ただ、いま日本から遠く離れた場所で、このような話をするのは難しい。日本でいま誰が最も優れたFWなのか、私にも分からない」
 
──それから、日本人選手には確固たる自信が欠如しているように映ります。真のファイターでモチベーターのあなたなら、そんな選手たちに自信を植え付けることもできるような気がします。
 
「私は日本人選手のメンタリティをきちんと理解しているし、モチベーションや正しい姿勢という点では、これまでの成功体験もある。私が名古屋を率いていた頃、選手たちの意欲は常に最高のレベルにあった。

 ハードワークと質の高い練習を積み、最高のモチベーションがあって真のリーダーがいれば、大きな成功を手にできるはずだ。日本には高いクオリティを備えた選手がいて、なかには欧州で真価を発揮している選手もいる。日本代表も成功できないわけがない」
 
──そんな日本代表は先のアジアカップの準々決勝でUAEに敗れました。そのチームをどう評価しますか?
 
「ちょうどその頃、私はフロリダで休暇を取っていたので、実際に試合は観ていない。それでも、結果やリポートはフォローしていたし、ハイライトの映像はチェックしていた。日本がベスト8で負けたことに、私は非常に驚いた。そんなところで終わるなんて誰も思っていなかったはずだし、普通に考えれば最低でも準決勝には駒を進めるものだと期待されていただろう。

 具体的な問題は分からないが、あるいは重圧に押しつぶされたのかもしれない。いずれにせよ、前回王者の日本がベスト4にも残れなかったのは、驚き以外のなにものでもない」
 
──それと同様に、ブラジル・ワールドカップでの惨敗にもファンは落胆しました。当時も期待は大きかったですからね。
 
「その通りだ。日本がグループリーグで1勝も挙げられずに砕け散るのは、大きな失望だった。大会前、私は少なくともベスト16には残ると見ていた。だが、実際にピッチに立ったチームは明らかに準備不足だった。

 大会後にザッケローニ監督が指揮官の座を退いたのも必然の流れと言える。いずれにせよ、日本はワールドカップとアジアカップでもっと良い成績を残せたはずだと、私は信じている」
──あなた以外に、日本代表監督に相応しい人物がいるとすれば、それは誰でしょう?
 
「個人名を挙げたくはない。そんなことをするべきではないし、私の流儀にも反する。私に言えるのは、日本代表監督とは非常に誉れ高い職業であるということだ。このポジションを担うべき優秀な人材は、たくさんいる。その中からひとりを決めるのはJFAであり、彼らは最良の選択をしなければならない。

 それについてアドバイスしたり、誰かを推薦するのは、私の仕事ではない。彼らには彼らなりの考えがあるはずだし、私は彼らを尊重している。先にも述べたように、メディアを通じて、私自身やほかの誰かを売り込むようなことはしない」
 
──とはいえ、JFAがあなたにオファーを出したら、あなたは喜んで引き受けるでしょうね?
 
「充電は完了しているし、モチベーションに満ち溢れている。つまり、私は仕事をする準備ができており、もしJFAから直接コンタクトがあれば、間違いなく前向きに検討する。

 私のアドバンテージは、日本とそのサッカーをよく知っていることだ。考え方、メンタリティ、選手、リーグなどすべてだ。これについては、他のどんな候補にも負けないと自認している」
 
──日本人以外なら、ということですね?
 
「ああ、さすがに日本人の監督には勝てないよ(笑)」
 
──最後の質問です。2013年12月に名古屋を去ってから、あなたはどのように過ごしていたのですか? その間、興味深いオファーはありましたか?
 
「私はパリに住み、家族と充実した時間を過ごしてきた。十分に英気を養い、旅行にもよく出かけたよ。とはいえ、試合は常に追い続けてきたし、監督のポストのオファーも何度かあった。しかし、それなりのチームでなかったら引き受けるのはやめようと決めていたので、これまではすべてを断ってきたんだ。

 実際に話し合いをしたこともあったが、私は決断を急がなかった。実は、いまもいくつかのチームが話を持ってきてくれているんだが、私は正しい決断を下すべく、時間をかけて状況を精査している。日本代表監督の後任候補に私の名前が挙がっていることを嬉しく思う。いま言えるのはそれだけだ」