【 1月特集 2015年錦織圭の挑戦!(10) 】

 錦織圭にとって、グランドスラムベスト8という成績は、すでに手放しで喜べないものになっている。

 第5シードの錦織(ATPランキング5位、大会時)は、オーストラリアンオープン(全豪)準々決勝で、第4シードにしてディフェンディングチャンピオンのスタン・ワウリンカ(4位、スイス)に3−6、4−6、6−7で敗退。全豪初のベスト4進出はならなかった。

 試合は「サーブが本当によかった」と振り返ったワウリンカが、最高時速222キロの高速サーブを叩き込んで序盤から主導権を握った。

「サーブのコースを読めなくて、逆を突かれた」という錦織は、ショットの感触が良くないまま打ち急ぎ、優位に立ちたかったストローク戦でもミスが多かった。また、ファーストサーブの確率も、第1セット56%、第2セット57%と振るわなかった。

 第3セット、ようやく落ち着きを取り戻した錦織はストロークのリズムが良くなり、ファーストサーブの確率が72%に上昇。9回試みたサーブ&ボレーを8回成功させて応戦し、お互いワンブレークでタイブレークに突入した。ここで錦織は、1−6から6−6まで追いつく粘りを見せたが、大事な場面でフォアのドロップショットをネットにかけ万事休した。

「自分のいいプレーが出てくるのが、ちょっと遅かった。大事なポイントで、あれ(ドロップショット)をミスしてしまったのが、精神的にはつらい」

 錦織は、4回戦に続いて準々決勝も左ふくらはぎにテーピングをしてのプレーだった。実は、大会前から右手首と左肩にもテーピングをしており、大会中、錦織の表情が曇りがちだったのは、コンディションが万全ではないという不安が常につきまとっていたからかもしれない。

 15年シーズンも、錦織にとって「フィジカル強化」は課題のひとつだ。上位選手として勝ち続ければ試合数が増え、連戦に耐え得る体力が必要になってくる。大会後半に対戦相手のレベルが上がっていくとき、高いパフォーマンスを発揮し続けるための「コンディション調整」も不可欠だ。

「毎回動きが違うし、痛みは出てきます。何カ所か痛みが出てきて、なかなか100%とはいかなかった。グランドスラムの大変さを感じました。

(今大会は)最初は、今までにないぐらい(立ち上がりから)対戦相手に押されたなか、自分が勝っていった3試合でした。フェレールにしっかり勝ち切った試合など、今までにないいろんな経験ができたグランドスラムだったと思う。もちろん、これからトップ10を相手に勝っていかないといけない立場なので、ベスト8は満足できる結果ではないですし、これからグランドスラムでベスト4や決勝に入っていけるようになりたい」

 今回、錦織は上位シードとして初めてグランドスラムを戦ったが、第5シードでベスト8進出は、その責任を果たしたといえる。第4シードのワウリンカに負けたのだから、下を向く結果ではない。今後、こういった大舞台での経験をさらに積み重ねていけるかどうかが重要になる。そして、やがて巡って来るチャンスをものにして、運も味方につけてグランドスラム制覇への道を切り拓いていかなければならない。

 また、マイケル・チャンとダンテ・ボッティーニの両コーチは、近い将来、錦織がグランドスラムで優勝する可能性を次のように語る。

「あり得るでしょう。可能性はあります。ただ、(グランドスラムの)2週間でひとつひとつの試合を、圭自身がどう戦うかです」(チャンコーチ)

「圭はグランドスラムタイトルに近づいていると思う。昨年一度チャンスがあったからね。決勝に進出して、本当にあと少しだった。でも、グランドスラムで優勝することは非常にタフなことなので、日々練習に励むしかない」(ボッティーニコーチ)

 今シーズンの錦織は、グランドスラム優勝と同時に、それに次ぐグレードのマスターズ1000での勝利を目指している。これはトップ10プレーヤーに出場義務がある大会で、年間に9大会開催される。そこで獲得できるポイントは大きく、優勝するとランキングポイントを1000点獲得できる。3月の北米・インディアンウェルズ大会を皮切りに、マスターズ1000シリーズでの戦いも始まっていく。

「これからは、マスターズやグランドスラムで活躍することが、ランキングを上げるために絶対必要なこと。まずは、近いうちにマスターズで優勝したいですね。もちろんそれで(今よりも)ランキングが上がればいいですし、常にトップ10に入っていられるように頑張りたい」(錦織)

 2015年、ランキング5位でシーズンをスタートさせた錦織が、年間を通してトップ10を維持していけるかどうかが、今年の注目ポイントのひとつだ。もしマスターズ1000大会で優勝できれば、それは十分可能であろうし、グランドスラム初制覇に近づくことにもなる。決して簡単な道のりではないが、今の錦織は、達成できるだけの実力を十分兼ね備えている。

神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi