写真提供:マイナビニュース

写真拡大

漫画のキャラクターには、それぞれの作品背景ごとに役割がある。普通に漫画を読み進めているだけでは気づかないような、有名キャラクターたちの「女子力」について考えてみる連載コラムです。

今回のキャラクター: しずかちゃん(『ドラえもん』)

○心優しい優等生ヒロイン、しずかちゃんの底力

実におそろしい女である。ピンクの洋服を身にまとったおさげの小学生、源静香女史のことだ。

『ドラえもん』(小学館)の作品の中では、主にのび太の受難や、その原因となることが多いジャイアン・スネ夫との関係性、そして、受難を解決するための道具、などが話の中心で、しずかちゃんが取り沙汰されることは少ない。

のび太の想い人であるものの、色恋事情は決してメインではなく、あくまでも、のび太・ジャイアン・スネ夫の男子3人に、彩りを添える位置付けである。そのため、世間ではしずかちゃんのイメージは、「おしとやかな優等生」「紅一点」「唐突にお風呂に入っている女の子」くらいのものではないだろうか。なお、『ドラえもん』作品の初期ではしずかちゃんには意地悪な面もあったが、今回は後期の、世の中のイメージ通りの"優しいしずかちゃん"について言及する。

心優しい優等生ヒロイン――しずかちゃんの底力は、そんなちっぽけなものではないのだ。しずかちゃんの女性としての実力は、もっと広く世に知られていいと、私は強く思っている。しずかちゃんはさりげなく、しかし確実に、したたかなのである。

○オタサーの姫……出来杉君とも仲良し

まず紐解きたいのは、あの有名なセリフ、「キャー、のび太さんのエッチ!」についてだ。小学生にして、この発言である。しかも、さん付け。あんなに毎日のように遊んでいる男の子に対して、敬称をつけて呼ぶ。これはもう、よほど折り目正しい御育ち、そして、さん付けすることで貞淑感を演出するイメージ戦略、のどちらかまたは両方だ。しずかちゃんの家庭は厳格である描写もあるため、前者は確かに当てはまっていると言えるが、後者についても捨て置けない。その理由が、次で紹介する彼女の言動に表れている。

スネ夫の決まり文句といえばこれ、「悪いなのび太、この○○、3人用なんだ」。この発言がなされる場には基本的にしずかちゃんもいる。何しろ、"3人用"のうちの一人はしずかちゃんなのだ。これに対して、「仲間外れにする人は嫌いよ」と怒ることもあれど、たいていは結局のび太が仲間外れにされ、「ドラえも〜〜〜ん、助けてーーーー」と泣きじゃくりながら帰っていく。ジャイアンやスネ夫に対して仲間外れを諭しながらも、角が立たないようにそれ以上の自己主張は控えているのである。10歳そこそこで、このバランス感覚。

"オタサーの姫"よろしく、男3人を引き連れて紅一点のポジションを欲しいままにしているしずかちゃんなわけだが、それだけではない。ある時にはご存知、出木杉君と仲良くすることだってある。「のび太さんのエッチ!」との発言を鑑みるに、性差に関する自覚はすでに芽生えているはず。「エッチ!」などとのたまう輩が、異性を異性として意識していないなどとは言わせないぞ。まだ小学生だから無自覚でいろいろな男の子と仲良くしている、というわけではあるまいぞ。そう、彼女は確信犯なのだ。

○しずかちゃんが歳を重ねるとどうなるか

さて、このように、小学生にして男に不自由していないしずかちゃんが、中学、高校と歳を重ねるとどうなるかを考えてみたい。

一般に、小学生のときに男の子の友達が多い女子には、二種類いると思う。一つは、男女差についての意識がまだ薄いゆえに、のびのびと交友関係を広げているだけのケース。こちらの場合は、中学に上がって(共学ならば)、周りの同性女子の振る舞いを見たり、小学生の頃に仲が良かった男子にそのままのノリで話し掛けてよそよそしい反応をされたりして、現実を知っていくことになる。"女性という立ち位置"から異性と接してきていないので、男性との関わり方が突然分からなくなることも多い。結果、女性としての自信もつかなければ、モテる自信もつかない。

もう一つは、小学生にしてすでに自分が女性であるという意識が成熟しているケース。こちらはむしろ、女性としての自分に比較的自信があり、結果モテる。そのままリア充街道に進むもよし、派手ではないけど異性人気をかっさらう隠れマドンナ路線でいくもよし、あらゆる可能性が開かれている。しずかちゃんは、小学生の時点での振る舞いから、ほぼ確実にこちらのタイプに該当するのだ。あなおそろし。しずかちゃんは、単なる心優しいのび太の相手役ではない。日本一、女子力の高い小学生なのである。

※イメージ画像は本文と関係ありません

<著者プロフィール>朝井麻由美Twitter@moyomoyomoyoフリーライター・編集者・コラムニスト。ジャンルは、女子カルチャー/サブカルチャーなど。ROLa、日刊サイゾー、マイナビ、COLOR、ぐるなび、等コラム連載多数。一風変わったスポットに潜入&体験する体当たり取材が得意。近著に『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。構成書籍に『女子校ルール』(中経出版)。ゲーム音楽と人狼とコスプレが好き。

(朝井麻由美)