1月半ば、チームの調子がどん底にあったとき、クリーブランド・キャバリアーズのヘッドコーチ、デビッド・ブラットはチーム練習を中止して、選手たちをボウリング場に連れて行った。

 キャブスはその前日、フェニックス・サンズに敗れて6連敗を喫したばかり。この時点で今季19勝20敗と、勝率5割を下回る成績に落ち込んでいた。サンズ戦では、年末から2週間欠場していたSFレブロン・ジェームズが復帰し、33得点・7リバウンド・5アシストをあげる活躍をしたのだが、それでも連敗を止めることができなかっただけに、チームの立て直しが容易でないことを思い知らされてもいた。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 昨年夏、レブロン・ジェームズがフリーエージェントで戻ってきたことをキッカケに、キャブスはドラフト1位指名で獲得した2選手を放出してPFケビン・ラブ(前ミネソタ・ティンバーウルブズ)を獲得するなど、「育成による再建」から「優勝狙いのチーム作り」に路線を切り変えていた。と同時に、キャブスに対する期待は過剰なほど高まり、チームにかかるプレッシャーは相当なものとなった。負けが続いたときには、「NBAヘッドコーチ1年目のブラットのクビも危ない」とのウワサが噴出し、デビッド・グリフィンGMが慌てて解任を否定するコメントを出す一幕もあったほどだ。

 そんな中、敵地ロサンゼルスでのレイカーズ、クリッパーズとの2連戦を前に、ブラット・ヘッドコーチは思い切って練習を中止にしたのだった。選手たちにはあらかじめ知らせず、練習に行くと見せかけて、バスをハリウッドのボウリング場に向かわせた。

 練習のつもりでバスに乗っていた選手たちは、コーチの思わぬ計らいにビックリするとともに、大いに喜んだ。練習の代わりにチームメイトたちと一緒にボウリングを楽しんだことで、選手は連敗による否定的な感情や、高い期待のプレッシャー、そして一挙一動が注目される窮屈さから解放された。

「(ボウリングは)予想外の驚きだった。だが、チームのためにはすごくいい時間だった。我々は様々なことからの気分転換が必要だったんだ」とラブは言う。

 キャブス4年目のPGカイリー・アービングも、「楽しかった」と振り返る。アービングによると、キャブスの選手同士は仲が良く、ともに過ごすことを楽しんでいるチームなのだという。

「テレビで映らない部分だから分からないかもしれないけれど、このチームは僕がこれまでに経験した中で一番、仲がいいチームなんだ。試合や練習前の準備をしているときでも、ボウリングでも、みんな楽しんでやっている。お互いに一緒にいるのが楽しいんだ」

 そしてその翌日、キャブスはレイカーズに勝って連敗を止め、さらに次の日もクリッパーズに勝って2連勝をマーク。それから、今まで負けなしの11連勝中だ(2月3日現在)。

 もちろん、ボウリングだけが治療薬ではない。1月上旬に行なったふたつのトレードで、ティモフェイ・モズコフ(前デンバー・ナゲッツ/C)、J・R・スミス(前ニューヨーク・ニックス/SG)、イマン・シャンパート(前ニックス/SG)を獲得して戦力を補強したことや、何よりもレブロンが健康になって戻ってきたことが、チームの調子が上がってきた直接的な理由であることは確かだ。

 それでも長いNBAシーズンの中で、バスケットボールを離れてリフレッシュしたことが転機となるケースは珍しくない。たとえば、2年前のマイアミ・ヒートはトロントでの遠征試合後、マイアミに戻る飛行機の離陸時間を遅らせてチーム全員でスポーツバーに行き、スーパーボウルをテレビ観戦したことがあった。そうやって楽しい時間を過ごしたことでチームの結束が強まり、NBA史上歴代2位の27連勝のキッカケとなっている。

 実際、チームを築いていく過程には、そういった小さなキッカケが溢れている。練習の積み重ねや試合の勝敗だけでなく、コート上やコート外での様々な体験をともにすることで、チームらしさが生まれ、味方に対する信頼が強まっていく。

 敵地ロサンゼルスでの試合では、コート上でもチーム結束のキッカケとなる出来事があった。腰を痛めていたラブが、「それでもチームのために戦いたい」と出場を直訴し、接戦の第4クォーターにはドライブインしてきたレイカーズのPGジェレミー・リンを正面から止めてチャージングを取ったのだ。腰を痛めていたラブの身体を張ったプレイを、チームメイトたちは見逃さなかった。

 試合後、レブロンはこう語っている。

「シーズン中には、『チームメイトと近づいた』と感じる瞬間が何度かある。ケビン(・ラブ)が今夜やった、休むこともできたのに故障を押して試合に出て戦ったこともそうだ。『できる範囲のことをやってくれ』と頼んだら、それをやってくれた。3ポイントシュートを決め、リバウンド争いをし、腰が痛くてこれ以上プレイできない状態なのにチャージングまで取った。そういう瞬間こそ、チームが前に進んでいると感じるときだ」

 1月31日、ラブが移籍後に初めて古巣のミネソタに戻り、試合をしたときもそうだった。この試合前、レブロンはラブに、「僕らを頼ってくれ」と言ったという。ブーイングで迎えられるラブを、自分たちが守る番だと思ったのだという。

「チームメイトとして、兄弟として、今夜は僕らが責任をもって彼を守るときだった。何が起こるか分からないから、試合を通して僕らを頼ることができるように、彼を助けて試合に勝てるようにしなくてはいけないと思ったんだ」

 キャブスのチームメイトがまた一歩、お互いに近づき、ともに前に進んだ瞬間だった――。

宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko