2013年シーズンは年間4勝を挙げ、横峯さくら(29歳)との熾烈な争いを制して、初の賞金女王に輝いた森田理香子(25歳)。翌2014年シーズンはツアーの"顔"として、一層の活躍が期待された。しかし「賞金女王」という称号を背負って、ひと際注目が集まる中、それがプレッシャーになったのか、シーズン1勝、賞金ランキングは16位にとどまった。

 不本意な成績に終わった昨シーズンについて、森田はまずこう振り返った。

「昨季は、調子を崩したり、スコアがまとまらなかったりして、思うような結果を残せませんでした。一昨年(2013年)に比べると、"ここぞ"というところのパッティングが決められず、スコアを伸ばせなかったことが、すごく大きかったと思います。それで、勝てる試合を逃してしまったりして......。おかげで、周囲からは『どうしたの?』と聞かれることが多かったですね」

 優勝は1回に終わったものの、ダイキンオーキッドレディス(3月7日〜9日/沖縄県)、CAT Ladies(8月22日〜24日/神奈川県)、大王製紙エリエールレディス(11月20日〜23日/香川県)と、2位が3回。上位争いには何度となく加わったが、一昨年ほどの爆発力はなかった。

「もちろん(昨季の)成績には納得していませんが、技術的な部分、例えばスイングは良くなっていました。フックやスライスなど、ショットの精度も上がっていました。それでも、私の勝負弱さなのか......勝てる試合で勝てませんでした。自分にはまだ"甘さ"があると感じています。スコアが伸びなかったのは、少し消極的になっていたところがあったのかもしれません。コースマネジメントなど、最善策を考えてプレイしているつもりでしたが、今思えば、以前よりも攻めていなかったかな、とも思います。別に逃げているわけじゃないんですよ(笑)」

「賞金女王」という立場にあって、受け身になったのか、やや"守り"に入ってしまった部分があったのかもしれない。

「賞金女王になったことで、(周囲から)常に上位争いして当たり前、と思われていたのはよくわかります。それは、すごく光栄なことだと思っていますし、私自身、一番になったからには、次もそこに挑戦しようという気持ちはありました。でも、何事においても、そう簡単に思いどおりにはいきません。

 その結果、賞金女王に見合った成績を出せなかったので、(不調とかスランプとか)いろいろと言われてしまいました。だからといって、それをマイナスにとらえることはありませんでした。それだけ、周囲の人たちが(私のことを)期待して見てくれているということですから。それに、これからの長いゴルフ人生を考えたら、落ち込んでいる場合ではありませんでした」

 期待が高い分だけ、メディアから厳しい評価を下されることもあった。辛らつな批評に嫌な思いをしたこともあっただろう。何より、結果を出せないことで、自らが最も苦しんでいたはずである。だが、そんなシーズンを思い返す森田の表情に暗さはなかった。反対に、自らの戦いぶりを淡々と振り返りながら、穏やかな笑顔を見せた。というのも、新たなことにチャレンジできたこと、その点で満足しているからだという。

「昨季は、初めて全米女子オープン(35位タイ。6月19日〜22日/ノースカロライナ州)に参戦し、一昨年に続いて全英女子オープン(27位タイ。7月10日〜13日/イングランド)にも出場しました。その際、それぞれのコースを回って、米ツアーで戦う選手たちのプレイを目の当たりにして、(コース攻略のために)必要な球筋を身につけることの大切さを、改めて痛感させられました。日本ではそこまでの球筋を必要としないコースもあるのですが、そういうショットも身につけて、積極的に実践していかなければいけないな、と思ったんです。それで昨年は、日本のコースでもティーショットやセカンドで、毎ホール球筋を変えて打っていましたし、フックやスライス(ショット)の精度を上げようと努力していました」

 森田は海外メジャーを戦ったことで、自分の未熟さを再確認した。そして、自らに足りないものを見出し、新たな技術の習得に取り組み始めた。試合の中でもあらゆることにチャレンジし、自らの技術に磨きをかけてきた。「優勝」という結果には表れなかったものの、森田自身は着実に成長を遂げて、トッププロへの道をしっかりと歩んできたのである。

 また、森田が技術向上に励むのは、師匠である岡本綾子プロの、技術を身につけることの重要性を説いた言葉が、常に胸に刻まれているからだ。

 球は曲がるもので、逆に(言えば)曲げるもの。球は曲げるものであって、ストレートは究極の技――。

「私はもともと、ダメでもやってみよう、という性格なんです(笑)。とにかく今は、岡本さんの言葉を信じて、自分の力でどこまでできるのか、技術を磨いていくだけです」

 さらに森田は、技術習得のために、他の選手のプレイを以前よりも観察するようになったという。

「岡本さんに『他の選手もそれぞれいい部分をたくさん持っている』と言われて、それが自分のゴルフにも生かせればと思って、特に自分とは違うモノを持っている選手のプレイをしっかりと見るようになりましたね。例えば、不動裕理さんはアプローチがすごくうまい。そこで、自分とは手首の使い方が違うな、というのを見て、そのやり方を研究したりしていました」

 賞金女王になった一昨年、おそらく森田は自分のことだけで精一杯だった。ゆえに、横峯との女王争いが熾烈になればなるほど、自らの焦りや不安を隠せず、自滅してしまうことが多々あった。それが今や、周囲の選手のプレイを見るだけの余裕が生まれた。昨年の一年間で、精神的にも確かな成長を重ねていたようだ。

 1月8日、森田は25歳の誕生日を迎えた。日本女子ツアーにおいては、もはや若手ではなく、中堅といった位置づけとなる。およそ1カ月後に始まる2015年シーズンでは、今季から米ツアーにチャレンジする横峯に代わって、日本女子ゴルフ界を引っ張っていく存在として期待される。

「賞金女王になってから、"ツアーの顔"というふうに見られていることは自覚しています。だからこそ、出られる試合にはすべて出場したいし、そうした期待に応えられるようにしたい。そのためには、まずは1勝。そして、2勝、3勝と続けて勝ちたい。今、はっきりと思うのは、もう一度『一番になりたい』ということです」

 2度目の賞金女王を狙うことを、あえて口にした森田。そこに、自分がツアーを引っ張っていくという強い覚悟と、技術的にも、精神的にも、ひと回り成長した"女王"の風格を感じた。常にゴルフに対して真摯に向き合ってきた彼女の復活、いや、一段とたくましくなった姿が、まもなく見られるだろう。

text by Kim Myung-Wook