『そういや私、女子だった! すこやかでハッピーな童貞女子の日常』(KADOKAWA/メディアファクトリー)

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 こじらせ女子、文化系女子、肉食女子、干物女子、うさぎ系女子......これまでさまざまな○○女子がメディアをにぎわせてきたが、最近、新たに話題になっているのが"童貞女子"。

 でも、女子なのに"童貞"っていったいどういうことなんだろう。たんなる処女とはちがうのはなんとなくわかるが、男性と接するのが苦手な喪女みたいなもの? それとも女子力のないことをネタにするこじらせ女子的なものか? "童貞女子"という言葉の生みの親で、自身も童貞女子だというさっちゃんことひぐちさとこが書いた『そういや私、女子だった! すこやかでハッピーな童貞女子の日常』(KADOKAWA/メディアファクトリー)を読んでみたのだが、どちらともまったく違うようだ。

 まず、冒頭にこんなシーンがある。ある日、友人がさっちゃんに「昔付き合ってた彼がベッドで〜」といった大人のリアルな下ネタトークを始める。すると、さっちゃんはいきなり、顔を赤らめたり青ざめたりしてキョトキョトしはじめるのだ。友人も思わず「...なにぶりっ子してんのよ」とツッコんでいるが、実はそれくらいセックスネタは苦手らしい。

 いや、セックスネタだけじゃない。さっちゃんは「女の子の日なの」「最近お通じなくてー」といった会話にすら挙動不審になる。

 ところが、同じ下ネタでも「うんこうんこ」的な話は大好きで、キャッキャとはしゃぐ。さらに、無言電話がかかってきたときは気持ち悪がるのか思いきや、「ハァハァ無言電話たん 今日のパンツは何色かな〜!?」と返してしまうらしい。

 それができて「女の子の日」の話はできないってどういうこと!? 普通は逆だろ!?とツッコミたくなるが、さっちゃんによると「違うんです ただガキなだけなんです」とのこと。本書では童貞女子の特徴として「精神年齢は小学校低学年くらい」と書かれているが、なるほど、言われてみればその発想と純粋さはたしかに小学校低学年に匹敵するだろう。いや、むしろ小学校低学年というより、小学校低学年の男子! どうやら童貞女子の女子力のなさは、喪女やこじらせ女子の言う女子力とはまた違う次元にあるようだ。

 それは女子との関係にも表れている。さっちゃんがバイト仲間で完璧モテ系女子のモテ美ちゃんと買い物に出かけるエピソードがあるのだが、そのときの会話がこちら。

「モ モテ美ちゃんはどんなお店に買い物行くの!? あそことかオシャレだね!?」
「足疲れてない!? 大丈夫!? のどかわいてない!? どっかカフェとか入る!?」

 ......いや、異性とのデートでもあるまいし、テンパりすぎだろ。というか、デートじゃなかったとしても、終始こんな会話を続けられたら萎えそうだ。でも、これが童貞女子クオリティ。しかも、モテ美に「なーに?うふふ さっちゃんってばおもしろ〜い♡」なんて言われようもんなら、「何がおもしろいのか全然わからんけどウケた!! ウケたよ母さん!!」と舞い上がってしまうのだ。女の子に心配されると「俺のこと好きなのかな...!?」とときめくし、モテ女子の明らかにお世辞とわかる返しに対しても「演技でもイイ!! やさしくされたらうれしい!!」と喜ぶ。こじらせ女子にとってモテ美のような天然モテ女は天敵だが、童貞女子からしてみれば、彼女たちは嫉妬の対象でも目標の人でもなく、芸能人のような憧れの存在に近いものであるようだ。

 しかし、いくらかわいくても電車の中で化粧を直したり、友達の彼氏の悪口を言うような女子に対しては、「女って!!」と幻滅。なぜ処女や女性を表す単語ではなく、"童貞"がつくのだろう?と思っていたが、これを見て納得した。女子への理想や憧れは、まさしく童貞のそれと同じだったのだ。

 だからといって、すべての言動が"童貞"に通じているわけではない。その証拠に、こんなシーンがある。ある非モテ男子が、泣きながらこんなふうに"モテ"について訴えていた。

「結局のところ女が言う「モテない」なんてたかが知れてるんすよ 自販機の前で飲みたいもん無いっつってんのと同じですよ」
「男の「モテない」は砂漠で水求めてる状態ですからね!? 瀕死ですよ瀕死!!」

 普通の女子なら、「んじゃ死にもの狂いで彼女作って見せなよ」と冷め気味に返してしまいそうだが、童貞女子は違う。そこでさっちゃんが笑顔で口にしたセリフがこれだ。

「砂漠は砂漠で楽しそうだけどな 住めば都って言うし!!」

 これぞ究極のポジティブシンキング! 彼女たちは非モテ男子をあざ笑ったり、冷めた目で見るわけでもなく、かといって一緒になって共感し、嘆くわけでもない。そんなの、恋愛を諦めて開き直っているからじゃ......?と思うかもしれないが、どうやらそういうわけでもないらしい。

 実際、彼女たちは「心配しなくても彼氏なんてそのうちできるのにね!!」と語っている。その自信と前向きさはいったいどこから来るのかと尋ねたくなるくらいだが、それこそ、ネガティブなイメージの強いこじらせ女子や喪女、童貞といったものとは大きく違うところだろう。

 彼女たちは人と比べて妬むのではなく、モテない期間でも自分なりに楽しんでいるだけ。「モテこそすべて!」といった感覚がなく、趣味に没頭しているからこそ、周りが羨むくらいポジティブでいられるのだ。明るく楽しく生きる童貞女子の生き方は、たしかにとても幸せそうに見える。これもある意味"リア充"なのかもしれない。
(島原らん)