山形県三川町のふるさと納税のお礼品のひとつに入っている「むぎきり」。庄内地方だけで作られてきた、小麦粉でできた細麺。生麺のため日持ちしないが、こういった地方の特産品を味わえるのもふるさと納税の楽しみのひとつ。*画像は三川町HPより 詳細はこちら( http://www.town.mikawa.yamagata.jp/mikawa/fulusato.html)

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NHKの「おはよう日本」、「クローズアップ現代」はじめ、さまざまな番組で特集を組まれることが最近多いふるさと納税。お礼の品である「特産品」の豪華さが報道された昨年半ばに比べると、地域への実質的な効果と課題面に注目して報道されることが多くなってきた。

ふるさと納税が特定の農家や企業に対する
「補助金化」してしまうという課題

 ふるさと納税のお礼の品として届けられる特産品は、地元の農産物や畜産物であることが多い。自治体は、それら農家や畜産家から特産品を買いあげて、ふるさと納税をしてくれた人たちにお礼の品として届ける。

 ふるさと納税で1万円の税収が自治体にあっても、5000円(特産品金額が5000円の場合)は、それら農家や畜産家に流れていき、自治体が得る純粋な税収は5000円となる。自治体側で発生するふるさと納税に伴う事務作業経費などを差し引くと、実質的に自治体に残るお金はもう少し減る。つまり、せっせとふるさと納税でお金を集めても、自治体に残るのは半分以下ということになる。

 極端な例を考えてみる。ある地域において、お礼の品である特産品を提供している農家(企業)は1軒(1社)だけだとする。すると、ふるさと納税で税収があるたびに、その半分はこの農家(企業)に落ちることになる。そして、残りの半分が自治体の税収となり、地域住民に何らかの形で広く浅く配分されていくことになる。

 この特産品を提供している農家(企業)にしてみると、自らの生産物を自治体に買い取ってもらうわけなので、それは売り上げ増という形になる。

 ふるさと納税は、ある意味では首都圏から地方への税収移転なのであるが、実態としては税収移転となっているのは半分で、残り半分は税金が特定の農家(企業)の売上に化けてしまっている。

 本来100というお金が税金として使われていたものが、50は特定の農家(企業)への売上(実質的な補助金)となり、50が税金として残るというイメージである。国全体のマクロでみた場合、税収減となってしまうわけだ。また、地域住民にしてみると、本来100のお金をみんなで享受するはずが、半分は特定の農家(企業)に行ってしまうので、不公平感が募る。

 実際は、多くの自治体では、特産品を提供している農家(企業)は1社ではない。また、農産物の場合は、地元の農協の商品が提供されることも少なくない。農協が特産品を提供するなら、ふるさと納税の半分は農協に入って、農協に加盟している農家さんたちに広く分配されるという構図となる。

お礼の品は
マーケティング戦略の一環

 上のような極端なケースを聞くと、「なんと、けしからん!」と思う方もいらっしゃるかもしれない。しかし、マーケティングのコンテクストで考えると、アリなのだ。

 ふるさと納税は、自治体にしてみると自らの地域を納税者に買ってもらう行為に近い。1700以上ある自治体の中から、納税者に税金を納めてもいいと思わせることができれば税金を受け取ることができるわけだ。

 マーケティングの世界では、商品販売から購入までの流れを説明する際に、よくAIDAモデルが登場する。

 例えば、まずはテレビCMでAKB48が登場することで、視聴者の注意を引く行為(Attention)。次に個別商品(たとえば携帯電話)に対しての興味を持ってもらう(Interest)、その上で購入したいと思わせて(Desire)、最後は実際の購入という行為を取ってもらう(Action)。

 ふるさと納税における魅力的な特産品は、このAIDAモデルにおけるAttentionの役割を担っていると考えられる。

 ふるさと納税を行っている自治体は1700以上も存在する。平均年収ぐらいの家庭であれば、1年間に寄付金控除対象内で行えるふるさと納税の金額は、よくても5万円程度、つまり、5つの自治体ということになる(この金額は今後2倍に引き上げられる予定である)。

 自治体にしてみると、1700分の5に選ばれないといけないため、せっせとマーケティングをする。しかも、大多数の自治体は知名度が低い。となれば、あの手この手知恵を絞って特産品で注意を引く(Attention)ことを頑張るのは自然な流れであり、ビジネス的に考えると通常の行為である。

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