人数の多い順に並べたもの。幅があるものは、最大数の位置に置いている。

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日本人人質事件によって、ますます注目を集める中東地域。今回は、ヨルダンで暮らした経験を持つ中東研究家の尚子先生が、世界を震撼させるイスラム国(ISIS/ISIL)の正体に迫ります。

 今回の「イスラム国(ISIS/ISIL、以下「ISIS」と表記)」による日本人人質事件発覚後、多くの方から同様の質問を受けました。あまりに難しい質問で、頭を抱えてしまいました。もちろん、中東の人たちも決して一様ではありませんので、中東の人の中でもISISに惹きつけられている人は、どのような人々なのかを考えてみたいと思います。

 この問いに応えるためにいろいろな資料を読みましたが、印象的だったのは、ISISなどへの外国からの賛同者に対する調査が非常に綿密に行なわれていたことでした。外国からの支援者に関する調査結果をまず紹介し、中東諸国の中で人的にISISを支援しているのは、どの国なのかについて説明しながら、この問いを考えてみたいと思います。

ISISを構成しているのはどこの国の兵士なのか

 シリア・イラクの戦闘地域で、ISISなどがいったいどのような国から兵士を集めているのかという調査が、イギリスやアメリカの研究所や調査機関から発表されています。イギリスの研究所は、2014年4月から半年ごとにとして、世界中からシリアに入国し、兵士となっている人々の人数と国籍を発表しています(International Centre for the Study of Radicalisation and Political Violence:ICSR)。

 最新版はこの1月に発表されたもので、シリアやイラクへの渡航者数は、2万730人と推定されています。そのうち半数程度の約1万1000人が中東の出身者で、残りの約9000人のうち3000人は旧ソ連の出身者でした。同告書によれば、EU域内の出身者はほぼ4000人、2013年12月と比較すると、ほぼ2倍になっているそうです。

 EU内でシリアへ渡った人の数が多いのは、フランス、イギリス、ドイツですが、人口規模からするとベルギー、デンマーク、スウェーデンの割合が高くなっています。

 発表されている各国別内訳は、以下のとおりです。

 この数値は戦闘に参加した人の数で、5〜10%の人がすでに亡くなっており、10〜30%が戦闘地域を離れ、帰国もしくは第三国に帰還したと推定されています。そのため、シリアやイラクで実際に戦闘を行なっている外国人兵士の数は、2万人よりかなり少ないと推測されています。そして、この外国人の大半がISISとアルカイダ、ヌスラ戦線(「教えて! 尚子先生 【第8回】」参照)に加わっていると考えらえています。

 この三者の中で最も外国人に関して敷居が低く、彼らを歓迎しているのがISISだといわれています。最近では、ISISは兵士のリクルートだけではなく、「国家」建設のために、技術者や医師、専門家なども必要であるとして参加を呼びかけているため、戦闘に加わっている人の数はさらに減少するとみこまれます。

 ICRSは各国別の人数の把握だけではく、EU領域内から兵士を志願してシリアやイラクに渡航した人々が、いったいどのような方法で、何を見てリクルートされたのか、そして、彼らが影響を受けた人物(インターネット上で説教を行なっていた人物)などについて詳しく調査を行なっています。

 このように詳細な分析がなされる理由は、
1)今回のイラク・シリア地域における戦闘が、兵士として参戦する人材を、初めて世界中からインターネットを通じてリクルートした戦争であること
2)これまでは兵士として志願して外国に赴く人は、おもに戦闘経験者や傭兵であったが、今回の場合ほとんどの若者が戦闘未経験者であること
などが考えらえます。

 ですが、この2つの理由よりもおそらく、戦闘に参加してのちに帰還するであろう人々のホームグラウン・テロ(通常は欧米諸国に居住しているにもかかわらず、アルカイダ等の過激な思想に共鳴して居住地域内で起こすテロを意味しますが、戦闘地域に赴いた後、帰国後に本国や第三国でテロを行なうこともホームグラウン・テロに含まれます)を懸念しているため、細やかな調査が行なわれているのではないかと思われます。

 西欧諸国からシリアへ渡航する若者に関する研究では、調査対象者の当該社会に対する疎外感や挫折が最も重要な要因として指摘されています。日本でも北大生がシリアに渡航しようとした事件がありましたが、その時も就職の失敗が最大の原因であろうと論じられました。つぎに、西欧諸国での渡航者については、移民の2世、3世であることが多いと指摘されており、文化的背景や文化的親近性が理由として挙げられています。

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