アジアカップの取材から帰国して、知り合いの編集者に聞かれた。

「日本の敗因をひとつに絞るとしたら?」

「気持ちじゃないですか? ホントに勝ちたいって気持ちが、僕には伝わってこなかったです」

「単に気持ちですか……」

 相手はとても残念そうである。彼が聞きたいのは、4−3−3が機能しなかったとか、香川真司に起用法がどうだったのかといったことのようだ。

 こちらも残念である。

「単に気持ち」と言われてしまうことに、深い失望を覚える。

 システムは洋服のようなものだと思う。真冬なのにTシャツ1枚で過ごしていたら、風を引いてしまう。サイズが合っていなければ、着心地は良くない。

 ただ、着こなしさえ間違わなければ、ひとまず快適に過ごすことはできる。必ずしも高価なものではなくてもいい。

 ランニングにたとえれば、有名なブランドで頭から足元まで固めなくても、走ることはできる。その人の目的は走ることだ。どんなウェアやシューズを選ぶのかは、走るための手段のひとつに過ぎない。

 ひるがえって、日本代表である。

 4−3−3は悪くなかったが、とびきり良くもなかった。香川は最後まで居心地が良さそうには見えなかった。

 しかし、それが敗戦の主因だとしたら、日本代表というチームは技術と戦術に思い切り寄りかかっていると言わざるを得ない。

 選手同士の距離感が良くない状況で、攻守が切り替わったとしよう。守備側がそのまま失点を浴びたら、ボールを失った選手が責められ、距離感が良くなかった、バランスが崩れていた、といった理由が失点の原因として並べられるに違いない。

 だが、距離感の悪さを克服して相手の攻撃を止める選手がいれば、失点は防ぐことができる。防げる可能性は高まる。

 2000年と04年のアジアカップでプレーした三浦淳寛さんの肌触りが、僕にはとてもよく馴染む。

「チームが一体になっていれば、ミスがあってもカバーしてやろう、と思うものなんですよ。ミスが起こることも予測して、そういうポジションを取るものなんです」

 日本代表は見栄えのいいサッカーをする。個人の技術レベルは高く、戦術的にも洗練されている。ただ、観る者の気持ちが乗り移ったようなゴール、セーブ、シュートブロックなどが、最近の日本代表からはめっきり見られない。

 それは、ピッチ上で選手が発する熱や日々の発言が、観る者の心に響いていないからだと、僕は感じている。「単にメンタル」と言われるが、「されどメンタル」だと思うのだ。