ラブ&ピースでは捉えきれない「ジョン・レノン」という劇薬
 フランスの週刊誌『シャルリーエブド』本社銃撃事件を受けて、1月11日にパリで行われた反テロデモ。その最中、どこからともなく流れてきたのがジョン・レノンの「イマジン」。するとそれに気づいたデモの参加者が手拍子を取り、最後には大合唱になったことが伝えられました。

⇒【YouTube】”Imagine” - John Lennon @ Marche Republicaine Paris http://youtu.be/VlxI2fAUymw

 しかし皮肉なもので、テロリストの側にも「ジョン」と呼ばれる人物がいるのです。イスラム国(ISIL)の日本人殺害予告動画にも登場する、ロンドンなまりの英語を話す覆面男。彼は人質殺害の首謀者とされ、元ラッパーの「ジハーディ・ジョン」(聖戦士ジョン)と見られています。人質たちが、イギリス出身のテロリスト4人をビートルズに見立て、ジョン・レノンにちなんで彼を「ジハーディ・ジョン」と呼ぶようになった――と欧米メディアが報じています。

◆「暴力的な革命も、それはそれで結構」

 日本では、「レノンの信奉者がテロリストになった」と誤解している人も多いようです。ラブ&ピースの象徴であるレノンの信奉者がなぜ?と。しかし、レノン自身の言葉を読むと、単なる「反戦・平和」の枠には収まりきらない思想がうかがえるのです。

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<しかし、暴力的な革命がほんとうにおこるなら、それはそれでもいいのです。

(中略)いまでも、私には、失うものはなにもないのです。

私は死にたくありませんし、肉体的な苦痛もごめんですが、

しかし、世の中が暴力的な革命でむちゃくちゃになるのであれば、

それはそれで結構なわけです。

おかげでみんなは苦しみから解放されますし、

心配事はなにもない状態となり、問題はいっさい姿を消してしまいますから。>

(『回想するジョン・レノン』片岡義男訳、「イマジン」リリース前年の1970年12月、米ローリング・ストーン誌上でのインタビュー)

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◆ミュージシャンとしての偉大さと奇妙さ

 一方で、レノンの発言や思想にとらわれすぎて置き去りにされてしまうのが、他でもない、彼の音楽。特に「イマジン」は、メッセージを伝えるための手段として使われがちです。その問題について、ポール・サイモンはこう語ったことがあります。

「ところが、そのサウンドで何かを語ろうとすると、そこで大騒ぎになってしまう。」(『インスピレーション』ポール・ゾロ著 丸山京子訳)

 ここからは“平和”や“反戦”の使者としてのレノンから離れて、ミュージシャン、ソングライターとしての偉大さ、そして奇妙さがうかがえる3曲を紹介したいと思います。

 先ほどの『回想するジョン・レノン』の中で音楽について語る際に数多く言及しているのが、ボブ・ディランとロックンロール。彼の根幹を成す二つの要素だと言えます。

 それが一つの作品として結実したのが、レノンのプロデュースによるハリー・ニルソンの「Subterranean Homesick Blues」(ボブ・ディランのカバーアルバム『Pussy Cats』収録)。

⇒【YouTube】Harry Nilsson - Subterranean Homesick Blues http://youtu.be/QKceABKh7jc

 “音のバランス”といった発想そのものが貧乏臭く思えてくるような迫力です。全ての楽器が叩きつけるように演奏されている。その意味において、ダイレクトな音楽です。出来上がった音だけを取ればフィル・スペクター云々という話になるのかもしれませんが、そのメンタリティはクレイジーホースと共演するときのニール・ヤングに近かったのではないでしょうか。

⇒【YouTube】Neil Young and Crazy Horse - Like a Hurricane (Live at Farm Aid 2012) http://youtu.be/6XVjnmOnigs

⇒【後編】「狂気を感じるレノンだけのタイム感」に続く http://joshi-spa.jp/187985

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>