【石川祐希・イタリア武者修行インタビュー(後編)】

 イタリア・セリエA1の強豪モデナに、3ヶ月の期限付きで留学中の全日本代表・石川祐希(※)。星城高校(愛知県)時代にはインターハイ・国体・春高の3冠を2年連続で成し遂げ、昨年は全日本代表として、アジア大会で大活躍と順風満帆の選手生活だったが、こちらではベンチを温める日々が続いていた。インタビュー・後編では、海外でプレイすることの重みや葛藤、そして、今年9月日本で開催されるワールドカップ、来年のリオ五輪についての抱負を語ってもらった。

※石川祐希 191cm/レフトアタッカー 1995年12月11日生まれ。愛知県岡崎市出身。2014年中央大学に入学。春リーグ、大学インカレで優勝しMVP受賞。東京五輪に向けた強化指定選手「Team CORE」のメンバーでもある。

 日本のバレー選手で初めて海外に挑戦したのは、1995年、日立の解雇騒動に揺れた大林素子と吉原知子。当時の協会の規定では、所属が日本国内のチームでなければ、全日本には選出されなかった。2002年に加藤陽一が海外でプレイするために協会と交渉し、規定は変わった。しかし、植田辰哉監督の時代は、全日本選手が海外に行くことは望ましくないとされ、反対をおして挑戦した選手は代表を外された。石川がモデナでの留学が決まった後もアジア大会に主力として出場できたのは、監督が替わったからでもある。そのあたりをどう思うか尋ねると、石川は少し考えながら答えを口にした。

石川:自分はこういう体験が初めてで、以前の日本バレー界をよく知らないので、何とも言えません。Vリーグの選手も年齢の近い人しかわからないし、自分がやることにしか興味を持っていないので。でも、今ここに自分がいるのは、たくさんの人が協力してくれたり、良い悪いどちらにしろ、アドバイスをくれるので、そのことは踏まえています。ただ、最終的にやるのは自分。決めたからにはしっかり最後までやりきりたいですね。

―― 石川選手のバレー人生の中で、これだけ出場機会が限られている、なかなか試合に出られないのは初めてだと思うのですが。

石川:はい、初めてです。ただ、昨年の全日本でも海外遠征の時などに、あまり出られない時がありました。(全日本の)海外遠征のときは自主練が出来ないけど、こっちでは体育館が空いている時に自主練ができるので、そこで補ったりしています。

―― 試合に出られないということで、葛藤はありませんでしたか? 本当にイタリアに来てもよかったのだろうかと。

石川:そうですね、もちろん試合に出られないのはいい気分ではないし、かといって他の選手と比べて、自分の実力が上であるのは部分部分でしかない。まだまだ、向上しなければならないところが多いのもわかっています。言葉もしゃべれないし、いろいろな面を考えると自分はまだ足りないと思うので、とりあえずは今の状態でどうやってアピールするか、どうやったら試合に出られるかを考えています。出られたら、思い切りアピールする。そして、自分は自分のプレイをして楽しんでやっていきたいなと。

―― アップゾーンで試合を見ているときはどんな気持ちで?

石川:とにかく出たいっていう気持ちが強いです。今のプレイは自分だったらこうするなとか、日本と比べて「ああ、こういうバレーもあるんだ」と思いながら見ています。

―― 今、同じポジション(レフト)のウロシュ選手がコンディションがよくないので、出場のチャンスがあるかなと思いますが。

石川:チームとしては、全員がコンディション良いのがベストだと思うんですけど、自分のことだけに限れば、出られる機会が増えると思うので、しっかりアピールはしていきたい。でも、他の選手がケガで出られないから代わりに自分がというのではなく、ウロシュがベンチに入っていても、自分が起用されるようになりたいです。

―― さて、全日本の話になりますが、今年日本で開催されるワールドカップは、リオ五輪の出場権がかかっているわけですけど。

石川:全日本に選ばれれば、の話ですが、ワールドカップでは(2位以上の)リオの出場権を狙いにいきたいですね。そして、リオは出場だけではなくて、メダルを狙っていきたい。「出場」を目標にはしたくないです。

―― 16年ぶりに出場した2008年の北京五輪では、「出場する」ことだけで燃え尽きちゃったところがありますが、そこに目標を置くのではなくて......

石川:その先の東京五輪もありますけど、やっぱり目の前にあるのはワールドカップだったり、リオ五輪なので、それに向けてベストを尽くしていくのが、今の自分たちがやるべきことだと思っています。まずはワールドカップで、一番を目指す。常に目標は高くしないと、モチベーションやプレイの質が上がっていかないので。そういう状況で、バレーボールを楽しんでやっていこうと思います。

―― いろいろな選手にインタビューをしてきて、若手だと、リオはともかく東京五輪で頑張りますという選手もいる中で、リオに向けて強い意気込みが聞けて、とても頼もしく思います。

石川:周囲は「東京五輪で頑張って欲しい」と思うのでしょうが、東京でやるからではなくて、目の前の試合を、ただ勝つということに集中したい。負けていい試合なんて絶対ないと思うので。どんな試合でも、常に上を目指してやらないといけない。リオもワールドカップも応援してくれる人は絶対いるし、それに何かしらで関わったりする方も大勢いる。お金も当然たくさんかかっていますよね? それらを無駄にするような考え方はしたくない。いろんな人のためでもあって、それは自分のためでもあるので、常に全力で臨みたいと思っています。

 石川はこのインタビューの数日後、アウェーでのモンツァ戦で念願のフル出場を果たし、ストレートで勝利をおさめた。3セット75点中14得点し、アタック決定率62%、最後も石川の得点で締めた。

石川:モンツァ戦では、レフトの選手が故障して他にいなかったので、自分が出なければならない状態で『やるしかない!』という思いで臨みました。初めてフル出場して、単純に楽しかったです。良いプレイもありましたけど、悪いプレイも目立っていたと思うので、評価はそれほどよくないかなと。ですが、思い切りプレイできて、試合を楽しめたので、その点はすごく良かった。もっともっと、ここでレベルアップしていきたいです

 大学を卒業したらまた海外でプレイしたい、卒業する前に、来季もまた留学の話があればぜひ来たいと力強く話した石川。体も心も短期間でたくましくなっている。この貴重な経験を全日本でのプレイに活かしてもらいたい。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari