アジアカップでベスト8に終わったアギーレジャパン。今回は、出場した各選手について、寸評を述べてみたい。

川島 4試合、日本が全て断然、押した試合展開だったので、活躍の機会はあまりなかった。一番の見せ場は、UAEとのPK戦になるが、PK戦は抽選の代用品と捉えているので、それについての寸評は避けたい。
 
長友 最終ラインから組み立てようとした時、長谷部が下がり、両センターバックが開く状態になるので、両サイドバックの位置は自ずと高くなる。長友は通常より攻撃参加しやすい状態にあった。そして実際、その能力は存分に発揮された。チームを勇気づけるプレイを再三見せた。ミスも少なく安心してみていられたが、もう一息、周囲と多彩な絡み方をして欲しかった。中盤のパスワークにもう少し絡まなければ、パスワークは多彩にならない。
 
森重 ブラジルW杯では、第2戦以降、今野にポジションを譲ったので、こうしたトーナメントに、センターバックのレギュラーとしてフル稼働したのはこれが初。力をアピールする機会だったが、次のW杯まで森重で大丈夫というプレイを見せたわけではなかった。敏捷性とスピード、そして強さと重みに欠けた。UAEにカウンターを許した時、ひ弱さが目立った。
 
吉田 日本人の中ではフィード力は高い方に入るCBだが、この大会はそこに貧しさが目立った。パス出しの起点になれなかった。プレミアでプレイしている格を見せることができなかった。正面のボールには強いが、サイドや背後を突かれると弱い。彼とコンビを組む選手は、俊足でないと厳しい。

酒井 内田欠場のため、初めて大きなトーナメントにフル出場をした。全体的な印象としてはよくやったと言える。常に前向きにプレイしていたが、自軍をピンチに陥れるミスもあった。1試合に一度の割合で、危ないシーンを作った。元気溢れる攻撃参加も、長友以上に単調だった。長谷部が下がり、3-4-3気味になれば、サイドバックも中盤の一員になる。真ん中の選手とトライアングルを形成し、パスで絡む必要がある。遅攻になればなおさら、サイドを単独で駆け上がるだけではない参加の仕方が求められるが、その攻撃参加はとかく一本調子で柔軟性に欠けた。

長谷部 ビルドアップの際、最終ライン付近に下がり、その起点になったが、パス出しに滑らかさが欠けていた。視野も狭く、逆サイドへの意識も低いので、ボールを的確な場所にテンポよく散らすことができなかった。パスは繋がるが、展開力に欠ける。有効ではない無駄なパスが多い。これが日本のパスサッカーの悪い特徴だが、それと長谷部のパスの捌きとは密接な関係がある。キャプテンらしい、真面目で勤勉なプレイは見せたが、パスサッカーを支える舵取り役としては不満が残った。

香川 プレイの最中、顔が下がっていることが多いので、広い視野が保てていない。味方選手も彼が何をするのか予測できないので、周囲と連動しにくくなる。パスも有機的に回らない。一方で、ボールを奪い返す力もない。それ以前にボールホルダーとの間合いを詰めることができない。敏捷性を活かすことができていない。際だったアタック能力があれば、それを帳消しにすることができるが、シュート力に欠けるので、中盤選手としても、アタッカーとしても物足りない選手に見える。プレイは見る度に悪くなっている。10番という背番号が似合わない、特別ではない選手に成り下がってしまっている。

遠藤 4試合すべて、途中交代でベンチに下がっている。パレスチナ戦、イラク戦、ヨルダン戦はリードしている状況での交代。交代時間が最も早かったイラク戦(後半18分)でも、アギーレは「休ませるため」と述べている。悪かったから代えたわけではないことを強調した。だが、UAE戦(準々決勝)の交代は1点ビハインドの状況で、交代時間も後半9分と、4戦の中で最も早いタイミングだった。同点、逆転を狙おうとするためには、遠藤より(交代で入った)柴崎の方がいい。アギーレがそう判断したからだ。交代の目的は「休ませるため」ではなかった。よくなかったから代えた。一言でいえばそうなる。遠藤にしてみれば、屈辱的な交代劇になる。