2015年02月02日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)



メディア革命が進行している。

このコラムで何度か触れているように、アメリカのメディア革命を率先しているのは、MediumやVoxのようなプラティシャー企業だ。プラティシャーはプラットフォームとパブリッシャーの造語で、誰にでもオープンにコンテンツをアップロードできるプラットフォームを提供しつつ、みずからもパブリッシャーとして独自のコンテンツを配信するハイブリッドサービスのことである。

現時点で最強のプラティシャーは、じつはYouTubeである。

YouTubeは、誰でも動画のアップロードおよび共有ができるというプラットフォームとしてスタートした。いまや彼らは独自コンテンツを配信するパブリッシャーでもある。つまり、プラティシャーだ。

たとえば2015年2月1日(米国時間)、アメリカンフットボールのNFL優勝決定戦(スーパーボウル)のハーフタイム向けに独自のハーフタイムショーをライブストリーミング中に配信すると発表している。そもそもスーパーボウルのハーフタイムショーは、テレビの放映権をもつNBCにとっても一年を通じて最も多くの視聴者を集めることができる最大のイベントだ。つまり、テレビ放送網が行うそのイベントに、YouTubeというネットサービスが真っ向から対抗しようということになる。

YouTubeは動画をアップロードしてシェアしてもらうというプラットフォームでありながら、同時にオリジナルコンテンツを制作して配信するパブリッシャーとしてビジネスを拡大しようとしている。この動きは2011年ころから見られていたが、最近になってさらに顕著になっている。

現在、動画を消費する場所としては、FacebookがYouTubeを猛追し、単なる再生回数だけでいえばすでにYouTubeを凌駕している状況だ。しかもFacebookは、YouTubeなどの外部プラットフォームに保管された動画コンテンツのシェアよりも、Facebook自体にアップロードされた動画コンテンツを、よりひんぱんにニュースフィードに掲載するように、自身のアルゴリズムを改良しつつある。

さらにいえば、YouTubeの発表では、動画再生の前に広告を入れたコンテンツは、消費者に忌避される傾向が強いとのことで、広告収入の低減のリスクを憂慮しはじめている。Facebookという外敵と、自身の広告掲載手法の問題点の双方をケアしなければならない状況だ。だからこそ、独自のオリジナルコンテンツの制作を強化していく必要があるのだ。

このようにYouTubeは、さまざまな環境変化によって、いよいよプラティシャー化の傾向を強めていく。そして、彼らが成功することで、動画だけでなく、テキストなどのほかのコンテンツメディアにも、このプラティシャー現象は波及していくと考えている。

次回は、テキスト(活字)メディアにおける変化について再考してみたい。

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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