昨年8月の就任会見からわずか6か月での解任――。ワールドカップ惨敗からの再起を図った日本サッカー界だが、前代未聞の事態に陥った。 (C)Getty Images

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 日本協会が、ハビエル・アギーレ監督との契約解除を最終的に決断したのは、2月2日の深夜のことだった。

 アギーレ監督の代理人を務める弁護士との定時連絡で、スペイン検察当局による指揮官の八百長疑惑に関する告発が、バレンシア裁判所に受理されたことを確認。それを受けて3日夕方から東京・文京区のJFAハウスで緊急会見を開き、大仁邦彌会長は「ワールドカップ予選に影響が出るリスクを排除する必要があるということで、アギーレ監督との契約を解除する結論に至りました」と厳しい表情を浮かべた。

 この会見に先立ち、大仁会長は3日午前9時から田嶋幸三副会長、原博実専務理事ら幹部を集めた緊急会議を開催しており、そこで解任の方針を説明すると、異論は出なかったという。14時にスペインで滞在中のアギーレ監督に電話で契約解除を申し入れ、本人も「やむを得ない。分かりました」と了承。「日本で仕事ができたことは幸せでした。日本のサポーターの皆さまに感謝しています。日本代表チームの将来に幸運を祈っています」とのコメントを残した。

 新聞紙上では、アジアカップ期間中の1月14日にスペインで告発が受理されたとの報道があったが、日本協会理事で法務委員長を務める三好豊弁護士は、「受理されたのは1月30日。報道は事実ではなかったと認識している」と、あくまでも告発が受理されてから早いタイミングで決断を下したと明かしている。

 一方、解任に踏み切るには、これが最後のタイミングとも言えた。

 スペイン司法で八百長が扱われるのは初のケースで、起訴か不起訴かの確定までにどれだけの期間を要するかが予測できない。これ以上、決断を先送りにすれば、6月から始まる18年ロシア・ワールドカップのアジア予選に問題を引きずることは必至で、最悪の場合、ワールドカップ・アジア最終予選や本大会期間中に有罪が確定する可能性もあった。

 大仁会長は「指導者としての手腕は高く評価していた。八百長に関与した事実が確認されたわけではないので、(今後は)無実の証明に全力を尽くしてほしい。(解約の)条件面は合意している。守秘義務があるので内容を申し上げることはできないが、違約金の形はない」と説明した。

 在任から約6か月での解任は、Jリーグが発足した93年以降で最も短い。指揮官とともに招聘したコーチのスチュアート・ゲリング、フィジカルコーチのファン・イリバレン・モラス、GKコーチのリカルド・ロペスも解任する方針だ。ワールドカップ予選中の解任という最悪のシナリオは免れたが、12月に告発された時点で決断をする選択肢もあっただけに、判断が遅れた感は否めない。
 ワールドカップ・アジア1次予選の開幕が4か月後に迫るなか、今後は水面下で進めていた後任人事が一気に本格化する。

 大仁会長は「3月には間に合わせたい」と、次の国際Aマッチが予定されている3月27日のチュニジア戦(大分)までに次期監督を決めたいとの意向を表明。後任人事を担う技術委員会では、現職のJクラブ監督の"引き抜き"はしないことが確認されている。

 そうしたなか複数の関係者の話を総合すると、次期監督候補のリストには、07〜09年に鹿島でリーグ3連覇を達成した実績を持つオズワルド・オリヴェイラ氏(現パルメイラス監督)、C大阪を指揮し、香川真司(現ドルトムント)ら多くのタレントを育てたレヴィー・クルピ氏(現アトレチコ・ミネイロ監督)、昨夏のワールドカップでホスト国であるブラジル代表を率いたルイス・フェリペ・スコラーリ氏、さらに元ブラジル代表のジョルジーニョ氏やレオナルド氏らの名前も入っているという。

 また、外国人監督の招聘を基本線に人選を進めているものの、水面下では昨季まで甲府を率いた城福浩氏と接触したとの報道もある。

 アギーレ新体制の発足から約半年で、ゼロからの再出発を余儀なくされる前代未聞の監督交代劇。昨夏のブラジル・ワールドカップ、そして1月のアジアカップと、国際舞台での低迷が続く日本代表にとって、そのダメージは計り知れない。