※中東は、アジアカップ出場の10カ国の合計 (出典)中国商務部公表データを基に作成

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2006年に中国に移住し、蘇州、北京、広州、そして08年からは上海に在住。情報誌の編集 長を経て現在はフリーランスとして活躍する大橋さんの中国レポート。サッカーアジアカップの広告看板で見えた中国のPR戦略とは?

 オーストラリアで開催されているサッカーアジアカップ。日本は残念ながら、PK戦までもつれた末にアラブ首長国連邦(UAE)に敗れてしまったが、中国も同じく準々決勝でオーストラリアに敗れた。しかし中国の男子サッカーは近年、不甲斐ない成績が続いていただけに、予選リーグの通過に中国国内は大いに盛り上がっていた。

中国と出場国の経済関係

 テレビで試合を観戦していると、自然と目に入ってくるものがある。ピッチを囲む広告看板だ。アジアカップの試合を見ていて、この広告看板に違和感を覚えた。

 日本企業の看板が多いのはいつものことだ。アジアカップは、日本ではある程度視聴率が計算できるコンテンツであり、日本の広告代理店の発言力も強いのだろう。

 それよりも奇妙なのは、中国企業が1社も見当たらないことだった――日本以外でも韓国の電機、自動車メーカーやUAEの航空会社、カタールのエネルギー会社、それにアジア以外では、ドイツのタイヤメーカーや米国のスポーツメーカーが入っているのにもかかわらず。

 中国代表に対する期待のなさの表れともいえるが、理由はそれだけではないように思う。ブラジルで開催された2014年ワールドカップでは、中国が出場していないにもかかわらず、アジアカップよりもはるかに高額なスポンサー料を払った中国企業があった。彼らはなにも、中国人視聴者への訴求が目的でスポンサーになったわけではない。世界に対してPRしようとしたのだ。

 一方、アジアカップでの露出はアジア内にとどまるが、その分、スポンサー料は安い。この種の国際イベントは、スポンサーになれるのは1業種1社と決められていることが多く、業種によっては他社との競合になるわけだが、積極的に海外投資を進める中国企業の資本力を考えれば勝算はあったはずだ。

 にもかかわらず1社もないということは、マーケティング的に見て、費用対効果が低いと判断したからに違いない。それには、ふたつの要因があるのではないかと考える。

 そもそもアジアカップはワールドカップと違い、自国が出場しない国は、よほどのサッカー好きでなければわざわざ試合をテレビ観戦しないだろう。そうなると、アジアカップのスポンサーになることはすなわち、自国を含めた出場国の視聴者に対する訴求を意味する。

 そこで今回の出場国を見てみると、16カ国中10カ国が中東だ。ほかは日本、韓国、北朝鮮、ウズベキスタン、オーストラリアとなっている。中国企業は、これらの国との親和性が低かったのではないだろうか。

 出場国の半分以上を占める中東だが、たしかに中国の経済活動は活発だが、政府主導によるエネルギーやインフラへの投資が主であり、民間投資による消費財やサービス財の販売には積極的ではない。しかも中東の情勢は不安定だ。イランへの経済制裁により、国有企業の中国石油天然気集団(ペトロチャイナ)と中国石油化工(シノペック)が140億米ドル(約1兆6500億円)もの損失を出したと昨年報道された。

 中東以外を見ると、購買力のある国は日本、韓国、オーストリアとなるが、いずれも中国製品が強い国ではない。日本に対しては不動産やM&Aなど、円安を背景に投資額は増加傾向にあるが、販売については苦戦している。昨今の対中感情を考えるとPRをするメリットは低い。

 オーストラリアへの投資額も近年、増加しているが、資源やエネルギーが割合としては多く、PRをする必要性自体が低い。韓国への投資はそれほど多くなく、しかも観光業に集中している。どちらかというと対中国人のビジネスが主となっているので、これもPRする必要性は低い。

 中国の輸出額という観点から見てみると、日本と韓国が突出しているが、いずれもOEMや原材料の輸出が多く、中国のブランド力は弱い。中東はどうかというと、10カ国を合計してようやく韓国と並べる程度だ。

 日本への輸出が減少傾向にあるなか、中国にとってアジア最大の輸出相手はASEANだ。中国と自由貿易協定(FTA)を結び、中国製品が多く流通するASEANの国が何カ国か出場していたら、あるいは中国企業の姿勢は違っていたかもしれない。

※参考『2012年の中国企業の対外直接投資動向』日本貿易振興機構(ジェトロ)

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