン、ポルトガルが激しく争っている。

インターネット・ガヴァナンスに関する政策と貿易政策が混同されると、関税障壁やその他の政治的和解の代償として、インターネットのオープン性が取引されてしまうかもしれない。政治や貿易の論争は一過性のものだが、もし通信の自由について不確定要素を生んでしまったら、インターネットビジネスやインフラへの投資意欲をそぐことになりかねない。

わたしたちは、インターネットがオープンであるという原則と、方針を決める際にはすべての利害関係者が参加すべきだというコンセプトを尊重しながら、インターネット・ガヴァナンスをリデザインすべき局面にいる。

米国政府は自らが管理してきた権限を、アドレス資源管理を目的に1998年に設立された複数の利害関係者からなる民間の非営利組織、ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)に譲渡すると申し出た。

個人的にはこの提案を強く支持したい。他国がこのような取り組みにならうかどうかはわからないが、インターネットがオープンかつ誰でも利用できる完全に自由な通信手段であることの価値は過小評価されるべきではない。21世紀、世界中の国が等しくその恩恵を享受するべきである。

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