当然の判断だろう。ハビエル・アギーレ監督の解任である。

 かつて指揮したサラゴサで、メキシコ人指揮官が八百長に関わったのかどうかは、ここでは問題ではない。スペインの検察当局に告訴されたことが問題なのである。

 告訴状が受理された今後は、事情聴取が開始される。スペインへ何度も足を運ばなくてはならない。国際Aマッチのスケジュールと重ならなくても、Jリーグや海外組の視察に影響が及ぶ。

 アギーレがどれほど身の潔白を叫ぼうとも、代表強化の停滞は避けられない。彼が連れてきたコーチ陣も含めて、契約を解除するのは必然的な判断である。

 では、後任は誰にするのか。

 外国人監督を最優先に選考するのは反対だ。なぜ外国人監督にするのかという理由が、そもそも曖昧である。

 日本人と体格も似たメキシコ代表で実績をあげてきたアギーレなら、日本人の良さを引き出してくれるというのが、彼を招聘した一番の理由だった。

 アジアカップはどうだったのか。

 アギーレは自らが好む4−3−3に、選手を当てはめた。それはいい。監督の権限である。

 ならば、選手の個性は最大値まで引き出されたのか。香川がピッチ上でさまよったのは、彼自身のコンディションだけが理由ではあるまい。システムにマッチしていなかったのだ。日本人の良さは、限定的にしか引き出されなかった。
 
 名前の通った外国人監督ならば、強豪国とのマッチメイクがしやすい、という意見がある。否定はしない。だが、国際的な知名度を持たない岡田武史監督の指揮下でも、オランダとアウェイで対戦している。
 
 南米の強豪と対戦したいなら、ジーコを頼ってみればいい。イタリアにはザッケローニがいる。東欧諸国との対戦が望みなら、イビチャ・オシムがいる。メキシコと顔を合わせたければ、アギーレに相談できる。そもそもマッチメイクは協会の職域で、監督に頼るものではない。
 
 誰が監督を務めていようが、肝心なのは代表チームの競技力だ。何よりも重要なのは、日本代表を強くできるのは誰なのか、である。

 僕は日本人を推す。

 すべての選手と通訳なしで会話ができる日本人監督は、時間の無さを解消できる。サッカー選手としての日本人を知り、日本人のメンタリティも当然ながら理解している。チーム作りの初期段階で、外国人監督が首を傾げるような疑問を感じることがない。
 
 日本人には経験がないと言われがちだが、ジーコは監督代行の経験しかなかった。現役時代のキャリアを買われて、彼はトルシエのあとを引き継いだ。W杯アジア予選を勝ち抜き、W杯に出場した元代表選手なら、十分に資格はある。
 
 誰かひとりに託すのが不安なら、トロイカ体制でもいい。監督、ヘッドコーチ、GKコーチ、分析担当スタッフなどをひとつのグループとしてとらえ、代表強化を任せればいい。
 
 私案を明かせば、名波浩の代表監督就任を望む。ジュビロ磐田の関係者とファン・サポーターには多大な迷惑をかけてしまうが、彼のキャリア、理論、リーダーシップを、日本代表に捧げてほしいのである。
 
 外国人監督にあって、日本人監督にないものは確かにある。だが、日本人監督にあって外国人監督にないものもある。

 日本代表の勝利に対する喜びと、敗戦に対する悔しさは、日本人監督が間違いなく上回る。日本代表の結果を自分自身のものとして受け止め、選手とともにエネルギーと変えていく責任感において、外国人監督は日本人監督に及ばない。