告発が受理されたか否か、スペインでは公にされないという。アギーレについても正式な発表は現時点ではまだないようだ。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 ハビエル・アギーレを取り巻く状況は、1か月で大きく変わることになった。
 
 なによりも、アジアカップで早期敗退に終わった後のスポーツ面だ。ベスト8に終わったことで、アギーレに対する日本国内の世論はさらに厳しいものとなっている。
 
 もっとも、例のレバンテ対サラゴサ戦に関する一連の八百長疑惑に関しては、原稿執筆の現時点で進展はほとんどない。
 
『マルカ』紙など多くのスペインメディアが、アギーレへの告発が受理されたと報じているが、現時点で正式発表はなく、それが事実であるかどうか確認されていないのだ。
 
 スペインの法システムは日本のそれとは大きく異なる。スペインでは、告発が受理され、起訴されたかどうかを公式に発表する義務がない。事実を知るのは、弁護人を含むいわば当事者だけだ。
 
 多くのスペインメディアがアギーレを含む42人が起訴されたと報じたその情報源は、42人の関係者ということになる。しかし、それらの情報をもって公式に起訴されたという判断はできない。
 
 いずれにしても重要なのは、起訴と有罪は決してイコールではないということだ。有罪か無罪かが決まるのは、その後の長いプロセスを経てからのこと。アギーレは起訴されている可能性もあるが、仮にそうだとしても有罪というわけではないのである。
 
 その意味で、「まだアギーレの告発は受理されていない」という日本サッカー協会の大仁会長の発言は、現時点ではまったく正しいし、適切な言葉だろう。多くの日本メディアが、まるで有罪が確定したかのように煽り立てるなか、協会は実に正確で的確な捉え方をしているように映る。
 
 前述のように、スペインでは起訴に関する公式の文書が存在しない。それを念頭に置いての発言だったはずだ。
 
 日本代表監督を務めるアギーレはスペイン国外の在住という事情もあり、複数の選手が証言を行なった昨年10月の事情聴取には呼ばれなかった。しかし、今回の八百長に関する公判が始まれば、バレンシアのその法廷で証言をしなければならないのは確実だ。
 
 それでは、証言はいつになるのか。これに関しても正確な予定というものはなく、予想するのは難しい。2月という報道もあるが、最新の情報から判断すれば、早くて3月というのが現実的な線だろう。スペインの法プロセスには多大な時間がかかり、世界的に見ても進行が遅いからだ。
 
 この件に関する捜査、そして判決までは約1年かかると見られている。その後、有罪となった場合は控訴の手続きなどが踏まれる見込みで、それらを考慮すると最終的に決着がつくのは2017年頃だ。
 過日、私はアギーレと話す機会があった。彼が休暇でスペインに来ていたからだ。曰く、今回のスペイン滞在は証言のためではなく純粋な休暇で、アジアカップを終えて一息入れるのが目的だったという。
 
 それではアギーレ自身は現状をどのように考えているのか。
 
 会話から伝わってきたのは、びくともしないその平静さだった。告発や告発受理といった言葉が、日本で有罪のように受け取られていることについては、さすがに不安を隠さなかった。しかし、その件について、現時点でコメントを出すつもりはないとも付け加えた。
 
「告発という事実が、そのまま有罪に繋がるというわけではない」
 アギーレは、これだけは日本国民に伝えたいということだった。同時に、「完全に無罪だと信じている」ということも――。
 
 サラゴサ対レバンテ戦の前後に起きたことに対して、自分は潔白だとアギーレは自信をもって言い切る。だからこそ、私は彼と話すことができたのだろう。そして彼の冷静な心中を垣間見ることができた。